13日の朝日新聞三者三論は「偽装請負、対策どうする」でした。
小嶌典明教授は「規制緩和で請負を活用せよ」として「行政が現場の実情に合わない硬直的な条件に基づいて『適正な請負』と『偽装請負』を区分けしていることだ」「請負を派遣に切り替えれば済む問題でもない・・企業が人件費に使える財源には限界がある・・無理に派遣に替えれば、メーカー側は直接雇用を避けるため、派遣労働者の短期間での契約打ち切りを繰り返すようになり、雇用の安定性が請け負い労働者より低下する懸念もある」
「若年労働者が低賃金で正社員になれる機会も少ないのは確かに問題だが、偽装請負をなくせば解決するものでもない。偽装請負は、正社員の雇用を維持するための緩衝材の役割も果たしてきた。労働組合も自分たちの組合員の生活を守るのに精一杯で、外部の労働者には関心が薄かった。正社員の既得権を見直さないと、若年労働者の問題は解決できない」
鴨桃代さんは「直接雇用を広げる政策を」の中で、「労組も、請負労働者の問題について感度が鈍かったと言わざるを得ない。契約社員やパートよりも外におかれてきたと思う」。
佐藤俊樹先生は「真の問題は世代間不平等」として「偽装請負という法律違反は論外だが、短期雇用自体が不当なわけではない・・では、何が問題なのか。現在30代前半から半ばまでの第2次ベビーブーム世代を中心に、特定の世代に不利益が集中していることなのだ。日本は90年代のバブル崩壊後、若い世代の雇用を犠牲にして、中高年の雇用を守った。今後再び長期安定雇用に戻れば、この10年ほどに新卒だった世代だけが『失われた世代』としてはじき出される」
「海外とのコスト競争で人件費を抑える必要が出ると、先輩社員たちは限られたパイの中、『次の世代を採用して育てるよりも、自分たちが会社に不可欠だ』と判断した。だから、新規採用を抑え、不足する労働力は人件費を抑えられる非正規雇用に頼った・・米国流の成果主義を上手にまねできなかったから、こんなことになった。米国流はもっとドライで平等。若い人だけに不利益を押しつけるのでなく、ベテラン社員でも、必要なくなったら切るからだ」
「解決策として、まずは採用時の年齢制限を一時的にせよ禁止して、直接雇用へのチャンスを広げざるを得ないのではないか・・・そして、直接雇用を増やすための人件費削減については、すでに働いている正社員の部分を削らざるを得ない。払える人件費の総額に限度があるとすれば、その限度の中で公平に負担を分担すべきだ」