(3)是正の方法
①どこまで地方の自由を認めるか
経常経費のうち、計画を上回る2.9兆円の内容を見ましょう。このうち2.5兆円は、少子高齢化対策、環境対策、中小企業対策などです。決して、変な支出ではありません。
財務省が問題にしているのは、残りの0.4兆円です。そこには、次のようなものが入っています。
ア 乳幼児医療費助成:0.2兆円
イ 老人医療費助成:0.1兆円
ウ 高齢者無料乗車券など:0.1兆円
このうち、ウは国が財源手当する必要はないとしましょう。でもこれは、上記(1)に入っているのでしょう。すると、アとイをどう評価するかです。国は、「地方が国の基準を上回って助成するのだから、財源手当はしない」という主張です。地方は「少子高齢化対策として、必要だ」という主張です(地方団体の乳幼児医療助成については、例えば11月7日の日経新聞「安心生活」を見てください)。
この点は、国民の間でも意見が分かれると思います。
②「変な支出」は1千億円
とすると、財務省が言う「無駄な支出」は、上記ウの1千億円です。大きめで言っても、4千億円です。「7.8兆円が過大支出」と言うのは、大違いです。
③2.5兆円の入れ替えを
ひとまず、アとイの位置付けを棚上げすると、地方財政計画で、約2.5兆円を投資的経費から削減し、同額を経常経費に乗せれば実態に近づきます。
3「地方財政計画を7.8兆円を削減する」という主張について
これは、むちゃくちゃな話です。
①国も30兆円の赤字国債の削減を
財務省は、地方財政計画に7.8兆円の収支不足があるので、これを解消しようということです。私も、早く収支不足を解消すべきだと主張しています。しかし、そのためには、国民が納得できる方法でなければなりません。
「赤字があるから、歳出をその分削減する」というのなら、国も「30兆円の赤字国債を出しているので、歳出を30兆円削減する」と主張すべきです。国は歳出削減せず、地方だけ削減しろとは・・。
②地方の赤字構造の責任は国にある
そして、地方財政計画の歳出の多くは、国が義務付けたものです。公共事業にしろ義務教育にしろ、補助金を出しておきながら、その分の地方歳出が削れるのですか?
平常時なら、地方財政計画はほぼ収支が合います。近年大幅な収支不足が生じているのは、国が赤字国債を出してまで補助金を出すから、地方もその補助裏分が赤字になるのです。
4「地方の歳出なのに、なぜ財務省が口を出すのか」という疑問について
①地方の支出に、本来、国は口を出さない
地方税はもちろん、地方が自由に使えるお金です。地方交付税も、地方が自由に使えるお金です。これらを何に使おうが、地方団体の自由です。
問題は地方交付税です。地方交付税財源のうち、法定5税分(約11兆円)は地方の固有財源ですから、国に口出しされる筋合いはありません。
②異常な交付税不足
しかし、現在は大幅な財源不足で、7.8兆円を国と地方の借金で埋めています。この半分は国が埋めているので、国が口出しをするのです。交付税率を上げるなり、国税を増税するなりしておれば、こんなことにはなりません。
5「財務省は身勝手だ」という声について
地方団体だけでなく、国会議員やマスコミも、「財務省は身勝手だ」と批判しています。
地方歳出を削減して(当然、国も歳出を削減して)、交付税(財源不足)を減らそうという方針は、閣議決定されています。しかし、その際には、地方団体の安定的な財政運営ができる額を確保するとの条件も付いています。16年度当初予算で、交付税と赤字地方債が激減し、地方団体から大きな反発が出たのはまだ数ヶ月前のことです。
交付税等を削減するとしても、19兆円(法定ルール分11兆円+財源補てん分8兆円)から、8兆円を2年間で削減するとは、正気の沙汰ではありません。
地方の財源不足を歳出削減で達成しようとするなら、国も30兆円の財源不足=赤字国債を、2年間で解消されてはどうでしょうか。
地方団体の1千億円の「変な支出」を、ことさら大きく取り上げ、それが8兆円もあるかのような宣伝も、止めた方がいいですよ。