【3兆円と3兆円】
「骨太の方針2004」には、3兆円が2カ所に出てきて、間違いやすいです。
①「3兆円の国庫補助金改革」は、昨年決めた「18年度までの4兆円の補助金改革」のうち、今年度実施した1兆円を引いた残り3兆円です。
②「3兆円の税源移譲」は、18年度までに行う税源移譲の額です。
国庫補助金について言えば、平成15年度に「芽だし」として0.5兆円を達成していますので、①の4兆円と併せて、合計4.5兆円が目標になります。
税源移譲については、平成15年度分として0.2兆円、平成16年度分として0.4兆円が一般財源化されました。これらは、譲与税や交付金という形の「過渡的税源移譲」になっています。これら合計0.6兆円は「手付け金」としてもらっているので、あと2.4兆円一般財源化すれば、合わせて3兆円になります。
一方、税源移譲は所得税から住民税に振り替えることとなっています。個人住民税を10%のフラットにすると、約3兆円の税源移譲になります。
全体で見ると、4.5兆円の補助金削減と、3兆円の一般財源化=税源移譲という対比になります。表にすると、次のとおり。単位は兆円。
0.5
|
0.2
|
||
目標4兆円
|
|||
1
|
0.4
|
||
目標3兆円
|
|||
4.5
|
3
|
||
3
|
2.4
|
もちろん、これは目標なので、今後2.4兆円以上の一般財源化がされると、それと0.6兆円の合計が税源移譲額になります。なお、0.6兆円の内、交付金化されている義務教育退職手当0.2兆円は、税源移譲されるかどうか決まっていません。他は税源移譲されても、この分だけは交付金のまま、ということもあります。
(6月4日、6日、7日)
3兆円税源移譲目標の明示
反対派の意見「国庫補助金削減額を決めることが先で、それによって一般財源化額が決まり、税源移譲額が決まる」は、正論です。補助金削減が「入り口」で、税源移譲が「出口」です。しかし、その「国庫補助金削減内容」がなかなか決まらないので、今回はまず「出口」の目標を決めたのです。
実は、この考えは今回(4月26日の麻生プラン)が、初めてではありません。昨年4月1日に、諮問会議が三位一体改革の議論を再開したときに、小泉総理が発言しました。その日は、竹中大臣の記者会見内容に対し、塩川財務大臣が「嘘つき」と発言して、うやむやになってしまったのです。
そして今回の「みそ」は、もちろん「地方団体に補助金改革内容決めてもらう=残る3兆円を選んでもらうこと」です。(6月5日)
地方団体の覚悟
「廃止する国庫補助金を地方団体に選んでもらう」とされたことで、地方団体には、大きな責任が生じました。3200団体間で意見をまとめることは、大変なことだと思います。しかし、それができないようでは、霞ヶ関の官僚は次のように言うでしょう。
「やはり地方団体には任せられない」「建前では補助金廃止と言っても、本音は補助金が欲しいんだろう」「やはり国が補助金を配らなければ」
ここで、地方団体の覚悟が問われています。
また、税源移譲目標が決まりましたが、歳出削減とは別です。これからも、歳出削減(それに見合った交付税の特例分や赤字地方債等の削減)は続きます。16年度の歳出削減=交付税等の削減幅が大きかったことに、地方から不満の声がでました。しかし、何度も述べているように、まだ各年度の赤字幅は大きく、歳出削減は続けなければならないのです。子や孫にこれ以上借金を残さないためには、さらなる歳出削減か増税が必要なのです。
「国は十分な歳出削減をしていない。なぜ、地方団体だけに厳しいのか」という質問を受けます。ごもっともな指摘です。私も、それについては釈然としません(バブル期に税の増収を、国はそのまま使ってしまい、地方は過去の借金返しに使ったことを思い出します)。しかし、中央政府が十分な歳出削減をしないからといって、地方団体が努力を怠っていい理由にはなりません。
私は、この瞬間や、今年の予算だけでなく、子や孫の時代をも視野に入れた、責任ある判断が必要だと思います。将来の評価に待ちたいと思います。(6月5日)