書評
産経新聞政治面書評
「「国から地方へ」を柱の一つとする小泉構造改革が進む中、総務省の現官房総務課長が、地方自治体の現状分析と将来の展望を分かりやすく解説する。複雑で分かりにくい地方行政制度について、戦後五十年の歴史を解きほぐしながら説明しているのが特徴。高度経済成長が終わった後に生じたさまざまな制度矛盾や問題を提起する。
国と地方の税財政「三位一体」改革で注目される複雑な地方財政制度だが、著者の専門分野だけに図表を駆使し、特に詳しく分かりやすく記載。多くの地方自治体の財政が悪化した原因と現行制度の課題を分析しており、改革の意義が明快に分かる。
制度面だけでなく「自治」や「政治」の理念についても原点に立ち戻って検証。二十一世紀型の地域社会の在り方も提言する。」(2004年3月12日)
「国際税制研究」12号に知原信良大阪大学法学部教授が、書評を書いてくださいました。「・・・本書は地方税財政や自治の問題を包括的に整理して将来を展望したいと思う者に、有益であり時宜を得た著作といえる」「・・・具体例をふんだんに用いて、説明も丁寧であるので大変わかりやすい。地方公共団体の業務については、木は見えても森がよく見えないといわれるが、本書はその全体像を知る上で格好のガイドブックとなるだろう・・・」。ありがとうございます。(2004年5月18日)
NiftyBooks(bk1)より「良書普及人」氏による
中央省庁の現職課長が、自らの仕事を振り返り、更に先輩官僚の業績をマクロ的に反芻し、今の制度の桎梏状態を指摘し、これからどうしていったらよいのかを、幅広い視野から問題提起しているのがこの本である。
筆者は東大の客員教授として、2年にわたり学生相手に分かり易く地方行政の運営実態を講義してきたものをまとめたと書いている。
単なる制度の解説ではなく、制度を通して何が実現できてきたのか、その制度が今どういう課題に立ち至って、かえって日本社会の足かせになっていることを指摘している。これまでの日本の成功を支えた三つの条件、「明確な目標」、「潤沢な財政」、「効率的な行政機構」が、「目標の喪失」、「財政の制約」、「行政の機能不全」に転化しているという観察は、実際そのとおりである。
この本は、曖昧な指摘ではなく、はっきりとした指摘や主張がふんだんに含まれているので思わず唸る箇所が随所にある。例えば以下のようなものがある。
・国家公務員は地方公務員と異なり、人事権が各省庁にあり、対等なものの間の調整がなかなかつかない。優秀な官僚ほど頑張ってカタがつかない。
・教育委員会制度があるので、市民に選ばれた市長が教育に最終責任を持てない。教員に対する人事権も無く制度上問題が大きい。
・地方の貴重な一般財源である地方交付税は特別会計の借り入れが無ければ現在の6割の水準になる。歳出削減をするか、交付税の財源である国税の増税をするか、地方税の増税をするしか方策は無い。
現職の官僚として、無難にことを運ぶという、「伝統的な」役人像からは、一歩も二歩もはみ出ているが、そういう役人が中にはいるということを、このような本を通して知ることができるということも、読書の楽しみ方ではある。地方行政を目指そうとする人たちや、高校の「公民」の授業の副読本としても有用な本である。(2004年6月19日)
インターネットを見ていたら、拙著の書評を見つけました。ぞーりんという方です。「無味乾燥になりがちな内容を、わかりやすく書いてある良書。入門に最適!というのは、ひとつひとつの主張にデータ的裏付けや豊富な具体例があり、また、キャッチフレーズの付け方がうまいせいと思われる。凡百の小難しい地方自治概説本を読むより、よほどためになる」
存じ上げない方ですが、こんなに誉めてもらうと、嬉しいですね。ありがとうございます。(2005年1月18日)
(本格的書評)
「本書の特色は、従来の地方自治に関する書物が地方行政に関する法令や制度の解説にとどまっているのに対し、政治学、経済学、社会学などの議論を取り込み、広い視野から日本の地方行政と社会を論じている点にある。それゆえ・・・総合政策科学という学問を「伝統的な専門分野を基礎としながら個々の諸科学の狭い問題意識や問題解決方法にとらわれずに、それらの理論を総合ないし統合して問題解決に取り組もうとするもの」と一応の定義をするならば、本書は、「地方自治」という問題を総合政策科学という学問領域から考えるためにも非常に優れた一冊であると言える」(2006年8月12日)
インターネットで、拙著の書評を見つけました。「地方自治を担う人、特に行政職(事務職)に就いている人には必読の本・・ 特に将来の地方自治体像を描いた後半部分は非常に興味深い」。どなたかは存じませんが、ありがとうございます。(2007年2月17日)