カテゴリー別アーカイブ: ものの見方

政治家。計画的でなく、その場のやむ得ない決断

10月12日の日経新聞読書欄、岡崎哲二・東大教授のアダム・トゥーズ著『ナチス 破壊の経済』(みすず書房)についての書評「独戦時体制の全体像を詳述」から

・・・第2に、開戦の直接の引き金となったドイツによるポーランド侵攻は、周到に準備された「電撃戦」ではなく、ドイツ経済の切迫した状況と国際情勢の圧力の下での、やむを得ない決断だったことが強調されている。39年、国際収支の制約によってドイツの再軍備が限界に直面する一方、潜在的な敵国である英国、フランス、米国、ソ連の軍備拡張が進展し、ドイツが不利になっていく国際的な軍備バランスの中で、ヒトラーは早期開戦の決断を迫られた・・・

かつてこのホームページで、「強力な独裁者であったナポレオンもヒットラーも、信念であのような国家をつくり、対外戦争を続けたというよりは、その場その場で国民の支持を取り付け、政権を維持することを優先したとみえます。そのために、戦争を続けなければならなかったのです」と書いたことがあります。「社会はブラウン運動4

鎌田浩毅先生『やり直し高校地学』

鎌田浩毅先生の新著を紹介します。『やり直し高校地学ー地球と宇宙をまるごと理解する』(2019年、ちくま新書)です。ちくま新書には、「やり直し高校××」というシリーズがあるようです。内容は、表題でわかりますよね。

私は高校では理科4科目、物理、化学、生物、地学を履修しましたが、受験科目は物理と化学を選びました。この2つが、理論的だと思ったのです。すみません、当時は、生物は植物の分類、地学は地層と岩石の学問と思っていました。しんきくさいなあ・・・と。
ところがその後、生物は遺伝子の解析や分子生物学が発達して、面白い学問になりました。地学も、プレートテクトニクスや古生物学など、面白い学問になりました。この半世紀で、ガラッと変わりましたね。
最先端の研究が画期的に進んだのとともに、それを一般人に伝える書物が増えたからでしょう。無味乾燥な分類学や岩石学から、わくわくする科学に変わったのです。

鎌田先生は、科学の伝道師を名乗っておられます。最先端の難しい科学を、素人にわかるように伝えてくださっています。新著も早速に重版になったようです。よく売れているということですね。
素人には分厚い学術書や教科書より、新書版がうれしいです。でも、難しいことを短く書くというのは、難しいのですよ。

歴史教育と歴史学3

歴史教育と歴史学2」の続きです。

歴史を学ぶということには、これまでの先達たちの行動を(立派なことも失敗も)学ぶことができます。そして、ものの見方を学ぶことができます。これは、歴史を学ぶことの大きな意義です。
ところが、高校までの歴史教育と大学入試試験は、これを教えたり問うていないと思うのです。それが、この項を書いた理由です。

その点に関して、『現代歴史学の名著』(1989年、中公新書)『新・現代歴史学の名著』(2010年、中公新書)を思い出しました。
当初は「現代歴史学」という文言に、「矛盾しているのではないか?」と、疑問を持ちました。
しかし読んでみると、歴史という一つの事実が、新しいものの見方によって、違って見えることがわかります。それらの見方は、出来事の羅列や政治史ではないのです。