3 会議を開く
(1)本会議
(議運)
本会議を開くのは、それぞれの院の議長です。開会のベルを押すのは、議長の権限です(実際に大きな音で鳴ります。その前に予鈴が鳴ります)。とはいえ、実際の日程は、「議院運営委員会」で決まります。この議運は、両院に置かれた委員会の一つです。法律にでてきます。が、法案を審議するのではなく、本会議の日程を決めることが仕事です。
ここで、何日の何時から、どの法案を審議し、各党に何分ずつ質問時間を割り当てるか、採決は起立か記名か簡易(「異議なし」と叫ぶ)か、とかを決めます。本会議は、これに沿って進みます。
(理事懇)
議院運営委員会が開かれる前には、まずその理事会が開かれます。また、協議事項に応じて、その前に議院運営委員会理事懇談会が開かれるようです。これは、正式の会議ではない「内協議」です。そして、各党の議運の委員は、各党の国対の「指示」「意向」に沿って、日程を協議しているようです。議運の理事は、国対の役員を兼務しているようです。
(日程の調整)
与野党の協議が折り合いがついたところで、審議日程が決まり、本会議が開かれます。当然、もう一方の院の日程も、考え調整する必要があります。同時に衆議院本会議と参議院本会議を開会しても、大臣は体が一つなので、どちらか一方しか出席できません。
(2)委員会
法案などは、各委員会で審議されます。地方行財政を含め、総務省の大概の案件は、衆参の総務委員会にかかります。選挙に関しては、そのための特別委員会が衆参にあります。当然、予算委員会でも地方行財政の質問(特に分権や三位一体改革)はでますし、他の委員会でも総務省が答える、あるいは関係する質問がでます。
(理事会)
委員会を開会するのは委員長の仕事です。しかしここでも、委員長は通常は一人では、日程を決めません。委員会には理事が決められます。委員の中から、各党の委員の数に応じて選出されます(委員の人数の少ない会派は理事を出せません)。
委員会の開会の前に、委員長と理事が集まって理事会が開かれ、そこで日程が決められます。理事に中には、国対の役員を兼務している議員がいます。その委員が、国対との連絡をしています。
(3)大臣の出席
予算委員会は、全大臣が出席する期間と、出席を求められた大臣だけが出席する場合とがあります。常任委員会は、それに関係する大臣が出席します。総務大臣は総務委員会に出席します。副大臣以下も出席し、説明や答弁をします。
他の委員会(例えば文部科学委員会)で総務省に関する質問がでた場合は、原則、総務省の副大臣や大臣政務官、政府参考人(局長や審議官)が出席し答弁します。特別委員会は要求された大臣がでます。
すると、両院の関係する委員会の間で、同じ時間帯に大臣の出席が重複しないように調整する必要もあります。参議院総務委員会と衆議院総務委員会は、別の法案を審議するとしても、大臣を呼ぶ場合は事実上同じ時間帯には審議しにくいのです。
(4)定例日
両院の本会議や委員会は、定例日が決まっています。「通常この日に開こうや」という日です。総務委員会は、衆議院は火曜と木曜、参議院は火曜と木曜(同じ日です。ゆえにぶつかってしまいます)。この他、予備日もありますし、必ずしも厳密なものではないとのことです。
4 もめる
以上に書いたのは、「通常の場合」です。
(イラク派遣承認の場合)
2004年1月30日には、次のようなことが起こりました。イラク復興支援のための自衛隊派遣について、国会の承認を得る必要があります。この案件が「衆議院イラク復興支援特別委員会」で審議されていました。また同時に、15年度補正予算案も、衆議院予算委員会で審議されていました。
野党は派遣を承認するためには、なお議論が必要であるとしていましたが、与党は十分審議したとして、18時過ぎ「イラク特別委員会」での質疑をうち切り、採決しました。野党議員は委員長席に詰め寄り抗議しましたが、賛成多数で可決されました。テレビでご覧になった方も多いでしょう。
衆議院を通過するためには、本会議での可決が必要です。しかし、野党は、議長に対し、委員会採決が無効であることを訴え、本会議を開かないように主張しました。与党は、イラク特委で補充の審議を行う事などを提案しましたが、野党は応じませんでした。
(国対の出番)
この時に活躍するのが「国対」です。どこまで審議をするか、あるいはどこのあたりで質疑をうち切り採決するか。そうすると、野党はどうでてくるか。その場合はどう対応するか。これらを考え、方針を出されたのだと思います。
そして、テレビでは、与野党の国会対策委員長会談が放映されました。ここで、打開策を検討するためです。しかし、今回は協議が整いませんでした。いくつかの選択肢はありましたが、予算委員会も本会議も、野党議員欠席のまま開会され、与党議員の賛成で、イラクへの自衛隊派遣・15年度補正予算は、衆議院を通過しました。
しかし、新聞は、「これでは野党は参議院での審議に応じないであろう」と伝えています。まだまだ、駆け引きとドラマは続きます。
(空転と正常化)
週が明け、2月1日。新聞が伝えたように、参議院での審議には入ることはできませんでした。翌2日の夜遅くなってから「協議」が整ったようです。3日に国会は「正常化」し、午後から参議院予算委員会が開かれました。衆議院から送られた補正予算案を審議するためです。4日には参議院本会議が開かれ、イラク派遣承認案件が質疑される予定です。
新聞報道によれば、「断続的に衆参の国対委員長会談が開かれ、空転が続いていた国会審議を正常化することで合意した」とのことです。その際与党は、「衆議院イラク特委を毎週1回開き、現地報告を行う」「衆院イラク特委委員長が陳謝する」「04年度予算案の審議入りの前にイラク派遣に関する追加質疑を衆院予算委員会で行う」ことなどを提案し、野党も「これ以上の審議拒否は難しいと判断し、受け入れた」と伝えています。
このように、与野党の「不調」により、審議日程に空白を生じることを「空転」と呼んでいます。一度空転したものを再び回転させる=「正常化」するには、エネルギーと時間がかかります。