日経新聞「私の履歴書」11月は、坂根正弘・元コマツ社長です。11月21日の「現地化の限界」から。
・・2度目の米国駐在は、日本企業と米国企業の強みと弱みを見極める貴重な機会だった。日本企業には米国流の経営を見習って改めるべき点も多いが、逆に「日本のほうが文句なく優れている」と感じた部分もある。それは生産現場の能力の高さだ。
当時交流のあった社外の米国人の一人に、デトロイト・ディーゼル社のペンスケ会長がいた。弁舌さわやかで指導力に富んだ米国産業界で著名な人物だったが、その彼が「どんな優れた経営者もQCDの問題は解決できない」と漏らしたことがある。
QCDとは、クオリティー(品質)、コスト(費用)、デリバリー(納期)の頭文字で、製造現場の実力を測る最も重要な指標だ。ところがペンスケ会長によると、経営トップがいくら旗を振っても、それだけではQCDは改善しない。現場がやる気を出して、地道な努力を日々重ねることが絶対条件。その意味で「ボトムアップの弱い米国企業には限界がある」というのが、彼の嘆きだった・・
アメリカの会社で、坂根社長は、日本人をできる限り減らして、米国人に置き換える方針をとります。しかし、ただ一つ「これだけは現地化が難しい」と感じた職種があります。生産技術者です。アメリカでは、新機種の設計を手がける開発技術者と、工場の設備企画や改善を進める生産技術者の間にステータスの違いがあって、前者が後者より上なのです。だから優れた技術者が、工場に行きたがらないのだそうです。それに対して、日本の多くの大手メーカーでは、開発と生産が対等の立場で協力します。坂根社長の自信は、コマツを回復に導きます。詳しくは原文をお読みください。