8月17日(火曜日)
成田空港を、昼の12時に離陸。11時間30分の飛行で、ドイツ西部のフランクフルト空港に到着。日本時間では23時半、でも現地時間では16時半。
かつてに比べ、搭乗時間は短くなり、また機内も快適になった。とはいえ、12時間座りっぱなしは疲れる。若いときは、機内食とワインが楽しみだったけど、この年になるとね・・。
ホテルに到着後、軽く夕食を取る。本日4度目の食事。まだ明るいので、市内を散策する。こちらは緯度が高いので、この時期は夜の9時頃まで明るい。
これがくせ者。旅行期間中、ついつい遅くまで「がんばって」しまうことになる。身体は正直で、体内時計は「朝の4時頃」。徹夜のようなものなので、だるい。気温は20度前後。
今回の旅行は、衆議院総務委員会の海外視察の随行。国会には、国内視察のほか海外視察という制度があるとのこと。今回は、郵政事情と地方自治を調査するため、ドイツとフランスが選ばれた。委員長ほか理事らで、合計7人の議員。党派は、自民党、民主党、共産党、社民党。期間は8日間。
その視察団に、衆議院事務局職員1名が随行するが、政府側からも総務課長と補佐の2名が随行することになった。自分が団長で行くのと異なり、えらく勝手が違う。とはいえ、職務ですから。ハイ。
8月18日(水曜日)
ホテルから出発しようとしたら、バスが故障。修理のめどが立たず、領事館が別の会社に交渉し、代車を仕立ててくれる。
議員「岡本さん、このバスはどこのだ?」
全「はい、ベンツと書いてありますが」
議員「ドイツ、ベンツと言えば、頑丈で壊れないというイメージだったけどなあ。ドイツのモノ作りも、だめになったねえ」
全「いやあ、先生。日本にも(欠陥を隠していた)三菱の車もありますから、あんまり他人のことを批判できないですよ」
議員「それもそうだ」
昼食は予定を変更し、高速道路のサービスエリアですます。先生方にも、「いろんな経験ができて、この方がおもしろい」と納得していただく。この理由にはやや無理があるが、仕方ない。理解ある先生方なのでありがたい。でも、出だしからこれだと・・。
ボンやケルン、デュッセルドルフも通過し、第1の訪問先であるエッセン市役所に行く。
副市長と会談。かつてルール工業地帯の中心として繁栄したエッセンも、エネルギー革命による石炭衰退でさびれた。それを復活させた。そのこつを聞こうというのが、今回の目的。
ポイントは、石炭で汚れた空気と街をきれいにすることで、「健康」をキーワードに持ってきたこと。そして大学病院や研究機関を誘致したこと、と見た。民間企業の協力も、大きいようだ。
その後、かつての炭坑を見に行く。施設(建物)は、1930年代に造られ1980年頃まで使われていた。その後廃墟となっていたが、世界文化遺産に指定され、現在はデザインセンターに転用されている。ナチスの威信をかけたのか、確かにモダンなデザイン。
日本の炭住とは、えらい違うイメージ。ただし、この施設は工場部門であって、住宅部門ではない。そこは、どうなったんだろう。
泊まりは、デュッセルドルフ。
在ベルリンのドイツ大使館から、稲原君(総務省の後輩)が、案内のために来てくれている。デュッセルドルフ総領事館には、総務省から水間君が出向している。稲原君(地方行政専攻)と水間君(郵政・情報専攻)と、2人がサポートしてくれるのでありがたい。夜は総領事から、現地の事情を教えてもらう。
8月19日(木曜日)
今日は、視察がびっしり。まず、ボンのドイツ・ポスト本社を訪問。戦略担当課長の説明の後、役員との質疑の時間をとってもらう。
NHKベルリン支局長が、カメラマンを連れて取材に来ている。それだけ注目されているということ。この模様は、日本時間20日朝のNHKニュースで放映された。本社での質疑の模様と、中央郵便局での視察の模様が映っていた。翌日ホテルで、日本語TV放送で見ることができた。
カメラ取材の際には、小生は映らないように席を外した。にもかかわらず、ニュースでは、中央郵便局の入り口で先頭を歩いているところが「でかく」映ってしまった。早速、メールで「見たよ」と教えてくれる知人がいた。
視察団の質問は限りなく、あっという間に1時間半が経ってしまう。昼食時間に食い込んで質問を続けようとしたら、「重要な人が昼食会場で待っているので、急いでくれ」とのこと。近くのレストランにいくと、会社の政治顧問ともいうべき女性が待っていてくれた。ここでも、昼食を取りながら、質問攻めにする。
ドイツ・ポスト(日本の郵政省に当たる)は、1990年代に国営から民営化された。銀行部門(日本でいう郵貯)を分離したが、後に吸収するなど、紆余曲折を経ている。小包部門では、アメリカのDHLを買収して、国際市場で攻勢にでている。DHLって、荷物車が日本でも走っているじゃないか。
逆質問もあった。「日本は、海外戦略をどう考えているのか?」この質問は、中国市場を念頭に置いたものだろう。この質問には、考えさせられた。
議員の先生の何人かは、携帯電話を持ってきておられる。国際電話もかけられる。と言うより、日本との連絡のために持ってきておられる。ところがその機種は、ドコモではない。ドコモはヨーロッパでは使えないとのこと。
「電電公社民営化の時、分割したことで国際競争力が落ちたのではないか」などなど。この話と合わせ、ひとしきり「日本での民営化と海外戦略」について議論が盛り上がった。
国際関係担当課長の話だと、既に20チームほど、日本からの訪問団を受け入れているとのこと。ある役員の名刺は、名前をカタカナで書いてある。課長からは、「竹中大臣、あぞう大臣(麻生asoをドイツ語読みするとアゾウになる)・・・」と、次々日本人の名前が出てくる。
規制庁から中央郵便局に移動する際、彼が「自分の車に、誰か乗らないか?」と言うので、私が小型のベンツに同乗した。彼は「小泉の改革はどうなるのか」と質問するが、既に経済財政諮問会議の中間取りまとめも知っているし、国会の状況もよく知っている。私のさび付いた英語でやりとりするので、もどかしい。
午後は、政府側の規制庁(ドイツ・ポストを監督する側)に行く。ここでは、民営化前後でのサービスの変化や今後の方針を聞く。ドイツはご存じの通り、EU(ヨーロッパ連合)に属している。ドイツ政府の規制だけでなく、その上位にEUの規制がある。そしてEU内には、東欧の「後発国」があり、その調整が難しい。もっとも、それらはドイツ・ポストにとって「市場」でもある。
その後、ボン市の中央郵便局を視察に行く。えらいハードなスケジュール。
ボンは、かつての西ドイツの首都(暫定首都)であった。今も、連邦政府のいくつかの役所が置かれている。空いたビルのいくつかは、国連の機関に貸しているとのこと。残念ながら街を見学する時間はない。
ドイツ・ポストは新社屋を建てた。ガラス張りの高層ビル。「何で、こんなに大きいビルを建てたんだ」と聞いた。僕の英語が悪かったのか「ガラス張りにして、ドイツ・ポストの透明性を利用者にアピールしたかった」との答えが返ってきた。