カテゴリー別アーカイブ: 2010年秋学期

2010年秋学期

2010.11.27

今日は、日本大学大学院で講義。昨日、ネパールから帰ってきたばかりなのに。もちろん、出発前に準備していきました。
講義は、随所で脱線というか、議論の範囲を広げつつ、順調に進んでいます。今日で、第2部「自治体は地域を経営したか」を終了。今回の私の議論は、次のようなものです。
市役所の組織を運営することだけが、公共経営ではない。官・共・私の3つのシステム(場)を含めて、地域や国家がうまくいくように運営することが、公共経営である。また、個人が暮らして行くには、公共サービスや私的財と私的サービス提供だけではなく、他人とのつながり・社会的関係資本が必要である。日本の行政は大成功したが、次の課題への取組に転換することに遅れている。これからの地域経営は、働く場を中心とした「活力」と、他者とのつながりを中心とした「安心」が重要である、ということです。
次回から、第3部「市役所の経営」に入ります。ここからが、通常の公共経営論です。官僚として32年、県庁、府省、官邸と、いろんなところで勉強させてもらいました。その経験から、お話しします。
(授業の補足)
授業中に言及した本は、宮澤俊昭著『国家による権利実現の基礎理論ーなぜ国家は民法を制定するのか』(2008年、勁草書房)です。

2010.11.13

今日は、日本大学大学院で講義でした。夕べ、中国から帰ったばかりですが、出発前に準備しておきました。
地域を経営するという観点から見ると、地方政府(市役所)は何をしなければならないのか。これまでは、財とサービスの提供が政府の役割だと、説明されていました。しかしこれは、経済学からの見方でしかありません。また、財とサービスを行政が提供しなくても、民間企業やNPOに委ねてもよいという行政改革論も盛んです。しかしこれも、政府・行政の役割が財とサービス提供であると、狭い範囲でしか見ていません。
今日本の地域社会で問題になっていること、それは活力の低下と暮らしの不安です。公共施設や公共サービスを充実することでは、解決しません。
財とサービス提供に関しては、企業活動やNPOなど非営利活動がうまくいくように条件整備をすることも、政府の仕事です。そして、活力と安心のためには、人とのつながり、地域活動などをどのように充実していくか。これが政府に問われています。「まちづくり」や「地域おこし」「地域の活性化」という言葉で、財とサービスの提供ではない地域の活性化や安心づくりが、各地で試みられています。しかしまだ、行政学や地方行政論では、体系だった議論はされず、教科書の中でも占める定位置を与えられていないようです。
もちろん、それらは市役所が提供できるものではなく、住民の参加や住民の活動によって、できるものです。ここに、難しさがあります。

2010.11.06

今日は、日本大学大学院講義、第7回目。第2部「自治体は地域を経営したか」に入り、第3章「市役所は「良い地域」を作っていたか」です。
良い地域という場合に、公共施設(施設資本)や公共サービス(制度資本)だけでなく、働く場や街の賑わい、さらには、他人との関係(関係資本)や気風・文化(文化資本)も重要です。住民にとって「まち」とは、ハードウエアの集積ではなく、働く場であり、便利さや困った時の支援といった見えない社会的共通資本の網の目です。この点は、拙著「新地方自治入門」で詳しく述べました。
私はよく、ごみ収集を例に出します。引っ越してきた新住民や外国人にとって、ゴミ出しルールがわからないと、本人が困り、周囲も迷惑を受けます。他方、市役所にとって、収集車と処理場をそろえただけでは、ごみ収集をうまく行うことはできません。住民が分別ルールと出す日を守ってくれないと、効率的な収集はできず、街角は汚くなります。
写真に写った街並みを見ても、その街の暮らしやすさはわかりません。余暇を充実して過ごしたい時に、パチンコ屋とカラオケだけでは困ります。いろんな文化・スポーツ活動、趣味の会・クラブ、ボランティア活動やNPO活動、地域活動、ご近所づきあいがあれば、楽しく過ごすことができます。
地域を経営するという場合に、市役所はこれまで、このような無形の社会的共通資本を、どこまで意識してきたでしょうか。残念ながら、市の予算書では、このような無形資本への働きかけは見えません。また、公共施設整備率では、各市町村の無形資本「充実度」は見えません。

2010.10.23

今日は、日本大学大学院での講義。順調に進んで、もう6回目です。内容の方は、予定通りではありませんが。もっとも、当初の時間配分が、かなり余裕を持たせたものなので、問題はありません。
初めての内容を講義しているので、講義ノートを作っていく際に、事前に考えた骨子とは、密度が変わることがあります。また、講義ノートの分量と、しゃべる時間とは、これまた一致しません。参加者との意見のキャッチボールが始まると、予定より時間がかかります。でも、それは良いことですから。

2010.10.16

今日は、日大大学院で講義。すでに5回目で、順調に進んでいます。先週、この20年間の行政改革を目的別・効果別に整理したので、今日は、これらの改革がなぜ進んだか、そして範囲が広がり、目的が広がってきたことを論じました。またこの陰で、たくさんの改革が唱えられながら、なぜ進まなかったか、進んでいないかを分析しました。
それにしても、1週間が経つのは早いです。次の準備に、取りかからなければ。いつも、同じことを言っていますね。苦笑。