2010.11.06

今日は、日本大学大学院講義、第7回目。第2部「自治体は地域を経営したか」に入り、第3章「市役所は「良い地域」を作っていたか」です。
良い地域という場合に、公共施設(施設資本)や公共サービス(制度資本)だけでなく、働く場や街の賑わい、さらには、他人との関係(関係資本)や気風・文化(文化資本)も重要です。住民にとって「まち」とは、ハードウエアの集積ではなく、働く場であり、便利さや困った時の支援といった見えない社会的共通資本の網の目です。この点は、拙著「新地方自治入門」で詳しく述べました。
私はよく、ごみ収集を例に出します。引っ越してきた新住民や外国人にとって、ゴミ出しルールがわからないと、本人が困り、周囲も迷惑を受けます。他方、市役所にとって、収集車と処理場をそろえただけでは、ごみ収集をうまく行うことはできません。住民が分別ルールと出す日を守ってくれないと、効率的な収集はできず、街角は汚くなります。
写真に写った街並みを見ても、その街の暮らしやすさはわかりません。余暇を充実して過ごしたい時に、パチンコ屋とカラオケだけでは困ります。いろんな文化・スポーツ活動、趣味の会・クラブ、ボランティア活動やNPO活動、地域活動、ご近所づきあいがあれば、楽しく過ごすことができます。
地域を経営するという場合に、市役所はこれまで、このような無形の社会的共通資本を、どこまで意識してきたでしょうか。残念ながら、市の予算書では、このような無形資本への働きかけは見えません。また、公共施設整備率では、各市町村の無形資本「充実度」は見えません。