カテゴリーアーカイブ:行政

負担増はいや

2023年4月26日   岡本全勝

4月10日の朝日新聞に世論調査結果が出ていました。「負担増「よくない」60% 「異次元の少子化対策」財源 朝日新聞社世論調査

・・・ 8、9日に実施した朝日新聞の世論調査で、政府の少子化対策の費用にあてるために国民負担が増えてもよいかを尋ねたところ、「増えるのはよくない」が60%で、「増えてもよい」の36%を上回った。岸田文雄首相の唱える「異次元の少子化対策」の実現には膨大な財源が必要となるが、国民負担の行く末には厳しい視線が注がれている・・・
・・・防衛費の大幅な増額と、そのために1兆円の増税をする方針への賛否も尋ねた。防衛費の増額は賛成41%、反対50%と割れたのに対し、増税方針には反対68%が賛成26%を大きく上回った。防衛費増額に賛成の人でも、増税には4割が反対と答えた・・・

では、財源はどこから調達するのでしょうか。

公務員は非営利団体に負けていないか

2023年4月24日   岡本全勝

連載「公共を創る」第148回」(新しい課題と手法について、行政が対応に遅れ、非営利団体が先に取り組んでいます。彼らの感度の良さと熱意に、公務員は負けていないでしょうか)を読んだ官僚の一人から、次のような反応がありました。一部改変して紹介します。
確かに、この指摘の面もありますね。行政改革や歳出削減で、公務員に時間と予算の余裕がないことは連載第141回で指摘しました。

・・・NPOに負けていないか、という点は、残念ながらそのとおりだと感じました。
感度の良さ(悪さ)と熱意の高さ(低さ)の背景には、ご指摘のとおり、個々の公務員の余裕度(新たな仕事をこなす余地)に加え、公務員が自らの裁量で処分できるリソース(人員・資金)がほとんどない、という点があるのではないかと思います。

世の中に「やった方がいいこと」は満ちあふれていますが、「行政がやらねばならぬこと」に引き上げるには、高いハードルがあります。行政の公平性もその一つだと思っており、同じニーズを持つ人々のうち一部だけでもなんとかしてあげる、という発想は、NPOにはできても行政にはなかなか難しいように思います。
施策の継続性・一貫性も同様で、財源が足りなくなったからやめます、ということが難しい行政では、そもそも問題に手を付けること自体、慎重になりがちです。

個々の公務員の「やる気」「熱意」の問題のように捉えられがちですが、どの程度のリソースをどういう課題の解決に振り向けるのか、最終的にはそのリソースを税で負担してもらう(あるいは既存のサービスの廃止という形で負担してもらう)ことについての判断を誰がどのように行い、そのための住民・国民の理解をどのように得ていくのか、というところが課題なのかなあと感じました・・・

学校現場への文書半減の試み

2023年4月23日   岡本全勝

4月20日の専門情報誌「官庁速報」が、「学校現場への文書半減=山梨県教委」を伝えていました。県の教育委員会から学校に、1年間で1500枚もの文書が送られているとのことです。
新型コロナウイルス感染症に関して、各省から自治体に膨大な数の文書が送られたことを、かつて紹介しました。役所で仕事をしているとき、送りつけられる大量の文書を「紙爆弾」と揶揄していました。あまりにたくさん来ると、処理できずに放置され「不発弾」のままで埋もれてしまいます。受け取る方の事情を知らずに、自分の方の都合だけで仕事をすると、こんなことが起きます。

・・・山梨県教育委員会は今年度から、市町村教委や学校現場へ送る文書を半減させる取り組みを始めた。国や各種団体からの通知を県教委が精査し、「送付しない」「市町村教委に留め置く」などと分類。共有の必要があるもののみ、要点をまとめた文面と共にグループウエアや校務支援システムで学校現場に送信する。
県教委によると、学校現場に送付される文書は年間1500枚以上に上る。事務負担を軽減し、教育の質向上を図る。教員の担い手確保にもつなげたい考えだ。

今後、国が行う調査やアンケートは、学校基本調査など法律に基づくものや、いじめ調査など児童生徒の命に関わるもの以外、県や市町村教委が分かる範囲で回答し、教員が対応する文書の数を減らす。
県による調査やアンケートは、必要性や方法を見直し、政策立案が目的の場合は必要最低限で実施。可能なものは標本抽出で行う。毎年定例的に行っている調査などは、2~3年に1回などに頻度を下げる・・・

救ってくれたのは市役所でなく支援団体

2023年4月20日   岡本全勝

4月8日の朝日新聞「追い詰められる女性たち5」「「何に困ってる?」最後につながった電話」から。

・・・1年以上前のこと。夫が2人の子どもを置いて家を出て行った。コロナ禍の影響で女性の勤め先は倒産。新しい職も探せない……。
「あ、これで最後」。40代の女性は、1歳の次男の粉ミルクを開けたとき、不安で手が震えた。所持金は残り数千円。お米はほぼない。電気もガスも、水道も止まりそう・・・

・・・ 「子どもたちに食べさせられるもの、ありませんか」
所持金が底をつきそうになり、次男と市役所の窓口に行った。「どうしたらいいですか?」と初めて、自分からつらさを他人に打ち明けた。
だが、色々な窓口をたらい回しにされた。「生活保護の先渡し」として2万円を支給された。ある窓口では職員がこう言った。「ここは、どうしたら良いかを教える場所じゃない」。返ってきたのは、共感や心配ではなかった。
お米も、ミルクも、おむつももうない。「そう必死に説明しても、なにも変わらないことが、とてもつらかった」
帰りがけ、職員は「これ、食べられると思うから、良かったら」と、食べ物を手渡してくれた。備蓄期限が過ぎた硬いビスケット、のどあめ……。子どもが食べられそうなものは入っていなかった。
「私たち家族は、生きているべきじゃないの?」
次男が大きな声で泣いていて、我に返った。無力感にさいなまれた。幸せにしてあげたいのに、できない。感情があふれて、こう言っていた。
「もう、いいです」
市役所を後にしながら、こんなことを考えた。
「生きるの、やめたいな」
人生で初めてそう思った。最寄り駅に向かい、電車に飛び込むつもりだった。

ひらひらひら。
駅のロータリーにたどり着いたとき、ふとした拍子にポケットからピンク色の折り紙が落ちた。市役所で「どうしても困ったら、ここに電話してみて」と渡された携帯番号が書かれた紙だった。「最後だし、かけてみようかな」
電話がつながり、聞こえてきた声は、今も忘れない。
「私もシングルマザーやで。大丈夫」「いま、どこにいるの? 何に困ってる?」
これまでのことを必死に伝えた。「わかった。今から行くわ」。経済的に苦しい女性や若者への支援活動をしているという彼女はそう言って、車で迎えに来てくれた。
その後、スーパーに行って、「必要なもの、全部かごにいれて!」と言ってくれた。戸惑いながらも、ミルクとおむつ、久々の肉などを買ってもらった。長男の迎えにも付き添ってくれ、ハンバーガーを食べさせてくれた。
生活を立て直すため、生活保護の申請など細やかにサポートをしてくれた。
「なんで、優しくしてくれるんですか?」と思わず聞いたことがある。「もう無理だと思ったことがあるから、つらくなるのがよく分かるの」。初めて駆け込める場所を知り、心から安心できた・・・

安倍回顧録にみる「政と官のゆがみ」

2023年4月19日   岡本全勝

4月5日の日経新聞経済面コラム「大機小機」、「安倍回顧録にみる「政と官のゆがみ」」から。

・・・安倍晋三元首相が財務省との意見対立や嫌悪感をつづった「安倍晋三 回顧録」(中央公論新社)が話題になっている。対立の直接の原因は、リフレ派の考え方に立つ元首相が、法律で施行時期が決められていた消費増税を2度も延期したことである。MMT(現代貨幣理論)という異端の経済思想を信奉し財政健全化に興味を持たなかったことも対立を加速させた。一国の首相と官僚組織との間で、財政・経済政策でこれほど大きく意見が異なる事態は、おそらく戦後初めてではないか・・・

・・・さて、一国の首相が異端の経済学を信奉し政策を行おうとした場合、専門家集団である官僚組織はどう対応すべきだろうか。小泉純一郎内閣時代は、首相の諮問機関である経済財政諮問会議でかんかんがくがくの議論が行われた。しかし安倍元首相は増税延期を公約に掲げ選挙を行い、その勝利をもって自らの判断を正当化した。これはポピュリズムそのものである。
一方で政府の役割である構造改革などに手を付けず、10年続けたリフレ派の社会実験も効果を上げなかった。この間の政治と官僚組織の政策決定のあり方は大いに検証される必要がある・・・