カテゴリーアーカイブ:行政

男らしさのつらさ

2023年11月10日   岡本全勝

10月26日の日経新聞夕刊に「男性らしさへの向き合い方」が載っていました。

男性と聞いたとき、無意識に思い浮かべるイメージはないだろうか。内閣府の調査によると、女性より男性の方がいわゆる「男性らしさ」の規範にとらわれがちな様子が浮かび上がる。これが生きづらさにつながっている人もいるだろう。男性像を巡る近年の議論や状況について専門家に聞いた。

「求める像ひとつではない」日本男性相談フォーラム代表理事の福島充人氏
――電話による男性相談事業を続けてきました。
「1995年に前身となる団体がホットラインを開設した。現在月3回、夜間に相談を受けている。私たち相談員も男性であり、当事者の目線を持ち対話する姿勢を重視している。相談は強くあろうとする男らしさのよろいと、弱さがせめぎあう葛藤と矛盾の場だ。年間150〜200件ほど電話がかかってくる。近年は減ったが、それでも無言は15%を占める」
「男性相談は言葉を発するまでに高いハードルと長い滑走路があるといわれる。こんな話を聞いてもらえてうれしかった、といって電話を切る人は多い」

――悩みを共有できる場が少ないのでしょうか。
「男性はそもそも悩みを語り合う場があまりないし、語っていいと思っている人も少ないというのが実感だ。それは望まない孤立も生んでいる」

政府予算、基金の問題。民間に丸投げ

2023年11月6日   岡本全勝

朝日新聞が「膨張予算」という連載で、政府の基金を検証しています。さまざまな対策で基金が創られますが、使われずにいるものも多いのです。10月20日は「巨額の基金、企業が仕切る 官から運営委託、補助金審査も」で、もう一つの問題を分析してしいました。
役所が仕事を企業に丸投げすることで、能力が低下する問題についてはコメントライナー「役所にも人工知能がやってくる」で解説しました。

・・・経済対策の補助金などに使う国の基金が急増している問題で、主要な業務の大半を民間企業に委ねる基金事業が相次いでいることが分かった。公的機関だけで執行を担えないほど基金の規模が急拡大したためだ。補助金をどこに配るのかという政策的な判断が必要な業務も企業に委ねられ、中立性や公平性が問われる事業もある。

一度の補正予算としては過去最大の8・9兆円を基金に投じた2022年度の第2次補正の事業について、朝日新聞がお金の流れを各省庁の資料から分析した。その結果、予算計上された基金50事業計8・9兆円のうち、民間企業に補助金を配る事務局を委ねているものは8事業計3・9兆円分あった。
基金の多くは、独立行政法人や公益社団法人など公的機関が運営を担っている。一方で、8事業では、一般社団法人などがいったん基金の設置を引き受けたうえで、補助金の支給先を決める審査を含む業務の大半を、広告大手や民間シンクタンク、人材派遣会社に委ねていた・・・

・・・やむを得ず、この基金の実施を担う農林水産省以外の4省庁は、一般社団法人、低炭素投資促進機構に資金の管理を担当させ、審査の支援など業務の大半を野村総研などに外注することにした。機構の関係者はこう解説する。「うちには一切ベンチャー育成のノウハウが無い。だから、専門知識がある企業に実務をお願いせざるをえない」
経産省関係者によると、2020年度補正で新設した「中小企業等事業再構築促進基金」も、独立行政法人、中小企業基盤整備機構に運営を依頼したが、他の事業を新たに引き受けているとして断られた。結局、実務をパソナにほぼ「丸投げ」することで、機構が基金の設置に応じたという・・・

指定管理者制度20年

2023年11月3日   岡本全勝

日経新聞文化面が10月23日から3回連載で「指定管理者制度20年の功罪」を載せていました。

・・・公共施設の管理・運営に民間の参入を認める指定管理者制度が導入されて今年で20年。美術館やホール、図書館といった文化施設では開館時間の延長など利便性が増す一方で、経営効率化による専門人材の大量離職などひずみも生じ、地域の文化芸術を振興する施設の使命が揺らいでいる。制度の弱点をどう乗り越えるのか。最前線を追った・・・

入場者数は増えたが、働く人の待遇の悪さ、学芸員が定着しないこと、定期的に事業者を選定し直すことで長期的視点が欠如することなどが挙げられています。
かつての経験から、直営だから良いとは言えません。他方で「経費削減」という視点でなく、どのように機能を活かすかという視点が必要なようです。「丸投げ」はよくないです。
報道機関だけでなく、行政でも、この仕組みの功罪を検証すべきですね。

昭和をひきずる年金制度

2023年10月30日   岡本全勝

10月18日の日経新聞オピニオン欄、柳瀬和央・論説委員の「「昭和」をひきずる年金制度 男女の違い、まだ必要か」から。男女共同参画社会といいながら、なぜこのような制度が今も続くのですかね。男女共同参画白書が指摘しないのでしょうか。一部の既得権者の反対があると、全体の利益のためにそれを廃止できないことが、日本の発展を阻害しています。この記事は、「政治の役割」に分類しておきます。

・・・夫が働き、妻は家事に専念する――。こんな昭和の家族像を前提にしたルールが公的年金にはいくつも残る。2025年の次期制度改正はこれらの見直しが焦点になる。
「昭和モデル」として最も知られているのは第3号被保険者制度だろう。専業主婦ら会社員や公務員の配偶者は保険料を納めなくても基礎年金を受給できる仕組みだ。
主婦らがパートに出ても収入が一定額以上になるまでは扶養家族として扱われ、年金保険料を納めなくても基礎年金を受給できる仕組みだ・・・

・・・実は、昭和を引きずった年金のルールはこれにとどまらない。家計を支える者が死亡した場合に残された遺族の生活を支える遺族年金にも色濃く残っているのだ。
子どもがいない30歳の専業主婦が会社員の夫を亡くした場合を想定しよう。すぐには難しくても、いずれ仕事を探して収入を得ようとするのが現在では一般的な行動のはずだ。ところが年金制度の考え方はそうなっていない。この女性は再婚するか籍を抜くかしない限り、遺族厚生年金を終身でもらうことができる・・・

単身高齢者サービス契約の問題

2023年10月28日   岡本全勝

10月15日の朝日新聞「おひとりさまの「困った!」対策は? 日本総合研究所・沢村香苗さんに聞く」から。後段で提案されている、自治体の役割は必要でしょうね。

・・・身寄りがない高齢者を主な対象に、入院時の身元保証、死後の葬儀や遺品処理などのサービスを提供する事業者が増え、トラブルも起きています。いま求められることは・・・

・・・私たちが単身世帯に実施した調査では、夫を亡くした高齢女性と、未婚の男性が多くいました。一人暮らしではない高齢夫婦も、どちらかが入院すればそれぞれが「おひとりさま」になるかもしれない。困ったとき、それを助ける人が周りにいないことが問題です。
たとえば、入院するときに保証人がいない。介護保険制度は、本人にふさわしいサービスを選んで契約することになっていますが、その手続きをする家族がいない。調子が悪いなかで終末期医療をどうするかも考えないといけない。退院して5階建ての団地には戻れないから転居するとしても、新しい家を探したり契約したり。実際に動いて手伝う人がいません。
死んだ後、残った空き家やペットは。自分の葬儀は。決めておいたとしても、決めてあることさえ誰にもわからなくなる可能性があります。
ケアマネジャーらが本来業務を超えて支えてきた面もあります。事例が増えすぎ、これ以上支えられないという声を聞くようになってきました。
さまざまなニーズに応えるように、民間の事業者が増えています・・・

・・・契約書も、いろいろな項目があってわかりづらい。体調を崩すなどして、これから入院、入所しようかという高齢者がしっかり理解して契約するのは相当難しい。
生活支援を提供するといっても、本当に必要なときだけ支援するのか、電球をかえるなど日常の困りごとにも対応するのか、事業者によって範囲が全然違います。
利用者としては、やってほしいことは何かを決め、事業者に「これはやってくれるのか」「いくらでやってくれるのか」と確認しながら選ぶしかないのが現状です。

短期的には、標準的なサービスや、「重要事項は説明してください」など注意事項をまとめた公的なガイドラインを示す必要があります。静岡市は、自治体が事業者を認証して優良なところの情報を提供する仕組みを始めようとしています。
中長期的には、国なり自治体なりが何をするのかを改めて考えていく必要があると思います。未婚の人や離婚が増えており、今後、さらに多くの人にかかわる問題になっていきます。特に都市部では高齢期を「おひとりさま」で迎える人が、すごく増えるでしょう。
その際、どういう人がどう困るのかを整理しないといけません。「おひとりさま」も、お金や判断力の有無によって、困っていること、その解決策は違います。一様ではないのです。そして、全員に少なくともこれを担保するべきだとしっかり決められるなら、そこに公的なお金が入ることに、社会的な合意がえられるかもしれません・・・