カテゴリーアーカイブ:行政

板垣勝彦著『行政手続きと自治体法務』

2024年2月5日   岡本全勝

板垣勝彦著『行政手続きと自治体法務』(2024年、第一法規)を紹介します。
板垣先生は横浜国立大学教授であり、実務経験をも活かした、公務員に役に立つ著書や論文をたくさん書いておられます。市町村アカデミーでも、人気の講師です。

宣伝文には、「自治体における行政手続について、行政手続法や個別法・条例・判例など、法務の観点から解説。公正・透明な行政手続の実現のために注意すべきポイントや手続の改善方法等が理解できる」とあります。
自治体職員向けに、個別事例(自治体が敗訴した事例)も紹介して、実務で問題になる点を説明しています。
現場で役に立つ本です。

かつての政と官

2024年2月4日   岡本全勝

日経新聞「私の履歴書」1月は、元財務次官の武藤敏郎さんでした。

15日の「政官関係」に、次のような話が載っています。
・・・細川護熙非自民連立政権の1994年度予算編成の話を続ける。社会保障担当の主計局次長として、野党自民党きっての厚生族議員である橋本龍太郎政調会長に状況を報告しなくてはと考えた。自民党本部を訪ねると、閑散として人の出入りがほとんどない。
橋本さんは「我々は野党だから、次長さんのような偉い人がわざわざ来なくていいよ」と皮肉交じりの口調で話された。真顔に戻ると「僕は自民党と大蔵省は夫婦みたいな関係だと思っていたよ。だけど、いざ下野すると、役人どもは冷たいね」とつぶやかれた。
私は「官僚は時の政権に仕える立場なので・・・」と口ごもった。橋本さんは「それはきれい事だな」と納得されなかった。自民党が大蔵省に向ける視線は厳しかった・・・

20日の「主計局長」には、次のような話が載っています。
・・・私は2001年に情報公開法の施行を控え、予算編成の透明性の向上が重要な課題になると考えた。族議員や各省と密室で調整を重ねるばかりでは、財政再建にも限界がある。国民の理解を深めるオープンな情報発信の努力も必要だと思った・・・

OECDの対日経済審査報告書

2024年2月1日   岡本全勝

1月11日に、経済協力開発機構(OECD)が2年に1度の対日経済審査の報告書を公表しました。ウエッブで「主な結論」をクリックすると、日本語の要約を読むことができます。
日経新聞、1月12日「日本に定年制廃止を提言 OECD、働き手の確保促す」は、次のように伝えています。
・・・経済協力開発機構(OECD)は11日、2年に1度の対日経済審査の報告書を公表した。人口が減る日本で働き手を確保するための改革案を提言した。定年の廃止や就労控えを招く税制の見直しで、高齢者や女性の雇用を促すよう訴えた。成長維持に向け、現実を直視した対応が求められる。

OECDは高齢者や女性、外国人の就労底上げなどの改革案を実現すれば出生率が1.3でも2100年に4100万人の働き手を確保できると見込む。出生率を政府が目標とする1.8まで改善できれば5200万人超を維持できるという。

高齢者向けの具体策では、定年の廃止や同一労働・同一賃金の徹底、年金の受給開始年齢の引き上げを提示した。
OECDに加盟する38カ国のうち、日本と韓国だけが60歳での定年を企業に容認している。米国や欧州の一部は定年を年齢差別として認めていない。
日本で定年制が定着した背景には、年功序列や終身雇用を前提とするメンバーシップ型雇用がある。企業は働き手を囲い込むのと引き換えに暗黙の長期雇用を約束することで、一定年齢での定年で世代交代を迫った。
職務内容で給与が決まる「ジョブ型雇用」は導入企業が増える傾向にある。岸田文雄首相は23年10月の新しい資本主義実現会議で「ジョブ型雇用の導入などにより、定年制度を廃止した企業も出てきている」と述べた。
OECDは年功序列からの脱却などを指摘するが、大企業を中心にメンバーシップ型の雇用は根強い。マティアス・コーマン事務総長は11日の都内での記者会見で「働き続ける意欲が定年制で失われている」と強調した・・・

このほか、次のような項目も提言しています。
・段階的な消費税増税などの税収確保
・年功序列賃金からの脱却
・同一労働・同一賃金の徹底
・非正規労働者の被用者保険の適用拡大

生活保護基準額決定過程を明らかにしなかった

2024年1月29日   岡本全勝

1月24日の朝日新聞に「生活保護減の決定過程、説明責任は 名古屋高裁判決、「ブラックボックス」と国を批判」が載っていました。

・・・生活保護の基準額を2013年から段階的に引き下げた国の決定を違法とした昨年11月の名古屋高裁判決は、異例の手法をとった国の決定過程を「ブラックボックス」と批判した・・・
・・・まず一つ目は、一般の低所得者世帯との均衡を図る「ゆがみ調整」だ。この調整は、専門家らが入る厚生労働省審議会の検証結果を踏まえたものだが、同省は独断で調整幅を一律に半分のみとする処理をした。この結果、基準を上げるべき世帯も十分に上がらず、全体で90億円分の保護費が削減された。さらに、こうした対応をしたことを、同省は国民や審議会の委員にも知らせていなかった。
判決は半分にすること自体は「厚労相の裁量権に属する」と認めた一方、専門家の検証結果を変更することは「非常に重要な政策判断」で、「明らかにして是非を問うことが必要不可欠」だったとする。
16年に北海道新聞が報じるまで3年以上、2分の1調整の事実が伏されていたことを「ブラックボックス」と表現し、「国民に知らされず、専門家も検証できなくされていた」と指摘。情報公開に後ろ向きな姿勢に対し、「国民や専門家からの批判を避けようとした可能性も十分に考えられる」とまで言及した。

二つ目の「説明不足」に挙げたのが、厚労省が独自指数をもとに、08~11年の物価下落分を反映させた「デフレ調整」(580億円分)。テレビやパソコンなど保護世帯では支出が低い品目も、同省は専門家に諮ることなく、一般世帯の消費支出をもとに下落率を算出。07~08年には物価が上昇していたが、そこは考慮せず、08年以降の物価下落だけを反映させていた。
判決は専門家の検証を経ないだけでは「過誤、欠落があると言えない」としつつ、その場合は「全体が具体的に説明されなければならない」と指摘。国は妥当性を主張したが、「判断の過程の全体が具体的に説明されているとは言えない」と認定した。
当時の厚労省担当者は口頭弁論で、役所の意思形成過程に関わるとして多くの証言を拒否した。判決は「ブラックボックスにしておいて、専門技術的知見があるから検討の結果を信用するよう主張することは許されない」と強調した・・・

客観的、公正性が、官僚の矜持だったのですが。これは、どうしたことでしょうか。役所の中のどの段階で、このような作業と非公表が決められたのでしょうか。

批判もする友人の意見を聞く

2024年1月27日   岡本全勝

1月10日の朝日新聞オピニオン欄、藤田早苗さんの「「人権のレンズ」持てる教育を」の続きです。

―日本の人権状況について、国連の人権機関や専門家から繰り返し、懸念が表明されたり、勧告が出されたりしてきました。
「驚くのは、日本政府は勧告にまったく耳を傾けようとしないことです。2021年に国会提出を断念した出入国管理法(入管法)改正案に対し、国連人権理事会の3人の特別報告者などが国際人権基準に照らした問題点を指摘したところ、当時の上川陽子法相が『一方的な見解で、抗議せざるを得ない』と反発しました。『クリティカル・フレンド』(批判もする友人)である特別報告者の勧告を無視して、国際社会で信頼と評価を得るのは難しいでしょう」

―「クリティカル・フレンド」とは何でしょう。
「相手のために耳の痛いことでも忠告してくれる友人という意味です。国連人権勧告は友人による建設的な忠告と受け止めるべきなのに日本政府はそれができない。部活動の先輩やコーチから的を射た忠告を受けたとき反論や無視をしますか。多くの国連加盟国は勧告に真摯に向き合い、建設的に対話を重ねています」

もっとも、まったく意見を聞かない国や人もいて、ひんしゅくを買っています。日本がそうなってはいけませんよね。