カテゴリーアーカイブ:行政

官僚で身につく技能

2024年5月30日   岡本全勝

5月23日の朝日新聞「霞が関にこだわらない?3」「社会課題解決、ロビー活動でもう一度」から。

・・・民泊参入の「壁」が昨年7月、見直された。仕掛けたのは、「ロビー活動」を支援する会社「ポリフレクト」を経営する宮田洋輔さん(41)だ・・・
・・・企業が政府や議員に働きかける「ロビー活動」は欧米ではさかんだ。米企業がロビー活動に投じる費用は年間6千億円超とされ、「ロビイスト」も1万人を超える。「市場ルールをゆがめる」との批判があるが、ルール形成に当事者の企業が関わるのは当然でもある。
役所任せの日本企業の姿勢を目の当たりにし、「ならば、自分がやる」と思いが膨らみ、13年12月、IT企業に転職した。

転職して気づいたのは、官僚経験の「価値」だった。仕事の日程や進め方を事前に作り込む「ロジ業務」は、官僚時代は「無駄が多い」とうんざりしていたが、民間では「効率的な仕事の進め方」と評された。業界や政治家など様々な関係者の利害を調整する「根回し」も、典型的な官僚の手法だ。しかし、この作業を通じて、物事を様々な立場から考える視座が身についていた。「自分がいかに成長していたか、霞が関の外に出て初めてわかった」

民間企業に5年弱在籍し、より幅広い社会課題に関わりたいとの思いが強まり、18年7月に独立し「ポリフレクト」を立ち上げた。政府側が「一企業の利益」と判断しがちな要望も、広い視座で捉えれば社会課題の解決につながる。手がけるのは、そんな案件だ。
企業だけでなく古巣の経産省関係者からも「政策の意見を聞きたい」と声がかかる。ロビー活動は、企業と官僚の間の「垣根」を下げることができる。今はそんな思いで、霞が関を奔走している・・・

霞が関官僚のやりがい

2024年5月29日   岡本全勝

5月22日の朝日新聞「霞が関にこだわらない?2」「幸福運ぶミツバチ、地域のために」で井上貴至さん(38)が取り上げられていました。
井上君は総務省官僚で、現在は山形市の副市長です。鹿児島県長島町の副町長のとき、様々な企画を打ち出し、スーパー公務員とも呼ばれています。

・・・井上さんは「これだけの挑戦ができるのは、自分が霞が関の官僚だからこそ」と言う。「長島の副町長になったのが29歳。いま38歳で、中核市である山形市の副市長をやらせてもらえる。官僚でなければ、こんなポストは任せてもらえない」
長時間勤務が原因で離職する人がいるなど、霞が関が直面する課題も理解している。
それでも、霞が関に希望はある、と思う。国の看板を背負って、誰とでも会える。そこで受けた刺激を仕事に生かせば、日本の将来を良い方向に変えられると信じる。

「企業はまず従業員や株主の利益を考えるが、行政はすべての住民がステークホルダー(利害関係者)。全員の幸福を考えながら青臭く理想を論じられることが、官僚の最大の魅力です」
やれることはまだまだある。だから、霞が関を諦めない。そう決めている・・・

角野然生著『経営の力と伴走支援』

2024年5月28日   岡本全勝

角野然生著『経営の力と伴走支援 「対話と傾聴」が組織を変える』(2024年、光文社新書)を紹介します。
東日本大震災の原発事故対応で、経済産業省は、被災した約8000の事業者の事業再開に向けて個別支援を行いました。そのための組織として、福島相双復興官民合同チーム(後に福島相双復興推進機構)がつくられました。事務局長として組織を立ち上げ、仕事の進め方を編み出したのが、角野君です。

公務員と会社員で組織したので、官民合同チームと呼ばれました。この組織の職員が、避難先の各事業者のもとに出かけていって、事情を聞き、相談に乗って、事業の再開に向けて支援するのです。経産省は原発事故の責任者であり、当初は被災事業者に会ってももらえない、話を聞いてもらえない状態でした。通い続けることで、少しずつ意思疎通ができるようになりました。
従来の行政の手法は、補助金など支援の手法をつくり事業者から申請してくるのを待つものでしたが、この伴走支援では役所側が支援対象に出かけていき、話を聞き、問題点を一緒に考え、解決に向かって継続的に支援するのです。これが、「伴走支援」です。

補助金を交付するのは作業としては簡単です。それに対しこの伴走支援は、役所側から問題点を指摘して解決策を提示するのではなく、支援先が自分でも問題点を考え、解決方法を一緒に考えます。自分で気づき、考える。自立への支援をするのです。行政としては、手間暇がかかります。
復興庁では、被災地の小規模事業者の事業再開支援として、地域復興マッチング「結の場」をつくりました。これは、悩んでいる被災事業者と、相談に乗って対策を考える支援をしてくれる企業とをつなげる企画です。これも、補助金を交付するだけでは補助金が終わると事業が継続しないので、自立への支援を行うものです。

連載「公共を創る」の第76回「再チャレンジ政策で考える行政のあり方」で、行政の手法がこれまでは窓口で待つことでよかったのが、これからは出かけていく必要があるこへとの変化を指摘しました。その一つの事例と見ることもできます。
角野君はその後、関東経産局長、経済産業省中小企業庁長官を務め、この手法を被災地以外にも広めます。
現場の実情から編み出された行政手法で、従来の哲学を変えました。そして成功したのです。役所から出かけていって、相手の相談に乗り、自立への支援をする。この行政手法は、他の分野でも拡大できるしょう。

公務員では雇えないので別法人にする

2024年5月26日   岡本全勝

5月11日の日経新聞東京版に「東京都の財団、行政DXけん引 企業OB「官民の壁」崩す」が載っていました。

・・・東京都が民間から人材を集め、都内自治体のデジタル化を加速している。全額出資の財団法人を設立し、日本マイクロソフトや富士通の出身者らを採用した。優秀な人材には都庁幹部を上回る給料を支払う。業務開始から8カ月が過ぎ、民間出身者が行政の現場で成果を出し始めている・・・

一般財団法人「ガブテック」です。職員14人のうち3割が民間経験者です。都庁でなく別法人にしたのは、公務員の枠組みでは優秀な人材を採用できないからです。給料が公務員水準では低くて、「よほどの物好きでなければ来てくれない」のです。この法人では、職員の年収が最高で1500万円に設定しています。都庁では部長(50歳)が1300万円、課長(45歳)で1000万円程度です。

経験年数と職位で給料が決まる、警察や消防、保育などの一部職種を除き給料表が同じという仕組みは、無理になってきています。民間企業と競合する技術職にも、別の給料表が必要になるのでしょう。これも、メンバーシップ型からジョブ型への移行の一つとも考えられます。

被災地での農業支援

2024年5月22日   岡本全勝

このホームページでしばしば紹介している、原発被災地での、企業などによる営農支援。今年も引き続きやってくださっています。
浪江町では、5月12日に、田植えが行われました。アイリスグループ社員、東京農業大学の学生、いわきFCアカデミーU14・15、福島県12市町村への移住者、それにアイリスオーヤマの大山社長、浪江町の吉田町長も参加してです。

また、新しい取り組みもあります。南相馬市では5月11日に「みらい農業学校」が開校し、市内外の20歳から55歳までの15人が入校しました。この学校は、マイファーム(京都市)が運営し、1年間で、農業法人に就農できるよう支援する研修機関です。「福島民報記事」「マイファームのサイト

それぞれに、ありがとうございます。