カテゴリーアーカイブ:行政

公務員では雇えないので別法人にする

2024年5月26日   岡本全勝

5月11日の日経新聞東京版に「東京都の財団、行政DXけん引 企業OB「官民の壁」崩す」が載っていました。

・・・東京都が民間から人材を集め、都内自治体のデジタル化を加速している。全額出資の財団法人を設立し、日本マイクロソフトや富士通の出身者らを採用した。優秀な人材には都庁幹部を上回る給料を支払う。業務開始から8カ月が過ぎ、民間出身者が行政の現場で成果を出し始めている・・・

一般財団法人「ガブテック」です。職員14人のうち3割が民間経験者です。都庁でなく別法人にしたのは、公務員の枠組みでは優秀な人材を採用できないからです。給料が公務員水準では低くて、「よほどの物好きでなければ来てくれない」のです。この法人では、職員の年収が最高で1500万円に設定しています。都庁では部長(50歳)が1300万円、課長(45歳)で1000万円程度です。

経験年数と職位で給料が決まる、警察や消防、保育などの一部職種を除き給料表が同じという仕組みは、無理になってきています。民間企業と競合する技術職にも、別の給料表が必要になるのでしょう。これも、メンバーシップ型からジョブ型への移行の一つとも考えられます。

被災地での農業支援

2024年5月22日   岡本全勝

このホームページでしばしば紹介している、原発被災地での、企業などによる営農支援。今年も引き続きやってくださっています。
浪江町では、5月12日に、田植えが行われました。アイリスグループ社員、東京農業大学の学生、いわきFCアカデミーU14・15、福島県12市町村への移住者、それにアイリスオーヤマの大山社長、浪江町の吉田町長も参加してです。

また、新しい取り組みもあります。南相馬市では5月11日に「みらい農業学校」が開校し、市内外の20歳から55歳までの15人が入校しました。この学校は、マイファーム(京都市)が運営し、1年間で、農業法人に就農できるよう支援する研修機関です。「福島民報記事」「マイファームのサイト

それぞれに、ありがとうございます。

中島誠著『社会保障と政治、そして法』

2024年5月21日   岡本全勝

中島誠著『社会保障と政治、そして法』(2024年、信山社)を紹介します。

二部構成になっています。
第一部「社会保障制度を巡る政治的決定の内容(コンテンツ)」は、社会保障制度改革における二大論点、すなわち「給付対負担」と「サービスの供給主体と利用者による選択決定=参入規制、利用者による選択の許容度」を取り上げます。この二つの論点は、永遠の課題でしょう。
公共インフラや国防、治安、衛生といった公共サービスと異なり、社会保障の多くは国民が直接の受益者でありその利益が目に見えるものです。誰がどこまで負担し、どれくらい受益を受けるかが明白です。だから保険制度が成り立つのです。ですが、保険料だけでなく税金を投入することから、それが不明確になります。
そして日本では「(現世代の)受益は大きく、負担は小さく」という要望がまかり通り、保険制度としては成り立っていない、持続可能性が少ない状態にあります。それはひとえに、国民と政治家の選択であり、責任です。隠れた負担は、将来の人たち、すなわち子どもたちに先送りしています。

第二部「社会保障制度を巡る政治的決定の過程(プロセス)」は、その名の通り、日本の政治過程において、なぜこのような決定がなされているかの分析です。そこでは、このような政治を生む日本の風土と政治慣行が分析、批判されます。
「執拗低音としての全会一致志向(議事運営についての全会一致ルール、与野党の攻防)、既得権益の跋扈、同質社会、能力平等観とリーダー育成」
「政治主導(内閣主導)の未確立、決定と責任の所在の不明確性、国会機能の未措定、コンセンサスとリーダーシップ」

このように、前半は社会保障を巡る政治の問題、後半は日本政治過程批判となっています。日本政治過程批判は多くの人(すべての国民といってもよいでしょう)が口にします。本書は、社会保障という全国民が関与する主題を取り上げて、具体的にそれを分析します。政治家だけでなく、このような決定を支持する国民にも、大きな責任があります。

本書の内容を表すとしたら、「なぜ日本の社会保障改革は進まないか」「元厚生労働省官僚による体験的、社会保障政治論」です。お勧めです。
著者が早稲田大学大学院で講義してきたことを、本にしたものです。著者には、『立法学』(第4版、2020年、法律文化社)という専門書もあります。

なし崩し的政策変更

2024年5月20日   岡本全勝

昨日の記事「人手不足」の続きになります。5月4日の朝日新聞「人手不足「感じる」7割 不安の最上位「医療・介護」80% 朝日新聞社世論調査」には、次のようなことも指摘されています。

・・・人手不足の業種を対象とした政府の外国人労働者の受け入れ拡大方針については、2018年11〜12月の郵送調査でも尋ね、賛否は44%対46%と拮抗していた。5年余りで大きく賛成へと傾き、特に18年調査で消極的だった高齢者の賛成が大幅に増え、60代では35%だった賛成が63%へと急増した・・・

5年間で、国民の意識はこんなにも変化するのです。ある程度の予測がつく近未来についても、人は現状を変えることに消極的で、現実が変化すると「気がつく」ようです。
国民だけでなく、日本政府もこのような意識の上に成り立っているようです。移民政策を正面から掲げず、なし崩し的に事実上の移民受け入れを進めています。「建前は変えず、現実の変化を容認する。そして現実の変化が一定程度を越えると、建前を変える」のです。建前を守るために、現実の変化を阻止しようとはしません。成り行きに任せると言ってもよいでしょうか。

5月17日の朝日新聞夕刊、久保田一道記者の「人手不足 外国人労働者、確保の鍵は共生」に、次のような話が載っています。
・・・労働力不足を背景として、国内の多くの産業に欠かせない存在となった外国人労働者。この春、今後の受け入れをめぐる議論が相次いで節目を迎えている。
一つが、2019年に導入された在留資格「特定技能」の労働者の受け入れ枠を広げる政府方針の決定だ。制度導入時に34万5150人と設定した5年間の受け入れ枠を大きく拡大し、今後5年で82万人とした・・・
制度導入に向けた議論では、与党内から「事実上の移民政策だ」と反発の声があがったが、政府が見直しの方針を説明した今年3月の自民党の会合で、正面から異を唱える議員はいなかった。ある自民議員は「地元の経営者の話を聞けば、外国人労働者の必要性は明らか」と実情を語った・・・

なし崩し的な移民受け入れは、就労目的以外で入国させ労働者として働かすことが多く、正面玄関からでないことから、「バックドア」「サイドドア」からの移民と呼ばれます。コンビニ、工場、水産業、旅館・・・いろんな職場で外国人労働者が働いています。今や彼らなしには、産業が成り立たないでしょう。
なし崩し的政策変更も一つの手法ではありますが、正面から移民を認めないことは、彼らを受け入れる各種の制度が不十分になります。教育、医療保険、地域社会への包摂などです。

財政規律

2024年5月16日   岡本全勝

5月3日の日経新聞「私が考える憲法」、大田弘子・政策研究大学院大学学長の「財政再建、改憲ありきに反対」から。

ー日本国憲法は第7章で財政について定めます。様々な立場で政策決定に関わり、憲法にどんな問題意識がありますか。
「憲法に財政規律条項を入れるべきだとの主張がある。日本の財政規律が弱いのは憲法に問題があるからではない。財政規律を維持しようとする政治的意思が弱いからだ。1997年に(歳出削減目標などを示す)財政構造改革法ができたが、翌年停止になった。景気がよくなってから復活させる動きもなかった」
「今のままでは、たとえ憲法が改正されたとしても財政状況は変わらないだろう。やるべきなのは5年程度の中期で予算や財政を管理することだ。危機感が薄くなり視野が短期的になっている」