カテゴリーアーカイブ:行政

世界の目に映る、日本の不平等

2025年2月21日   岡本全勝

1月28日の朝日新聞「世界の目に映る、日本の「不平等」 国連の女性差別撤廃委、秋月弘子副委員長に聞く」から。

・・・ジェンダーギャップ指数が146カ国中118位の日本。日本社会の男女の不均衡について、昨秋、国連の女性差別撤廃委員会(CEDAW)も改善すべき点を指摘しました。委員会の副委員長を務める亜細亜大学の秋月弘子教授(国際法学)はジェンダーをめぐる「日本の当たり前は世界の非常識になっている」と話します。

―CEDAWの仕事はどのようなものですか。
家族関係などの私的な領域から政治経済まで、あらゆる分野でジェンダー差別をなくす措置を取るよう求める女性差別撤廃条約という条約があります。日本を含めて189カ国が締約しています。委員会は締約国の状況を審査し、解決策などを提案します。具体的には、私たち委員が1年に3回ジュネーブに集まり、1回に8カ国ずつ審査していきます。政府の他に、その国の市民団体などからも報告書を上げてもらい、そこに性差別があるのかないのか、精緻な「ジェンダーレンズ」を通して見ていきます。

――今回の日本への勧告にはどのように関わられたのですか?
独立性、公平性の観点から自身の国籍国の審査には一切関与できないことになっています。
ウェブサイトで公表されてから最終見解を読みましたが、ネットなどを中心に「日本の問題に口を出すな」という批判があがったことは非常に残念でした。

―日本がジェンダー平等に近づくためにはどのような取り組みが必要だと思いますか。
ジェンダーの問題は政治、経済、すべての分野にまたがっています。今は内閣府男女共同参画局が担当していますが、それでは十分ではありません。専門家を育成し、政策の立案や実行を推進するジェンダー庁をつくるべきです。
そして独立した国内人権機関も必要です。審査にあたって市民団体からCEDAWに提出された報告書は基本的に公表されます。しかし今回の日本審査では、公表された44の報告書以外に公表されない「極秘」扱いの報告書が20通近くあったそうです。
政治的な混乱や紛争があって、報告書を送ったことで国内で迫害や相当な嫌がらせを受けることが懸念される場合に非公表扱いにするのですが、日本も、差別を問題提起したことで攻撃される危険があるような状況になってしまったのかと驚きました。

業界団体の反対で法案が出せない

2025年2月20日   岡本全勝

2月15日の読売新聞に「個人情報保護法見直し IT業界団体 法案提出の壁 与党の事前審査 難航」が載っていました。

・・・違反事業者に対する課徴金制度などを盛り込んだ個人情報保護法改正案の今国会での提出が危ぶまれている。「業界団体が改正案に納得していない」として自民党の閣僚経験者が法案提出に強く反対しているためだ。個人情報保護委員会は今年に入って、業界団体の求める規制緩和策を追加で公表するなど、譲歩を引き出そうとギリギリの交渉を続けている。だが、そもそも業界団体が法案に対する完全な「拒否権」をもつことは健全なのか・・・

・・・「個情法改正案は『C法案』。今のところ国会提出の見通しは立っていない」。政府関係者はこう明かす。
C法案とは、各省が国会に提出しようと準備を進めていた法案のうち、提出予定リストから漏れた「検討中法案」の通称である。いったんC法案になっても、その後の巻き返しで提出に至ることもあるが、「3月半ばがタイムリミット。それ以上調整が長引けば難しい」と関係者はみる。
改正案がC法案に回されたのは、与党の事前審査が通らないためだ。個情法の場合、第一関門は自民党内閣第2部会とデジタル社会推進本部で、ここで承認されないとその先の政調審議会、総務会に進めない。この「入り口」にあたるデジタル社会推進本部の実力派議員が「業界団体が納得しない法案は出さない」と譲らなかったとされる。

個情法は付則で法施行から3年ごとの見直しが定められており、今回は一昨年から検討が始まった。こどもの個人情報や生体データ、AI開発に必要なデータの取り扱いなど、論点は多岐にわたる。昨夏には意見公募を経て改正方針の中間整理もまとめられたが、経団連、新経済連盟、日本IT連盟などが反対。このため個情委は検討会を設け、特に反対が強い課徴金と団体訴訟について議論してきた。
有識者と消費者団体は「指導や勧告が中心の現行制度では、違反行為を抑止できない」「海外では既に導入され、国内でも多くの法令で導入済み」「対象は悪質な違法行為で、まじめな企業は心配ない」と主張したが、業界団体は「現行制度を有効活用すべきだ」「議論が尽くされていない」と反対し、結局、報告書には両論が併記された。

「報告書を読んでもらえれば、どちらに理があるかは分かるはず」。検討会に消費者代表として参加した情報通信消費者ネットワークの長田三紀氏は唇をかみ、「データ利活用は、消費者の事業者への信頼があって初めて進むもの。だが、いくら消費者が求めても、事業者が反対すると何も進まない」と悔しがる。
現在、党のデジタル政策の主導権を握るのはデジタル社会推進本部。その関心はデータ利活用に集中する。同本部が提言した「デジタル・ニッポン2024」作成のためヒアリングした対象も、経団連、新経連、IT連などの業界団体や企業ばかりだった。技術やサービスの複雑さもあり、同本部での発言権は一部議員に集中している。現状、事前審査を通すにはその議員の了解が必須で、議員が業界団体の意向を優先すれば、業界団体が法案の「拒否権」をもつ構図が生まれることになる。

だが、業界団体は日本経済全体の利益を代弁しているのか。
実のところ、経団連傘下の企業でも、その主張を苦々しく思う企業は少なからず存在する。既に海外の規制に対応しているグローバル企業からは「今の緩い日本の規制では、うちのように法令順守にコストをかけているまじめな企業がバカを見る」(メーカー)との声が漏れる。
AI関係業界でも開発用データの収集を容易にする改正に期待が高まっていた。「AI開発の環境整備が遅れれば、世界との競争にも大きな影響が出る」。プライバシーテック協会の竹之内隆夫事務局長は懸念する・・・

障がい児、18歳の壁

2025年2月19日   岡本全勝

1月22日の朝日新聞夕刊「終わりなき育児に希望を3」「18歳からの居場所、作ろう」から。

・・・巣立ちの春といえば高校卒業の3月だろうか。解放感と寂しさの漂う季節を、障がい児や医療的ケア児の親は「18歳の壁」とも「崖」とも呼ぶ。
朝はスクールバスで特別支援学校に。下校後は放課後等デイサービス(放デイ)ですごし、仕事を終えた親は午後6時ごろ迎えに行く。親子の生活を支えてきた「命綱」が卒業と同時に一気に消える。
日中は生活介護や就労支援の施設に通うことになるが、始まりは遅く、午後3~4時には終わる。その後の行き場はなく、一人で過ごすこともできない。生活の激変で心身に支障をきたす子もいる。多くの親が力尽き、離職に至る。
悩み抜いた親たちが33年前に手探りで始めた「卒業後の居場所」が東京都世田谷区にあると聞き、認定NPO法人「わんぱくクラブ育成会」が運営する「ひかり」を訪ねた・・・

・・・平日の開所時間は午後4時から7時半ごろまで。日中の活動を終えた人たちが集まってきて、ゲームをしたり、好みの音楽をかけて踊ったり。以前は毎日参加できたのだが、利用者が60人近くなった今は、曜日ごとに週1回ずつしか通えない。こうした成人の居場所は都内でも数少ないため、希望者は増え続け、小さな場所と限られた職員で回すのは限界に来ている。
国の制度がない中で、世田谷区は10年前から「ひかり」の活動を市区町村の任意事業である「日中一時支援」に含めることで、一定の補助が受けられるようにした。それでも運営は赤字で「放デイ」など他の事業の収益で穴埋めしているのが実態だ・・・

中央省庁の定員管理

2025年2月17日   岡本全勝

季刊『行政管理研究』2024年9月号に、長屋聡・元総務審議官が「中央省庁改革以降の行政改革施策について(その2)」を書いています。紹介が遅くなってすみません。

その「はじめに」にも書かれているように、政府の機構や定員の膨張抑制は、長年、継続的に取り組まれてきたのですが、近年その解説がなかったのです。この論考は、その点で価値の高いものです。
定員合理化計画は、1968年以降、2025年度から始まる第15次計画まで続けられています。合理化計画で政府全体で定員を削減して、それを財源として必要な部署に割り当ててきました。よって、合理化計画の削減目標(多くは5年で5%~10%削減)が実行されても、他方で増員が認められるので、純減数にはならず、増える場合もあります。

このような努力によって、食糧事務所、林野、運転手などの分野で大きく削減し、それを財源として新しい分野に振り返ることができました。しかし、私も何度か書いているように、日本の公務員数は世界各国の中でも、極めて少ないのです。そして長期にわたり定員削減を続けてきたので、もはや限界に来ています。いえ、削減しすぎたと言えるでしょう。
他方で、東日本大震災対応、こども家庭庁、デジタル庁、新型コロナ対策など新しい行政分野での増員が必要なっています。ワークライフバランスを進めると、実労働時間が減り、その隙間を埋める必要も出てきます。それで、2019年度以降、政府全体では純増になっています。

組織管理の経過と考え方も書かれていて、有用です。
また同号には、植竹史雄・内閣人事局主査に「国の行政機関の機構・定員管理に関する方針の一部変更について」も載っています。

「その1」(2024年3月号)は、小泉内閣から岸田内閣を対象として、その間の行政改革の取り組みを整理しています。「第二次臨調以降の行政改革施策」(1、2)に続く、行政改革・行政管理の記録です。

日本政治で「第三極」に見えるもの

2025年2月17日   岡本全勝

2月13日の朝日新聞オピニオン欄は「「第三極」って?」で、砂原庸介教授の「政党の対立軸、なお不明確」が載っていました。

・・・いまの日本政治で「第三極」に見えるものは、議院内閣制のどの国でも起こりうる、過半数を得た政党がない「ハングパーラメント」と呼ばれる状態です。小選挙区制であっても、2大政党に集約されるのは、非常に限定された条件でしか起きないのです。
衆院で比較第4党の国民民主党が「第三極」とされますが、こういう政党が力をもつのは珍しくありません。議席数の関係と、政策的に自民党に近いのでピボタル(かなめ)政党になりやすい。その位置取りと、対立軸を作るような「極」は少し違う気がします・・・

・・・どちらに転ぶかわからない状態というのは、有権者の政党や政治に対する期待が「制度化」されていないことを意味します。政治のあり方が、政党などの組織ではなく、政治家個人というアクターに依存する状態になっている。これはいいことではないと思います。
いまの日本では、政党の対立軸が明確ではありません。安全保障政策などの伝統的な左か右かの対立軸はありますが、それ以外の対立軸が何なのか、社会的な合意がない。だから、「第三極」といっても、政策的にどう位置づけられるのかがはっきりしない。
求心力を持つ「極」が生まれる背景には、複数の政策の対立軸があると思いますが、日本ではそうでもない。社会が多様化しているのなら、政策や政党も多様化しそうですが、必ずしもそうはなっていません・・・

ただし、この記事は「3」についての議論で、国際的な第3極、二元論と三元論の違いと並べてあります。それぞれに興味深いのですが、焦点が絞りにくくなっているようです。