カテゴリーアーカイブ:行政

氷河期世代の今とこれから

2025年8月20日   岡本全勝

7月28日の日経新聞「溶かせ氷河期世代」「ようやく正社員…でも年金・住宅・介護の三重苦」から。
・・・就職氷河期世代はバブル崩壊後の1993〜2004年ごろに社会に出た1700万人ほどを指す。大卒男性の就職率は1990年の81%から2000年に55%まで落ち込んだ。新卒一括採用と終身雇用が当たり前の時代。スタートでつまずき、望まぬ非正規就労を強いられた人も多い。生産年齢(15〜64歳)人口の2割ほどを占め、働き盛りの終盤にある。

明るい兆しはある。総務省の労働力調査によると1978〜82年生まれの男性は40代前半になって初めて正規雇用率が9割を超えた。企業の旺盛な採用意欲が40〜50代に波及しつつある。
ようやく雇用に光明がみえても、その先には三重苦が待ち構える。
まずは低年金だ。公的年金の財政検証によると、経済成長率が低迷するシナリオでは2024年度末時点で50歳の人の5人に2人は将来年金が月10万円未満しかもらえない。
非正規雇用が長い氷河期世代は年金の2階部分、厚生年金の加入が短くなりがちだ。1階部分の基礎年金(国民年金)も年金額を抑える措置が57年度まで続く・・・

・・・衣食住の一角、住宅も難題となる。総務省の住宅・土地統計調査によると、23年の持ち家率は40代で58%、50代は66%だった。いずれも30年前から10ポイント程度低下した。終の棲家(ついのすみか)を持てぬまま、高齢期に突入する。
みずほリサーチ&テクノロジーズの藤森克彦主席研究員は「長期雇用を前提にした企業の福利厚生と相まって、政府は景気対策の側面のある持ち家政策を進めてきた」と話す。
マイカーやマイホーム、専業主婦世帯といった昭和の人生モデルは氷河期世代に当てはまりづらい。藤森氏は「90年代以降、非正規労働者や家族形態の変化によってほとんどの年齢層で持ち家率が低下した。生活基盤を整備する住まい政策が重要だ」と指摘する。

見過ごされがちなのは親の介護負担だ。日本総合研究所は氷河期世代のうち親を介護する人は33年に約200万人と23年から2.6倍に増えると試算する。下田裕介主任研究員は「貯蓄が乏しく介護離職の選択は難しい。仕事と介護の両立に大きな負担を強いられる」とみる・・・

森友文書、財務省の改ざん

2025年8月19日   岡本全勝

8月4日の朝日新聞「改ざん、日曜のメールから 森友文書、3回目開示へ」から。

・・・そのメールが届いたのは日曜日の夕方だった。
「今後開示請求があった際のことを踏まえると、現時点で削除した方が良いと思われる箇所があります」
送信は2017年2月26日午後3時48分、重要度は「高」。件名には「【重要・作業依頼】」とあった。東京・霞が関の財務省理財局の職員から、大阪市の近畿財務局(近財)の課長らにあてたメッセージだった。
国会ではこの時期、学校法人・森友学園(大阪市)への国有地払い下げが問題となっていた。大幅に値引きして売られ、建設予定の小学校の名誉校長に安倍晋三首相(当時)の妻、昭恵氏が就いていたことが疑惑を呼んだ。理財局は国有地の管理を担当し、近財が現場対応にあたっていた。

理財局のメールは、森友問題の決裁文書の改ざんを近財に指示するものだった。
日曜日の夕刻、近財の職員らは急きょ登庁し、作業にあたった。理財局からはその後も、改ざんする文書名と箇所を具体的に指示するメールなどが相次いで届く。
翌27日午後6時15分、近財側は理財局職員2人にメールを送った。
「ご指示に従い、内容を確認して、大幅にカットさせていただきました」

その後も理財局の指示は止まらず、改ざんの作業は続いた。改ざんを強いられ、発覚した18年3月に自死した近財職員の赤木俊夫さんが残した文書には、近財側の抵抗の跡が残る。
「既に意思決定した調書を修正することに疑問が残る」「現場の問題意識として既に決裁済の調書を修正することは問題があり行うべきではないと、本省審理室担当補佐に強く抗議した」・・・

政治の混迷、自民党を支える業界団体の消滅

2025年8月13日   岡本全勝

8月10日の日経新聞「風見鶏」は、山内菜穂子記者の「現役世代、怒りの矛先は何か 減税論が示す自民党政治の限界」でした。
自民党対社会党の対立構図が、はるか過去の話となり、自民党対民主党の対立も野党の多党化で崩れました。そして、自民党を支える業界団体もほぼ消滅し、政党は社会の利害対立、国民の要求をすくい上げることができなくなっています。戦後、ある程度機能した政党政治が、機能しなくなったのです。しかし、各政党は次への転換(政策の提示、国民の不満や意見の吸い上げ、支持者の確保など)に熱心ではないようです。与野党ともに、執行部の責任を問い、交代を議論すること以上に、この役割と支持確保を議論すべきです。

・・・税金は自分たちのために使われていない――。現役世代を中心にこんな怒りが渦巻いている。

現役世代が生活苦などから減税を要求する動きは、昨年末から本格化した「財務省解体デモ」で注目を浴びた。成蹊大の伊藤昌亮教授(社会学)によると、参加者は賃上げを期待しにくい自営業者や主婦、中小企業従業員ら様々だ。
「彼らは労働者ではなく納税者として団結しているため、緊縮財政を象徴する財務省が悪者になった」。労働組合なら企業の経営サイドに要求が向かう。労組に入る労働者が2割を切った今は敵意の対象が政府になるという見方だ。手取りが減る税金や社会保険料がターゲットになりやすい。

京大の諸富徹教授(財政学)は減税の要求に別の背景があると指摘する。これまでの政策決定のしくみが機能しなくなった点だ。
自民党は業界団体が要望する政策を実現し、その見返りに票を集めてきた。組織や団体から距離を置く人が多くなった現在は、業界向けの政策では響かない。結果として「減税のように幅広い人に一挙に利益を与える政策が選ばれやすくなっている」と分析する。

税や社会保険料の負担感を減らすだけでなく、納税への納得感をどう高めていくかも重要になる・・・

やはり政策は官僚が決めている?

2025年8月12日   岡本全勝

8月9日の朝日新聞に「コメ足りませんでした 農水次官ら、自民会議で謝罪」が載っていました。

・・・コメの増産に向けた政策転換について、農林水産省は8日、自民党の農林関係政策の会議で説明した。報道陣に公開された冒頭で、渡辺毅事務次官が「コメは足りている」と誤った主張を続けていたとして謝罪した。
渡辺次官は、コメ価格の高騰の要因を検証した調査により、コメ不足はないという誤った前提で行政を進めていたことが明らかになったとした。「この場を借りておわびを申し上げたいと思います。どうもすみませんでした」と述べ、ともに立ち上がった農水省幹部らと頭を下げた・・・

ここで見える構図は、米の生産目標設定とその管理は、官僚に権限と責任があるということです。農水官僚が自民党の部会に対して謝るのは、権限と責任が官僚にあって、政治家にはないということを示しているようです。政治における「官僚主導」は、まだ続いています。
ところで、農水省が謝る相手は、自民党でしょうか、国民でしょうか。

高齢社会対策大綱(2024年9月)

2025年8月11日   岡本全勝

2024年9月に、「高齢社会対策大綱」が閣議決定されました。もう1年近く前のことになります(書こうと思いつつ、放置してありました。いつものことながら反省。このホームページは速報性が売りではないから、よいでしょう)。
紹介したいのは、高齢者対策として、地域における社会参加、その場を作ること、地域の側からも課題解決に高齢者の参加を期待することが、取り上げられていることです。関係か所を引用します。

(3) 地域における社会参加活動の促進
① 多世代による社会参加活動の促進
高齢期における体力的な若返りや長寿化を踏まえ、長くなった人生を豊かに過ごすことができるよう、高齢期においても社会や他者との積極的な関わりを持ち続けられるようにすることが重要である。仕事の中でしか社会とのつながりがない場合には、定年退職とともに望まない孤独や社会的孤立に陥る場合もあり、高齢期を見据えて、高齢期に入る前から地域とのつながりや居場所を持つ機会を増やす取組も求められる。
また、地域社会の観点から見ても、地域を支える人材の高齢化や人手不足が進み、高齢世代から若年世代への役割の継承も課題となっている中で、地域でのつながりや支え合いを促進し、地域社会を将来にわたって持続可能なものとしていくためには、地域の社会課題に関する学びの機会の確保や担い手の育成を図ることが必要である。
こうした観点から、多様で複合化した社会課題に対応していくため、幅広い世代の参画の下、地方公共団体、大学等、企業・団体、NPO、地域住民等の多様な主体の連携により、地域社会の課題解決に取り組むためのプラットフォームの構築や活用の促進を図る。その一環として、幅広い世代から地域社会の担い手を確保するため、地域の仕事や社会活動、学習機会等の情報を一元的に把握でき、それぞれの働き方のニーズや状況に応じて個々の業務・作業等を分担して行うモザイク型のジョブマッチングを含め、多様な活躍の機会が提供される仕組みの構築を図る。こうした仕組みの構築に当たっては、施策分野の壁を越えて分野横断的な活動を行うための中間支援組織の育成・支援を図るとともに、住民の生活圏・経済圏の状況等を踏まえつつ、行政区域を超えた広域的な連携が効果的に行われるよう留意する。

地域での居場所作りについては、こども食堂が高齢者や外国人をも包摂しつつあります。「こども食堂、高齢者や外国人の居場所
内閣府政策統括官(共生・共助担当)は、まさに社会課題を扱う、これからの行政の主役だと、私は考えています。産業振興や行政サービス拡充ではなく、生活者を対象としてその困っていることを解消しようとする行政です。これまでは、このような課題は、個人や家庭の問題として片付けられていました。しかし、よくよく見ると、彼ら彼女らが暮らしにくいのは、社会の側に問題があるとわかったのです。
社会の意識や仕組みなので、行政だけで解決できるものではなく、企業や非営利団体の力も重要ですし、国民の意識が変わる必要があります。