カテゴリーアーカイブ:行政

政党の構図

2014年7月17日   岡本全勝

7月9日の朝日新聞オピニオン欄、「政党政治を問い直す」、萱野稔人・津田塾大教授の発言から。
・・政党とは本来、政策を競うものだ。そうよく言われる。しかしこれからの時代、それを素直に自明視することはできない。
なぜなら政策を実行するには財源が必要だからだ。社会保障の拡充にしても、景気対策にしても、あるいは防衛力の強化にしても、その点は同じである。
政党が政策を競うということは、したがって財源を奪い合うということである・・
・・少子高齢化のもとでそうした集団による競争がおこなわれれば、希少なパイの奪い合いになり、いきおい既存のパイでは足りなくなるだろう。足りないパイは政府が借金をして、将来世代にツケをまわすしかない。政党間の競争は将来世代のパイまで奪い合う事態をもたらしている・・

政党は、近代民主主義国家にとって、必要不可欠です(なのに、日本国憲法には、規定がないのですが)。
国会などの場で、多様な国民の意見や利害を代表する、あるいは集約するには、政党が必要です。有権者の支持を集めるために、社会のある利益集団(利益層)を代表するか、意見を同じくする人たちを代表することになります。
社会に、利益や意見の明らかな対立があると、政党の配置はわかりやすくなります。ごく簡単に言うと、近代先進国では、地主、企業家、労働者、その他のホワイトカラー、あるいは軍人が、母集団になりました。税金をどこから取るか、関税や補助金などで既存産業を保護するか、労働者の利益を保護するか企業家の利益を優先するかなどです。
どのような社会をつくるかの意見の違いも、そこから出てきます。資本主義で行くのか、社会主義に進むのか。東西冷戦を背景に、第2次大戦後の保守対革新は、この争いでした。もっとも、戦後日本においては、保守政党(と呼ばれる政党)が改革を提唱し、革新政党(を自称する政党)が「憲法を守れ」に代表されるように保守を提唱しました。
さて、そのような「呼称と実態のズレ」を別にして、現在の日本において、政党の構図がいまいちわかりにくい。また、2大政党制を目指したのにそうなっていないことの背景には、国民の間の利害対立が明確なっていないことがあります。経営者の多くがサラリーマンになり、資本家対労働者の対立は、明確でなくなりました。市場経済主義対共産主義(=自由主義対一党独裁)も、勝負がつきました。
私は、日本においては、都会対地方や高齢者対若者が利害対立の軸、そして政党の対立になるのではないかと思っていました。前者については、東京一極集中が進み、政治的には成り立ちにくくなりました。後者については、年金や医療費の財政負担において、今なお存在理由を失っていないと考えています。

萱野さんの発言は、なるほどと思います。対立軸は、何に予算をつけるかでなく、誰が負担するかになっているのです。しかし、それはあまりに露骨で、夢がありません。政党が有権者に売る「商品」としては魅力がなく、正面からは打ち出しにくいです。政策の販売戦略としては、「○○に予算をつけますよ」と唱え、その負担については言及しない戦法をとるのでしょう。それを見抜いた有権者は、「その政策は良いですが、どこから財源を持ってくるのですか」と質問しなければなりません。
政策の販売合戦が実は負担の押しつけ合いだと、国民に見抜かれると、民主主義は難しくなります。民主主義は経済成長のある時代にしか成り立ち得ないのではないかという説を、『新地方自治入門』p301で紹介しました。

男女共同参画が進んでいる分野

2014年7月15日   岡本全勝

朝日新聞連載「患者を生きる」7月13日は、「男性の介護者急増」でした。
・・全国組織「認知症の人と家族の会」(事務局・京都市)の調査では、介護者の男性の割合は1981年は8%だったが、2010年には32%に増えた・・
私は、家庭で介護をしているのは、女性が多いと思っていました。高齢者の介護は、娘や嫁が多いとです。これ自体が、古い思い込みですね。
認知症の介護に関して、この調査によれば、男女の比率は1対2です。妻の介護を夫がし、両親の介護を息子がしているということでしょうか。

大阪の課題とは

2014年7月11日   岡本全勝

今日の放課後は、旧知の関西の方との意見交換会。最近の情勢をお互いの視点から分析した後、関西の課題、10年後の大阪について議論しました。
私は、拙著『新地方自治入門』で、自治体が取り組まなければならない課題を、「役所内の課題」と「地域の課題」に分けて議論しました。行革や分権、役所の効率化は、市役所としては重要な課題です。しかし、住民からすると、暮らしが良くなって「なんぼ」です。自治体の効率化は、その手法なのです。
住民の安心など地域の課題はたくさんありますが、東京から見ると、関西・大阪の課題の第一は、「地盤沈下」をどうするかでしょう。関西復権は、経済界の復権です。東京都知事はそんなことは考えなくても良いのですが、大阪市長と府知事の一番の仕事は、10年後の関西経済の復権です。そしてそれは、役所だけではできません。どのように、経済界、マスコミ、住民を巻き込むかです。そして、4年や5年では出来ません。

若者の自立援助ホーム

2014年7月2日   岡本全勝

読売新聞7月1日夕刊に、「若者の自立援助ホーム。孤立させず、退去後が肝心」が載っていました。自立援助ホームは、その記事によれば、義務教育を終えた20歳未満の若者が、食事などの生活援助や就職の支援を受けたりしながら、自立を目指して共同生活をする場です。児童養護施設は18歳までに退所させられるので、その受け皿となっています。親が養育を拒否したり虐待を受けて、養護施設に入りますが、学校を終えると独り立ちが求められます。しかし、未成年の若者が家族無しで独り立ちすることは、極めて困難です。
この記事では、自立援助ホームで、社会経験を積んだり、さまざまな相談に乗ってくれること、そしてホームを出た後も相談に乗ることが重要だと指摘しています。この、自立援助ホームも、民間の努力で成り立っているようです。

財政政策、政府の役割

2014年6月29日   岡本全勝

財政学の教科書には、財政の3つの機能が載っています。
1 公共財の提供(資源配分の調整)
2 所得再分配(所得と富の分配の調整)
3 景気の調整(経済の安定化)
市場の失敗に対する補完として説明されます。マスグレイブが体系化しました。
これは、財政の役割です。しかし、市場と政府の関係をより広い視野から見ると、政府の役割には、これら以外にも重要な役割があります。
すなわち、市場経済が機能するように条件を整備することです。私有権の保護、契約の尊重、取引のルールの設定、紛争が生じた際の解決などです。これらが機能して、初めて市場の失敗が議論になるのです。
私は、「国家の役割と機能の分類」で、「経済社会活動のルール設定」という項目を立て、次のようなものを具体的な行政分野としてあげました(行政の分類)。
①経済社会:民法・商法・会社法、通貨制度、金融制度、経済取引
②労働:労働・雇用法制
③公共空間管理:電波・電気通信の監督、交通ルール
④紛争処理:民事裁判、各種ADR制度
もう一つ、市場に対する政府の役割があります。
「国民生活の向上」のために、産業政策、科学技術の振興を行うことも、現代の政府には期待されています。これも、財政の3機能(市場の失敗の補完)とは違った、政府の役割です。
拙稿、「行政構造改革」第3章第3節政治の役割(月刊『地方財務』2008年9月号)で、このような政府の役割を整理しました。ところで、このような議論(政府の役割)を整理した教科書は、案外見つかりません。もちろん拙稿は、十分とはいえません。連載自体が中断しています。すみません。いずれ、完成させます。