カテゴリーアーカイブ:行政

官僚が議論する場がない

2025年7月12日   岡本全勝

連載「公共を創る」は、副題が「新たな行政の役割」です。地方行政に限らず、日本の行政のあり方を議論しています。さらには、日本社会の特徴や問題を生む背景にも、議論が及んでいます。それが、行政に対応と変革を迫っているからです。

掲載誌は、時事通信社の「地方行政」です。地方公務員や地方行政関係者にも読んでもらいたいのですが、国家公務員や国家行政に関心ある方に読んでもらいたい内容になっています。ところが、地方行政にはいくつか専門誌があるのですが、国家行政には見当たりません。なので、「地方行政」に載せてもらっています。

私は長年、国家行政を議論する媒体がないことを問題だと考えてきました。それぞれの省庁や局には、白書や広報誌や専門誌があり、政策を議論できるのですが、国家行政を横断的に議論する場がありません。例えば国家公務員のあり方についても、関係者の議論の蓄積がないのです。行政管理については、季刊『行政管理研究』がありますが、範囲は狭いです。
「官僚が発言をしなくなった」という批判もありますが、議論できる場、意見を発表できる場もないのです。

これには、国家行政機構の形にも、原因があります。「分担管理原則」の下で、内閣の仕事、政策は各省(各局)に振り分けられています。それらを統合する仕組み、組織がないのです。人事も統一する組織がなく(採用と給料表は人事院でしたが)、各省任せでした。ようやく、内閣人事局ができました。
経済発展期には、各局がそれぞれを伸ばせば(部分最適)、全体が良くなる(全体最適)担ったのです。それを全体で調整したのが予算(大蔵省)でした。自治体には企画部や企画課がありますが、国では各省、各局にそのような組織はあっても、内閣にはありません。

10代の居場所をつくる

2025年7月10日   岡本全勝

6月28日の読売新聞夕刊に「10代の居場所 全国に続々 共働き世帯増、教員不足」が載っていました。

・・・中学生や高校生が安心して過ごせる「居場所」作りに取り組む自治体が増えている。家庭や学校だけでは、悩みが多い若者をサポートできなくなっているからだ。居場所が増えることで、自己肯定感やチャレンジ精神が高まる効果も期待されている。

千葉県柏市のJR柏駅近くにある「中高生の広場」は5月下旬の夕方、70人の中高生でにぎわっていた。
無料の飲み物を手におしゃべりする女子高生や、黙々と自習する男子高生、備品のトランプやボードゲームで盛り上がる中学生もいる。市職員や大学生スタッフの5人は子どもと談笑したり、静かに見守ったりしている。
広場は昨年12月、百貨店だった建物を改装した複合施設の5階に、同市が開設した。月曜日を除く平日は放課後の午後3時半から、土日や長期休みは午前9時から開く。300人以上が集まる日もある。
ボードゲームで遊んでいた高校1年の磯野泰希さん(15)は「無料で自由に過ごせて居心地がいい。秘密基地みたい」と笑顔だ。

居場所作りに取り組む認定NPO法人カタリバ(東京)の調べによると4月時点で、少なくとも40自治体が中高生の居場所を設置している。同法人の吉田愛美さん(33)は「共働き世帯の増加や学校の教員不足もあり、人間関係や進路など悩みの多い10代に、家庭や学校だけで向き合うには限界がある」と指摘する。

こども家庭庁も、2023年末に策定した子どもの居場所作りの指針で、地域のつながりの希薄化や、不登校や虐待の件数が増加する現状を踏まえ、子どもの居場所作りに取り組むよう各自治体に促した。
神奈川県鎌倉市は昨秋、青少年会館の2階に中高生の居場所「COCORU(ココル)かまくら」を新設した。市職員が2人常駐する。市の担当者は「悩みがあっても、学校や家庭で助けを求められない中高生は多い。親や先生以外の地域の大人と信頼関係を築く場所にしたい」と意気込む・・・

福島被災地視察

2025年7月9日   岡本全勝

7月8日9日と、福島県の被災地を視察してきました。原発事故被害地では、避難指示が解除された地域で復興が進んでいます。特に解除が遅くなった町を見てきました。

大熊町では、かなりの面積で稲作が再開されました。田んぼに雑草が生えているのと、稲が育っているのとでは、風景が大きく違います。
最初の復興拠点として開発した大川原地区は、住宅や施設が完成しています。次の拠点となる大野駅前の開発も進み、たくさんの人が作業をしていました。
ゆめの森では、予想以上の数の子どもたちが学んでいます。規格にはめる教育でなく、個性を尊重した教育で、視察も多いとのこと。リンクを張った学校のサイトをお読みください。
双葉町も、駅前の開発が進んでいます。さらに地域を拡大します。工業団地も順次企業が進出しています。浪江町も、駅前開発と工業団地建設が進んでいます。もちろん、まだ着手できない地域もあります。

私は、発災直後は、放射線量の高い地域は、人が戻ることはないだろうと考えました。政府もそれを前提に、全損賠償をしたのです。しかし、放射線量の減衰が予想より早く進み、可能な地域から除染をして、復興拠点を作ることにしました。その際も、ここまで早く街が戻るとは思いませんでした。当時を知る役場幹部と、そのような話をしてきました。
今後も、着実に復興が進むことを期待しています。間違いなく、そのように進むでしょう。先日皇居で、天皇陛下にも「日本国民の力をもってすれば、必ずや復興します。これからもお気にかけてください」と申し上げました。

「サヴァ缶」販売終了へ

2025年7月7日   岡本全勝

6月27日の読売新聞に、「「サヴァ缶」販売終了へ 復興支援の商品」が載っていました。
発売時には、その命名にうなりました。フランス語の「Ça va?」を連想させます。このような理由で販売が終了するとは、残念。

・・・国産のサバを使って岩手県内で製造されていた缶詰「サヴァ缶」が販売を終了する。サバの不漁が主な要因。東日本大震災で被災した漁業者の支援を目的に誕生した人気商品で、惜しむ声が上がっている。
サヴァ缶は2013年に発売。オリーブオイル漬けやレモンバジルなど5種類の洋風な味付けに加え、カラフルなパッケージデザインが話題を呼び、累計約1200万個を売り上げた。

一方で、近年は海水温の上昇などでサバ類の水揚げが減少。同県でも21年の2万6800トンから、24年は1万2200トンにまで落ち込み、継続的な製造が難しくなった。在庫が店頭からなくなれば販売終了となる。商品を扱ってきた「道の駅釜石仙人峠」(釜石市)の佐々木雅浩駅長(63)は「販売終了は地元にとっても大きな損失」と惜しむ。販売元「岩手県産」(矢巾町)の坂本昌樹総務企画課長(47)は「全国で取り扱っていただき感謝している。今後、サヴァ缶に代わる新商品を開発したい」と話している・・・

渕上俊則著『地方自治発展史』

2025年7月6日   岡本全勝

渕上俊則著『地方自治発展史【改訂版】』(2025年、盈進社)を紹介します。
元総務省自治行政局長による、日本の地方自治制度と運用の歴史です。

江戸時代の原型から、明治政府による地方制度の形成、憲法制定と地方制度の確立、その運用と発展、戦時下の地方制度、戦後改革、高度成長期の地方行財政、安定成長期の地方行財政、政治主導型政治と地方自治制度、というような章が並んでいます。それぞれに、丹念に説明されています。最後の章は、今後の動向と課題が述べられています。
450ページに上る、詳しい解説です。日本の地方自治の発展を勉強するには、よい本です。