カテゴリーアーカイブ:行政

「サヴァ缶」販売終了へ

2025年7月7日   岡本全勝

6月27日の読売新聞に、「「サヴァ缶」販売終了へ 復興支援の商品」が載っていました。
発売時には、その命名にうなりました。フランス語の「Ça va?」を連想させます。このような理由で販売が終了するとは、残念。

・・・国産のサバを使って岩手県内で製造されていた缶詰「サヴァ缶」が販売を終了する。サバの不漁が主な要因。東日本大震災で被災した漁業者の支援を目的に誕生した人気商品で、惜しむ声が上がっている。
サヴァ缶は2013年に発売。オリーブオイル漬けやレモンバジルなど5種類の洋風な味付けに加え、カラフルなパッケージデザインが話題を呼び、累計約1200万個を売り上げた。

一方で、近年は海水温の上昇などでサバ類の水揚げが減少。同県でも21年の2万6800トンから、24年は1万2200トンにまで落ち込み、継続的な製造が難しくなった。在庫が店頭からなくなれば販売終了となる。商品を扱ってきた「道の駅釜石仙人峠」(釜石市)の佐々木雅浩駅長(63)は「販売終了は地元にとっても大きな損失」と惜しむ。販売元「岩手県産」(矢巾町)の坂本昌樹総務企画課長(47)は「全国で取り扱っていただき感謝している。今後、サヴァ缶に代わる新商品を開発したい」と話している・・・

渕上俊則著『地方自治発展史』

2025年7月6日   岡本全勝

渕上俊則著『地方自治発展史【改訂版】』(2025年、盈進社)を紹介します。
元総務省自治行政局長による、日本の地方自治制度と運用の歴史です。

江戸時代の原型から、明治政府による地方制度の形成、憲法制定と地方制度の確立、その運用と発展、戦時下の地方制度、戦後改革、高度成長期の地方行財政、安定成長期の地方行財政、政治主導型政治と地方自治制度、というような章が並んでいます。それぞれに、丹念に説明されています。最後の章は、今後の動向と課題が述べられています。
450ページに上る、詳しい解説です。日本の地方自治の発展を勉強するには、よい本です。

諸富徹教授、「嫌税」の時代

2025年7月5日   岡本全勝

6月25日の朝日新聞オピニオン欄、諸富徹・京大教授の「「嫌税」の時代」から。

税金や社会保険料への忌避感が世の中で強まっている。政治家たちも「負担減」や「手取り増」を競い合い、来月の参院選は消費税など減税の是非を問う場にもなりそうだ。「嫌税」の状況が生まれた背景に何があるのか。見落とされていることはないか。税と社会保障に詳しい経済学者の諸富徹さんに聞いた。

――いま、なぜ税金がこうも嫌われるのでしょうか。
「物価上昇で低・中所得層に生活苦が広がっていることが大きいと思います。3年ほど前から賃上げが進んでいますが、物価に追いつかず、実質所得はむしろ下がっている。第2次安倍政権では消費増税が2回ありました。社会保険料はその前から上がり続けています。そこにインフレが重なった。ただ、これは直接の原因にすぎません」

――どういうことですか。
「根本の問題は日本の産業競争力が低下し、1990年代以降、賃金水準が横ばいだったことです。非正規雇用は約4割に拡大、経済格差も広がりました。昨年の衆院選では国民民主党が所得減税を訴え、躍進しました。本来、賃上げの不十分さを提起すべきなのに、いくつもの政党が税負担ばかりに焦点を当てたのはミスリードでした」

――なぜそうなりましたか。
「賃上げは民間のことなので、政策ではなかなか難しい。一方、税制は国会が決められる、というのはあったと思います」

――ネット上では税・社会保障の国民負担率が5割近いことを年貢になぞらえ、「五公五民」と批判する声もあります。
「言い得て妙というか、ある種の実態を表しています。江戸時代の農民のように、お上に搾り取られるばかりだと受け止められている。負担とセットで受益を実感できず、納税者の権利や、税のあり方を決めるプロセスへの参加の感覚を持てない。ここに大きな問題があります」

――権利と参加ですか。
「そもそも近代国家の税とは、国民が公的サービスを政府に委託し、やってもらうために払うものです。欧米では市民革命を通して、納税者は税の集め方と使い方を決める権利を持つという原理が確立されました。一方、日本はその経験がないまま明治時代を迎えた。大日本帝国憲法で納税は臣民の義務とされ、財政民主主義、つまり税負担と権利・参加をめぐる議論は深まりませんでした」

――日本国憲法で国民は主権者となり、選挙で政権を選ぶ営みを重ねてきました。税をめぐる意識も変わったのでは。
「確かに消費税の導入や増税への反発で、内閣がいくつも倒れたことがありました。ただ、財政支出や負担のあり方、国家の姿を考え、代わりのビジョンを示すものにはならなかった。今も負担面ばかりが注目され、成熟した権利や参加の意識は根づいていないと思えます」

――何が必要ですか。
「今の現象や不満を、政府や政治家、研究者が真剣に受け止め、改革を進めることです。具体的には、産業構造の転換や生産性向上を通じて、企業が持続的に賃上げを進められる環境を整える。そして若い人への投資を増やし、非正規労働者の待遇も改善する。これらは経済や産業、雇用のあり方に踏み込む難問ですが、放っておけば社会の分断が進み、民主社会の基盤が揺らぐと危惧しています」

家産制国家の復活?

2025年7月3日   岡本全勝

6月13日の日経新聞経済教室、野口雅弘・成蹊大学教授の「根源に「家産制」の復活」から。

・・・法の支配の反対は人の支配である。このときの「人」は特定の個人の信条、パーソナルな好み、あるいは気まぐれなどを指す。
権力者のパーソナルな命令に従いたくない。少なくとも命令の理由について議論する機会が欲しい。法の支配を支えるのは、理由なき支配を押し付けられたくないという個々人の気持ちである。そしてこうした気持ちが持続的に共有されることで成り立つエートス(倫理的な構え)によって、法の支配は維持される・・・

・・・ところが近年、法の支配の危機がいわれることが増えた。とりわけ大統領に返り咲いたドナルド・トランプ氏の言動を巡っての指摘である。行政機関の縮小・解体のため設置された「政府効率化省」(DOGE)は権限の不明確さや利益相反で批判されている。政権の方針に従わない人々、組織への制裁も露骨だ・・・
・・・トランプ氏の統治について、いま注目されている言葉がある。長らく忘れられていた家産制(パトリモニアリズム)である。ウェーバーが「支配について」で100年前に論じたものだ。父による家族の支配を意味する家父長制を国全体に拡張したシステムが、家産制である。これにより国家は巨大な「ファミリービジネス」になる。政治リーダーは従順なフォロワーをえこひいきし、恭順を引き出す。近代的な意味での法の支配は「人がだれかを問わず」が原則だが、家産制では逆に「人しだい」で対応が変わる。

ウェーバーによれば、家産制は近代的な官僚制以前の伝統的な支配形態である。合法的支配の典型である官僚制では、恣意性が可能なかぎり除去され、計算可能性が高められる。過去、行政課題が増大し、業務が複雑になり、専門性が求められるようになると、権力者のパーソナルな要素に依拠した家産制は行き詰まった。とりわけ財政、軍事、司法の分野で、素人の判断が通用しなくなるからだ。
家産制はしだいに官僚制の論理に席を譲っていった。当時、ウェーバーが危惧したのは恣意的な支配ではなく、むしろ過剰な官僚制化のほうであった。

1970年代にはイスラエルの社会学者S・N・アイゼンシュタット氏らによって「ネオ家産制」の概念が用いられた。アフリカなどの途上国で、形式的には近代国家だが実際には縁故や個人的なネットワークが政治的決定や利益の配分に重要な役割を果たしていることに注意が向けられた。
一方、今日の家産制論の主たる対象は前近代的国家や途上国ではない。米国の比較政治学者スティーブン・E・ハンソン氏とジェフリー・S・コプスタイン氏は共著「国家への攻撃」で、ハンガリー、イスラエル、英国、米国などで進行する家産制化による近代国家の原則の破壊について論じている。親近者やお気に入りを要職に登用すること、司法制度への介入、性的マイノリティーや多様性の否定といった現象を、彼らは家産制の概念と関連づけて説明している。
なぜ21世紀になって家産制がリバイバルしているのだろうか。私がとくに強調したいのは、この体制が、新自由主義以後の状況で可能になっている点である。定期的に繰り返されてきた官僚制批判や公務員バッシングが、えこひいきのない公正な行政という理念をおとしめてきた背景がある・・・

東日本大震災復興予算、2026年度から5年間1.9兆円

2025年7月2日   岡本全勝

6月21日の朝日新聞が「復興予算1.9兆円、政府決定 26年度から5年間 立ち入り制限緩和検討、課題山積」を載せていました。

・・・東日本大震災の復興政策を決める政府の復興推進会議(議長・石破茂首相)は20日、2026年度からの5年間(第3期復興・創生期間)に投じる予算規模を、総額1・9兆円とすることを決めた。
東京電力福島第一原発事故からの復興事業が中心で、福島県への事業に1・6兆円を充てる。ハード面での整備がほぼ完了した岩手・宮城両県にも1千億円ずつを配分するが、「中長期的に取り組むべき課題」としている心のケアや被災した子どもへの支援は「真に必要な範囲」に縮小する。
復興予算は25年度までに33兆円が使われる見通しで、30年度までの20年間では34・9兆円になる。

原発事故の影響で福島県の大熊町や双葉町など7市町村に残る帰還困難区域では、立ち入り制限の緩和も目指す・・・
・・・福島県内には、原則立ち入りが禁じられている帰還困難区域が残る。面積は東京23区の半分ほどで、境界にはバリケードなどが設置されている。中に入れるのは元々住んでいた住民や防犯パトロールなどに限られ、自治体などの許可も必要だ。
国は区域内を除染して人が住めるようにする取り組みを進め、22年6月以降、役場周辺など区域全体の約8%で避難指示を解除。今はそのほかのエリアでも29年までに帰還希望者が戻れるように自宅などの除染を始めている。ただ、除染されずに残る約9割のエリアをどうしていくかの具体的な計画はない。国が基本方針に盛り込んだように、安全確保を前提に自由に活動できるようになれば大きな転換となる・・・