カテゴリーアーカイブ:行政

遅れている定住外国人子弟への教育

2022年4月2日   岡本全勝

3月26日の日経新聞が「日本語苦手な子の5%が支援学級に 全小中生の1.4倍」を伝えていました。
・・・外国生まれなどで日本語が不得意な小中学生のうち5.1%が、本来は障害のある子らを対象とする特別支援学級に在籍していることが25日、文部科学省による初の全国調査で分かった。
小中学生全体の割合(3.6%)の1.4倍で、日本語の指導体制が整わないため少人数の支援学級で学ぶケースも多いとみられる。外国人材が日本経済に不可欠となり、家族の来日も増加が見込まれる。教員の追加配置や外部の専門家との連携による学習環境の改善が急務になる。
子どもの発達障害などに詳しいお茶の水女子大の榊原洋一名誉教授(小児神経学)は「日本生まれか否かで障害の発生率が大きく異なることは医学的に考えられない」と指摘。差について「障害の有無が適切に判断されていないか、通常の学級に余裕がないため少人数の支援学級に在籍させるケースが多いからではないか」と話す。

文科省によると、日本語指導が必要な児童生徒は2021年5月時点で約5万8千人おり、10年の1.7倍になった。公立小中に通う約5万2900人のうち約2700人が特別支援学級に在籍していた。
小中学校では14年度に授業として日本語を教える仕組みが導入されたが、実際に受けているのは対象児童生徒の約7割。約5割だった18年の前回調査より増えたが、授業として学んでいない子どもはなお多い。
対象者がいるのに日本語授業を実施していない学校に理由を尋ねると「担当教員がいない」との回答が最多だった。・・・

また次のような記事も。
日本語指導足りぬ教員、追加配置道半ば 地域差大きく
外国籍の1万人が不就学の可能性、19年比で半減
・・・外国籍で義務教育段階の年齢の子ども13万3310人のうち、7.5%にあたる1万46人が不就学か、就学していない可能性があることが25日、文部科学省の全国調査で分かった。初の調査となった前回2019年の1万9471人の半分程度になった。自治体による就学状況の把握が進んだことから大きく減少したとみられる。
文科省によると、外国籍の子に義務教育を受けさせる義務はない。希望する場合は国際人権規約などを踏まえ、日本人と同様に小中学校で受け入れる。
就学義務がないことから、子どもの氏名と就学状況を記載する「学齢簿」に外国籍児を記載しない自治体もあり、実態把握が進んでいなかった・・・

この問題は、このホームページでもかつて取り上げたことがあります。定住外国人が急増し、子どもたちも増えているのに、受け入れ環境が追いついていません。必要なところには教員を増やすべきです。いつまでも「公務員減らし」をしていることはよくないです。

児童福祉司の増員

2022年3月31日   岡本全勝

3月19日の日経新聞が「島根、児童福祉司増やしケア拡充 一般職の資格取得支援」を伝えていました。
これまであまり注目されなかった児童福祉司が、脚光を浴びています。そして行革続きの中、思い切った人員増ができなかった行政で、このような増員ができるようになりました。

・・・児童虐待の相談件数が約20万件(2020年度)と過去最多を更新する中、子どもや保護者に対するケアの拡充が急務となっている。対応にあたるのは主に児童相談所に勤務する児童福祉司。国は22年度までに人口3万人に対し1人を配置するよう定めるが、人材不足もあり現時点で基準に達するのは36道府県(推計)にとどまる。トップクラスの島根県や神奈川県では採用手法の多様化が効果を生み出しつつある。

児童福祉司は保護者の育児相談に応じたり、虐待されるなどした子どもを保護したりする公務員。大学で教育学などを学んだ人や福祉施設で実務経験がある人などが就く。21年4月時点の従事者は全国4844人。相談が増え続けている現状を踏まえ、5年で1.6倍になった。
国はさらなる増員が不可欠として19年に「児相管轄地域の人口4万人に1人以上配置」としていた基準を改正。「22年度までに同3万人に1人以上」とした。ただ、なり手は限られ「自治体間で取り合いになっている」(立正大の鈴木浩之准教授)・・・

・・・増員はケア拡充に向け一定の成果を上げている。20年度の神奈川県の1人あたり相談受付件数(政令市などを除く)は、16年度比約5件減の44.8件となった。県福祉子どもみらい局は「一人ひとりに細かな対応が可能になった」と強調する。島根県青少年家庭課も「夜間など緊急案件への対応力が増した」と話す。
ただ、国内の児童福祉司数は現時点で英国(3万人)の6分の1程度。虐待問題などを研究する子どもの虹情報研修センターは「専門職が圧倒的に足りない」と指摘する。幅広い支援に向けNPO法人などと連携を図る自治体も増えてきた。埼玉県は「児童虐待防止サポーター」制度を17年度に開始。虐待抑止や早期発見につなげる狙いで、21年度は600人を募集した・・・

「お笑い大蔵省極秘情報」

2022年3月29日   岡本全勝

3月23日の朝日新聞夕刊「時代の栞」は、テリー伊藤著『お笑い大蔵省極秘情報』(1996年)を取り上げた「競争社会極めた人間の業」でした。

・・・霞が関の競争社会の頂点にいるとされた大蔵官僚。全員がそうではないだろうが、出世のためには人を欺くことさえ厭わない彼らのゆがんだ本音がこの本からうかがえる。
「大蔵省から見たら、尻尾が見えていない日本人はいないんですよ」
「われわれにとっては大蔵大臣はどんなアホでも同じなんですよ」
たしかに東大法学部出身者は多い。仕事に誇りと自信を持つのはいいが、人を見下すような発言はいただけない。「京大や早慶は刺し身のツマ。(官僚トップの)事務次官なり主計局長になったりすることは皆無です」。そんな発言も載っている・・・

・・・テリーさんが一番驚いたのは彼らに迷いがないことだったという。「『間違ったことを俺はひとつもしていない』と言うのです」。脈々と続く官僚システムに忠実に従っている限り、自分は安泰だと思っていたのだろうか。
本が出版された90年代は、バブル崩壊後の景気低迷や金融危機の時代だった。巨額の不良債権を抱えた住宅金融専門会社(住専)の処理や金融機関の破綻処理のため、公的資金を投入することにも国民から不満の声が上がった。その裏で次々と明らかになったのが、大蔵幹部が受けていた過剰接待。逮捕者が出たり、蔵相や事務次官が辞任に追い込まれたりした・・・

ところが、懲りずに、その後も破廉恥な行為を繰り返します。1998年には「ノーパンしゃぶしゃぶ」料理店での接待問題が表面化します。何を勘違いしたのでしょうね。私はこの本を読んでいません。とはいえ、私も同業者です。

記事には、1990年代から最近までの大蔵省(現財務省)をめぐる不祥事が列記されています。転載しておきます。この年表には書かれていませんが、1998年の接待汚職事件を受けて、1999年に国家公務員倫理法が制定されました。

1995年3月 信用組合理事長からの過剰接待が発覚。大蔵省幹部2人を訓告処分
12月 元東京税関長が過剰接待問題で辞職
1998年1月 四つの都市銀行の担当者からの高額接待が明るみに。大蔵検査官2人を収賄容疑で逮捕
3月 大手証券からの収賄容疑で課長補佐ら2人を逮捕。主計局長、官房長らを処分
4月 民間金融機関からの過剰接待問題で職員112人を処分
6月 金融監督庁発足で大蔵省から金融検査・監督部門が分離
(2001年1月 中央省庁が「1府12省庁体制」に再編成される。大蔵省は財務省に)
2008年6月 タクシー事業者からの利益供与「居酒屋タクシー」問題で職員600人の金品受領が発覚
2018年4月 テレビ朝日女性記者へのセクハラ発言を報じられた福田淳一事務次官が辞任

砂原庸介ほか著 『公共政策』

2022年3月28日   岡本全勝

砂原庸介、 手塚洋輔著『公共政策』(2022年、放送大学教育振興会)を紹介します。これは、新年度から始まる放送大学大学院の教科書です。詳しい内容は、リンクを張った授業のページを見てください。
個別分野の行政を説明するのではなく、「公共政策が社会の中でどのように形成され、社会に対してどのような影響を与えているかを描き出す」(講義概要)もので、少し高度な内容になっています。
砂原教授の説明

これまでこの科目と教科書は、御厨貴先生が編者で、砂原教授たちが分担執筆していました、代替わりしということですね。
二人は、新進気鋭の行政学者です。もう、新進とは言えない年齢ですかね。

新年度(4月1日)から始まります。インターネット配信もあります。聞かなくても、本を読むだけでも勉強になります。
「行政や公共政策をもう一度勉強してみよう」と考えておられる方に、お勧めです。

小西砂千夫著『地方財政学』

2022年3月20日   岡本全勝

小西砂千夫先生が『地方財政学: 機能・制度・歴史』(2022年、有斐閣)を出版されました。500ページ近い大著です。これまでも先生はたくさんの地方財政の本を出版されていますが、それら研究成果の集大成でしょうか。

歳入と歳出の概要、国と地方の財政関係、財政調整制度の仕組みなど、日本の地方財政制度と実態を説明するだけでなく、次のような項目もあります。
 序章「統治」の学としての地方財政学
 第1部 地方財政をめぐる枠組み
  第1章 地方財政制度の起点
  第2章 地方財政をめぐる法的な枠組み
すなわち、制度の沿革にさかのぼり、なぜこのような制度ができているのか、政策制度の意図まで書かれています。学者による分析だけでなく、制度を設計した政府の側に立っての説明もあるのです。
これだけのことを書ける人は、なかなかいません。この本が定番になるでしょう。

冒頭のはしがきに、先生が、地方財政の制度運営(自治省)と研究(学界)との狭間を埋めることを任務とされた、いきさつが書かれています。私との対談(2004年)だそうです。光栄なことです。対談「地方交付税制度50年:三位一体改革とその先の分権へ」(月刊『地方財務』2005年1月号。対談の写真
先生は、総務省地方財政審議会会長に就任されました。