カテゴリーアーカイブ:行政

がん基本法、家族をも支える

2022年4月14日   岡本全勝

4月3日の読売新聞1面「地球を読む」、垣添忠生・日本対がん協会会長の「がん基本法15年 家族も支える医療 進展」から。

・・・今年は、「がん対策基本法」が施行されて15年という節目の年である。より良いがん治療を求める患者の声がようやく政治に届き、法成立に至った画期的な出来事だった。
07年4月に法律が施行され、国は、がん対策の青写真となる「がん対策推進基本計画」を策定する「協議会」を設立した。
基本法には、委員に「がん患者及びその家族又は遺族を代表する者」を選ぶと明記した。従来なら、メンバーはがん医療の専門家や有識者だけだったろう。同月中に初めての協議会が開催され、委員18人のうち、患者と家族、遺族の代表が計4人加わった。

協議会は第1期基本計画(07〜11年度)について議論し、事務局からは、すべてのがん患者のQOL(生活の質)向上を目標にするとの案が示された。
これに対し、がん患者家族や遺族代表の委員から、「がん患者も大変だが、家族も同等、あるいは患者以上に苦しむ。家族も加えてほしい」との意見が出た。当初案は全会一致で、がん患者・家族のQOLの向上へと修正された。
がん医療は、患者と家族を、医療スタッフらが支える態勢を目指すことになった。その意義は大きい・・・

自民党部会で責められる官僚たち

2022年4月12日   岡本全勝

4月6日の朝日新聞夕刊「取材考記」、野平悠一・記者の「「物言う」自民部会 対ロシア、安倍外交検証を」から。

・・・ロシアがウクライナへの全面侵攻を開始してから1カ月余り。外務省担当として連日、外交部会を中心とする会合を取材してきた。
始まるのは大抵の場合、午前8時。外務省や防衛省など、部会に呼ばれた関係省庁の役人が長机にぎっしりと並ぶのが恒例の光景となっている。官僚が最新の情勢をまとめた詳細な資料をもとに報告し、そこから議員の質問や意見などを受ける。

「弱腰外交だ」「日本政府の対応が遅すぎる」
ウクライナ情勢をめぐって議員から飛び出す意見は手厳しい。与党にもかかわらず、ここまで政府を厳しく糾弾する部会は他に見たことがない・・・ただ、厳しい言葉の矛先はほとんど外務省官僚だが、批判の中身は他でもない、これまで自民党の安倍政権が行ってきたロシア外交そのものだ・・・党部会では、安倍政権のレガシー(遺産)とされたはずの日ロによる共同経済活動や、「8項目の経済協力プラン」について、「日本が損得で動くと見られるとロシアに足元を見られる」と中止を求める声もあがる。安倍政権でつくった「ロシア経済分野協力担当大臣」のポストの廃止論もくすぶっている。

であるならば、当時の安倍政権によるロシア外交が正しかったのか、検証から始めるべきではないか。日本外交が大きな転換点を迎えるなか、総括抜きに今後の外交方針は示せない。安倍外交を後押ししてきた与党の責任は重い。「物言う外交部会」に期待したい・・・

官僚意識調査「現代官僚制の解剖」

2022年4月11日   岡本全勝

北村亘編『現代官僚制の解剖 意識調査から見た省庁再編20年後の行政』(2022年、有斐閣)が出版されました。宣伝文には、次のように書かれています。
「政治主導の強化の中で、現代日本の官僚たちは、日常業務や組織運営、そして政治や政策課題に対してどのような認識を抱いているのか。約20年ぶりに実施された包括的な官僚意識調査から多面的に分析する。」
このホームページでも紹介した、北村亘先生を代表とする2019年に実施された官僚意識調査に基づく官僚分析です。調査については、先生の論文「2019年官僚意識調査基礎集計」(「阪大法学」2020年3月)をご覧ください。

かつては「日本の官僚は優秀」との評価があり、官僚たちも自信を持って仕事をしていました。しかし1990年代以降、政治主導が進み、政治家との関係が変わりました。省庁再編も行われました。それからもう20年も経ちます。他方で官僚の評価が下がって志望者が減るなど、官僚の生態も大きく変わりました。
官僚を取り巻く環境の変化(社会の課題、政治家との関係など)とともに、官僚たちがどのように考えているかは、官僚制を機能させるために重要です。

調査自体も貴重なのですが、この本は調査結果を集計するのではなく、次のような切り口で、現在の官僚たちの考え方を分析します。政治家との関係、官邸主導、政策実施手法、国地方関係、新しい技術、組織内リーダーシップ、やる気、仕事と生活の両立などです。目次を見てください。何が官僚制の機能不全を生んでいるのか、また再生を阻んでいるのか。大きな足がかりとなります。
この調査と本の価値は大きいです。官僚だけでなく、政府の幹部、政治家、マスメディア(政治部)にも読んでほしい論文集です。
このような調査を雇い主である内閣が行わず、研究者に委ねていることが問題です。次回は、内閣人事局と一緒に実施してほしいです。(これは、「誰が官僚制を再生させるか、その所在が不明だ」という問題につながります。この点については、別途書きましょう。)「官僚意識調査」「北村亘先生「2019年官僚意識調査基礎集計」

本の「はじめに」で、私のことも紹介していただきました。
「テレビコマーシャルよろしく『24時間働けますか』と言いながら『5時から男』として夕方に宴席に行っていた不思議」という私の発言が、「働き方を具体的に考える際には実は大きなヒントを与えていただいた」とです。苦笑。
小西砂千夫著『地方財政学』でも、私との対談がきっかけだったと、書いてもらいました。そのような「触媒」になったとするなら、うれしいです。

「今」を闘う7人の外相

2022年4月5日   岡本全勝

4月3日の朝日新聞「日曜に想う」は、曽我豪・編集委員の「「今」を闘う7人の外相」でした。

・・・将軍たちはひとつ前の戦争を戦う、という。勝利を約束するはずの戦略は既に古びて、逆に時流を見誤る。日本の満州事変もドイツの2度の世界大戦も米国のベトナム戦争も、彼我の戦力差に基づく戦略への過信が国策を誤らせた。
ウクライナ侵攻において古い戦争を起こした「将軍」は、69歳のプーチン・ロシア大統領に他ならない。軍事力により版図拡大を図った国家戦略が、ネットにより国境を超えて連帯した国際社会の反抗を蹴散らせる時代ではなかった・・・
・・・他方、前ではない今の戦略を持ち得たのは例えば、G7(主要7カ国)の外相会合に集った政治家たちだったろう。
年齢を順に記せば、フランス74、日本61、米国59、英国46、カナダ43、ドイツ41、イタリア35。アラフォー世代が目立ち、女性も英加独で3人いる。2番目に年かさの林芳正外相は証言する。
「初対面でまずはSNSのフォロワー数を尋ね合う世代だ。ただ、ここで権威主義国家の横暴を許せば取り返しがつかない、民主主義国家の知恵を出すのは今だ、という共通のリアリズムがある」
確かに、バイデン米政権によるロシア軍の機密情報の積極開示にせよ、国際決済網からロシアの銀行を締め出す経済制裁にせよ、前例のない対抗措置はいずれも「今」を意識した知恵の産物だった・・・

・・・思えば、ほんの少し前まで民主主義はその「使い勝手の悪さ」ばかりが強調されたのではなかったか。
ともすれば、合意形成に時間と労力がかかり過ぎ、民意と隔絶すると政治不信が、民意に迎合すればポピュリズムが危ぶまれた。コロナ禍を巡っては権威主義国家の優位性が指摘され、中国はそれを大国への道のよりどころとする。
それもまた、ひとつ前の古い思い込みに出来るか。非軍事の連帯を紛争解決のモデルとする道は、民主主義の優位性を固め直す道でもある。平均年齢約51歳の7人の外相はその闘いの最中にいる・・・

夫の引きこもり

2022年4月3日   岡本全勝

3月24日の日経新聞夕刊に「夫のひきこもり 家族の対応は コロナ離職の影、早めに相談を」が載っていました。

・・・新型コロナウイルス下で厳しい雇用環境が続き、離職をきっかけとするひきこもり増加の懸念が高まっている。なかでも配偶者、特に夫のひきこもりについては第三者に支援を求める事例が少なく、実態を把握しきれていない。核家族化が進んだ今、悩みを抱える当事者と妻たちの社会的な孤立をどう防げばいいのか・・・
・・・2018年度に内閣府が実施した調査で、中高年(40~64歳)のひきこもりが全国に推計61万人いることが分かった。この調査にはもう一つ気になる数字がある、ひきこもり当事者の同居者には「母親」53%に次いで「配偶者」36%が多かったことだ・・・
詳しくは、原文をお読みください。