「今」を闘う7人の外相

4月3日の朝日新聞「日曜に想う」は、曽我豪・編集委員の「「今」を闘う7人の外相」でした。

・・・将軍たちはひとつ前の戦争を戦う、という。勝利を約束するはずの戦略は既に古びて、逆に時流を見誤る。日本の満州事変もドイツの2度の世界大戦も米国のベトナム戦争も、彼我の戦力差に基づく戦略への過信が国策を誤らせた。
ウクライナ侵攻において古い戦争を起こした「将軍」は、69歳のプーチン・ロシア大統領に他ならない。軍事力により版図拡大を図った国家戦略が、ネットにより国境を超えて連帯した国際社会の反抗を蹴散らせる時代ではなかった・・・
・・・他方、前ではない今の戦略を持ち得たのは例えば、G7(主要7カ国)の外相会合に集った政治家たちだったろう。
年齢を順に記せば、フランス74、日本61、米国59、英国46、カナダ43、ドイツ41、イタリア35。アラフォー世代が目立ち、女性も英加独で3人いる。2番目に年かさの林芳正外相は証言する。
「初対面でまずはSNSのフォロワー数を尋ね合う世代だ。ただ、ここで権威主義国家の横暴を許せば取り返しがつかない、民主主義国家の知恵を出すのは今だ、という共通のリアリズムがある」
確かに、バイデン米政権によるロシア軍の機密情報の積極開示にせよ、国際決済網からロシアの銀行を締め出す経済制裁にせよ、前例のない対抗措置はいずれも「今」を意識した知恵の産物だった・・・

・・・思えば、ほんの少し前まで民主主義はその「使い勝手の悪さ」ばかりが強調されたのではなかったか。
ともすれば、合意形成に時間と労力がかかり過ぎ、民意と隔絶すると政治不信が、民意に迎合すればポピュリズムが危ぶまれた。コロナ禍を巡っては権威主義国家の優位性が指摘され、中国はそれを大国への道のよりどころとする。
それもまた、ひとつ前の古い思い込みに出来るか。非軍事の連帯を紛争解決のモデルとする道は、民主主義の優位性を固め直す道でもある。平均年齢約51歳の7人の外相はその闘いの最中にいる・・・