カテゴリーアーカイブ:行政

大島理森先生の回顧談

2022年10月17日   岡本全勝

読売新聞連載「時代の証言者」、10月14日から、大島理森・前衆議院議長の「政の舞台回し」が始まりました。
・・・衆院議長を歴代最長の6年半務め、上皇陛下の退位を実現した特例法成立などを手がけた大島理森さん。国会で合意を形成するため、「 政まつりごと の舞台回し」で名脇役となった議会人の生き方を語る・・・

私は麻生総理大臣秘書官の時に、自民党国会対策委員長の先生にお世話になりました。総理の国際会議出席などと国会出席とを、どのように調整するかです。しょっちゅう、先生と二人で、日程調整をしたのです。
東日本大震災では、自民党復興加速化本部長として、ご指導をいただきました。官僚では解決できない課題を、自民党と公明党が主導する形、それを官邸に提言する形で実現してもらったのです。
それぞれに困難な仕事であり、大島先生でなくては乗り切れないことがたくさんありました。見ていて、「なるほど、このように解決するのか」と、とても勉強になりました。
天下国家のことを考える政治家です。原発事故対応についても、「原発を推進した自民党と、私としても責任がある」と、正面から取り組んでくださいました。原発被災地の町村長の多くも、大島先生を頼りにして、尊敬しています。

若輩の私を、やさしく(人前では厳しく)指導してくださいました。しばしば、「それは何だ」と、厳しい声で机を叩かれるのです。
はじめは怖かったですが、懐の中に飛び込むと、解決策を考えてくださいます。だんだんと、私の持ち前の厚かましさと、先生の包容力に甘えて、いくつも難題を解決してもらいました。

コロナ禍失業手当、日米の違い

2022年10月16日   岡本全勝

10月4日の日経新聞「一目均衡」、田口良成・米州総局次長「米6兆円詐欺と日本の「安定」」から。

・・・米国が未曽有の詐欺に見舞われている。新型コロナウイルス対応の失業保険の不正取得で、被害規模は9月時点の推計で456億ドル(約6.6兆円)に達する。死者名義の社会保障番号を悪用した例も20万件超発覚した。
制度が始まった2020年3月、米国は混乱していた。経済活動が止まり、同年2月に3.5%だった失業率は2カ月後の4月に14.7%に跳ね上がった。同時期にニューヨークに赴任した筆者は半年以上、生活基盤の前提となる社会保障番号を取得できなかった。
コロナ禍の失業手当の見積もりは計約9000億ドルと巨額だ。監査担当のラリー・ターナー氏は声明で「制度を悪用しようとする詐欺師を引き付け、歴史的なレベルの詐欺につながった」と指摘した。
経済の底割れを防いだ当時の対策そのものを批判する声は少ない。緊急時であれば当初から圧倒的な物量を投入し、問題が浮上すれば後から対応する。そんな米国流の功罪が浮き彫りになる。すでに1000人以上が刑事告発され、米連邦捜査局(FBI)などは摘発を強めている。
仮に日本で同様の事態が起きたら、国会で連日騒ぎになるだろう。ある経済官庁の幹部に聞くと「そうならないよう、制度設計に万全を尽くす」と即答した。大規模な不正を抑止するためなら、初動が遅くなってもやむを得ないというのが日本流だろう・・・

もっとも、日本でもコロナ対策の給付金で、詐欺まがいのことは行われているようです。10月13日の日経新聞「「GoTo」キャンセル補償で不適切給付2億円 検査院指摘
・・・観光需要喚起策「Go To トラベル」事業で国が旅行・宿泊事業者に支払ったキャンセル料の補償を巡り、会計検査院は12日、本来の条件を満たさない不適切な給付が2020~21年度に9969件、2億1739万円あったと公表した。検査院は給付金の返還や審査方法の見直しなどを観光庁に求めた・・・

10月17日の朝日新聞には「コロナ下…雇調金の不正受給は総額135億円に 102億円は回収」が載っていました(10月17日追記)。
・・・企業が従業員に支払った休業手当を国が補助する「雇用調整助成金」(雇調金)をめぐり、コロナ下での不正受給が9月末までに920件、総額135億円にのぼることが厚生労働省への取材で分かった。迅速に支給するため、手続きを簡素化したことなどが背景にある・・・

執筆者たちが語る『現代官僚制の解剖』

2022年10月13日   岡本全勝

先に紹介した『現代官僚制の解剖』について、執筆者が座談会で語っておられます。
鹿毛利枝子・北村亘・青木栄一・砂原庸介「『現代官僚制の解剖』刊行に寄せて――官僚について何がわかり何がわからなかったのか」(有斐閣「書斎の窓」9月号、4ページから28ページ)。

執筆者たちが何を意図したか、何に苦労したか、何ができなかったか、今後の課題は何かを語っておられます。また、鹿毛利枝子・東大教授が執筆者でない立場で、意見を述べておられます。
調査に協力した立場として、不十分だった点については忸怩たる思いがあります。今後、内閣人事局が参画するなりして、改善して欲しいです。

25ページにわたる長文です。ご関心ある方は、お読みください。インターネットで読むことができるのは、便利です。

チャイルドペナルティー

2022年10月8日   岡本全勝

9月19日の日経新聞「出産・子育て不利にしない チャイルドペナルティーどう防ぐ」から。

チャイルドペナルティー問題は米プリンストン大学のヘンリック・クレベン教授らが19年に提起した。学歴等の性差が解消された先進国でも、なぜ格差が残っているのか。各国の統計データを分析し、出産するとあたかも罰せられるかのように収入が下落する状況が元凶だと突きとめた。

日本の状況は財務省財務総合政策研究所の古村典洋さんが厚生労働省「21世紀成年者縦断調査」を基に試算した。出産1年前の収入を基準とし、出産1年後は67.8%も減る。出産退職して収入がゼロになる人も含むので減少幅は大きめに出る。
ただ日本は他国に比べ落ち込みが大きく、その後の回復も緩やかだ。「日本では長時間労働ができないと評価されにくい。子育てに時間を割かざるを得ない女性は昇進・昇給で不利になる」と古村さんは指摘する。

ポピュリズムは進化する

2022年10月7日   岡本全勝

9月24日の日経新聞、小竹洋之コメンテーターの「ポピュリズムは進化する 政権奪取へ異端の印象薄めに」から。

米ギャラップによると、世界の人々が訴える怒りや悲しみなどの強さを示す指数(0~100)は、2021年に過去最高の33を記録した。グローバル化やデジタル化の痛みを感じる庶民が、新型コロナウイルス禍やインフレにも苦しみ、扇動的な政党になびきやすくなっているのは事実だ。
ならば左派ではなく右派のポピュリズムが、欧米で目立つのはなぜか。水島氏は「コロナ禍とウクライナ戦争は、人々の命や安全、暮らしを守る国民国家の重要性を再認識させた。その流れにのった現象だろう」と話す。
同志社大の吉田徹教授にも尋ねた。「右派は現状の維持、左派は未来に向けた変革に軸足を置く。将来不安がはびこる先進国では『何かを得る』という左派の主張より『何も失わない。喪失したものを取り戻す』という右派の主張が訴求力を持つのかもしれない」

見逃せないのはポピュリズムの進化だ。「スウェーデン第一」を標榜するオーケソン氏は、治安の強化や移民の制限を唱える一方で、ネオナチの流れをくむSDの主張やイメージを和らげる努力を重ねてきた。スウェーデンの欧州連合(EU)離脱をもはや求めず、北大西洋条約機構(NATO)への加盟にも理解を示す。
FDI(イタリアの同胞)のメローニ氏も戦略は同じである。移民制限の立場や伝統的な家族観を維持しつつ、ファシズムに近いという印象を薄めることに腐心し、EUとの協調やロシアへの厳しい制裁を貫いたドラギ首相の路線踏襲も掲げる。
EUの世論調査によると、EUを信頼する域内の人々は22年夏に49%を占め、リーマン・ショック前の08年春に次ぐ高水準にある。様々な危機を経て風向きを変えた世論に合わせ、ポピュリストも政権入りをにらんで現実的な対応を探り始めたのではないか。