カテゴリーアーカイブ:経済

食品加工の残り物を利用する

2025年9月5日   岡本全勝

9月1日の朝日新聞夕刊「凄腕ものがたり」は、加納千裕さんの「かくれフードロス削減をめざす」でした。

・・・賞味期限切れや食べ残しなど、まだ食べられるのに捨てられてしまう「食品ロス」。国内では2023年度の推計値が464万トンで、最小値を更新した。
一方で食品加工の段階で出る野菜の切れ端や飲料の搾りかすといった食品残さや、産地で出る規格外作物はこの数字には含まれておらず、年間約2千万トンが廃棄されているとされる。「まだ食べられるのに、もったいない」。これらを「かくれフードロス」と名付け、削減へと奔走している。
独自開発の機械「過熱蒸煎(じょうせん)機」に野菜の切れ端などを入れ、300~500度の過熱水蒸気で乾燥・殺菌し、パウダー化。新しい食品原料に再生する。乾燥にかかる時間は、フリーズドライや熱風といった方法では1日ほどかかることもあるが、過熱蒸煎機を使えば5~10秒と短く、エネルギーコストが抑えられる。食材の風味の劣化や栄養価の減少も抑えられるという。

起業のきっかけは父だった。大手コンビニエンスストアで役員を務めた後、過熱水蒸気を用いて野菜や果物のピューレを製造・販売する会社などを立ち上げた。事業は約20年続けたものの、軌道に乗らずに父は引退することに。自らも手伝っていたことから、「父が長年やってきたことをなくしてしまうのはもったいない。技術を生かして、おいしく健康にいいものを作りたい」と考えた。ピューレは流通時に冷凍させる必要があり、使い勝手の面で課題があったことから、常温で1年間保存できるパウダー化にたどり着いた。今の会社を20年に設立。過熱蒸煎機の開発に着手した。

販路を検討する中で、食品加工工場などに困りごとを聞いて回ると、かくれフードロスの存在が浮かび上がった。カット野菜の工場では、キャベツの外葉や芯が1日に1トン廃棄されていた。キムチ工場では白菜の芯が1日に5トン、リンゴジュース工場では搾りかすが1日に20トン出ていた。
「廃棄コストを削減したいという企業のニーズに応えられるのではないか」
シイタケやオリーブの葉、米ぬか、だしを抽出した後の煮干しやかつおぶし、コーヒーかす……。多様な食品についてパウダー化に取り組み始めた。
昨年2月には、牛丼チェーンの吉野家ホールディングスが過熱蒸煎機を本格導入した。タマネギをスライスする野菜加工工場では、芯や表面の硬い部分など毎日最大700キロの切れ端が出る。年間最大250トンを数百万円かけて廃棄していた。そこで、吉野家に過熱蒸煎機をレンタルしてもらい、できあがったパウダー「タマネギぐるりこ」を買い取る。それをほかの食品メーカーなどに販売し、新たな商品を開発するビジネスモデルを生み出した。パウダーはパンやソーセージ、菓子などに活用されている・・・

分業・比較優位論の限界2

2025年8月25日   岡本全勝

分業・比較優位論の限界」の続きです。「比較優位論のこの欠点と対策を論じた議論はないのでしょうか。ご存じの方のお教えを乞います。」と書いたら、何人もの方が教えてくれました。ありがとうございます。経済学での議論、経済学者の書いたものなどです。難しいこともたくさん教えてもらったのですが、私なりに理解すると、次のようになります。

自由貿易が進むと、国際競争に負ける産業や地域が出る。しかし、新しい産業がすぐに育つわけでもなく、労働者が転職できるわけではない。そこで、産業が空洞化する地域や、なかなか産業が栄えない国が生じる。それは、どこの国も同じ。
自由主義経済の考えの下、それを市場に任せておくと、改善はなされない。政府の出番が必要。しかし日本も欧米も、空洞化対策を十分打つことができなかった。それは、政府の出番を認識していなかったからでしょう。

1990年代以降は、ときあたかも、政府の市場への関与を最小限にすべきという新自由主義的改革の考えが主流だったのです。私もそう考えていました。市場に任せた、各企業に任せた結果は、海外への工場移転、国内より海外への投資を優先、海外からの製品や部品の輸入拡大、労働者の解雇と給与削減というリストラ(コストカット)などでした。
日本の産業界と経産省の失敗は、国際的には産業の先端分野での競争に負け、国内では空洞化対策を実施できなかったことにあるのでしょう。

働く場の確保と経済安全保障の観点から、市場に任せることなく、政府として責任を持たなければならない範囲があったのです。新自由主義的改革は、適応すべき分野と、例外とするべき分野があるのでしょう。

宅急便の進化

2025年8月24日   岡本全勝

すこし古本を処分」の続きにもなります。
知人に送る分は箱に詰めて、近くのコンビニまで持っていこうと考えました。宅配便を受け付けているので。送り状を数枚もらってきました。しかし、箱に詰めているうちに、とてもじゃないけど、こんな重たいものを数箱も持って行けないと気がつきました。台車でもあれば良いのですが。

家まで取りに来てくれることを思い出しました。インターネットで調べたら、かつて利用した記録が残っていました。忘れていました。
宛先と箱の数、品名などを入力すると、翌日指定した時間帯に引き取りに来てくれました。送り状を、手で書かなくてもよいのです。これは便利です。
クレジットカード(タッチ式でしたが)で支払うと、引き受け証も領収書も、集配者の腰につけた機械が打ち出してくれました。
そして、本が詰まった重い箱をさっさと持ち上げて、運んで行ってくれました。ありがたいです。

公務員が海外流出する国

2025年8月22日   岡本全勝

8月3日の日経新聞に「ブータン、公務員が海外流出 学校・病院・企業の働き手不足が深刻に」が載っていました(ウエッブ版では表題が異なります)。
・・・ツェリン・ヤンキさんが現在のブータン産業・商業・雇用省にプログラム担当職員として入省した2022年、同省には新たな業務が次々と積み上がっていった。
その前年に始まった政府全体のリストラ計画で、多くの幹部職員が退職した。その後、オーストラリアが新型コロナウイルス禍後に国境を再開したのに伴い、単純労働でも自国より高い給与が期待できるとして、さらに多くの職員が退職した。ヤンキさんの上司も、そのまた上司も町を去っていった・・・

ブータンでは2022年~24年に、2万人以上がよりよい教育や仕事を求めて海外に出て行ったそうです。その半数近くが公務員です。その結果、病院の待ち時間は長くなり、学校の生徒を指導するのは経験不足の教員です。企業の3分の1が人手不足に陥っています。
ある学校では1年間に、教師73人のうち28人がオーストラリアに移住し、全国の教師の3分の1が2021年から24年の間に移住しています。国立病院では専門医の定員167人に対して欠員が30.5%、看護師の定員871人に対して欠員が24.1%だそうです。

分業・比較優位論の限界

2025年8月16日   岡本全勝

経済対策と産業政策の違い2」の続きにもなります。

アダム・スミスは、工場内の分業による労働生産性の上昇を論じました。デヴィッド・リカードは、比較優位論を提唱しました。自由貿易において各国が最も優位な分野に集中することで、互いにより高品質の財と高い利益を享受できるようになるのです。
これらの理論は間違ってはいないのですが、重大な問題を忘れていました。
一つは、優位な分野を持たない地域や国、国民はどうなるのでしょうか。
二つ目は、互いの国が優位な分野に特化するとしても、劣位な産業に従事していた職人たちはどのようにして、転職するのでしょうか。

比較優位論は、勝者の論理であり、負け組のことを考えていません。また、勝ち組になるとしても、転換にかかる時間とその過程を考えていません。
欧米での寂れた旧工業地帯や炭鉱地帯が、その例です。アフリカ各国は、未だに経済成長しません。日本でも過疎地域、かつて稲作に頼っていた地域は、この論理では豊かにならないのです。
比較優位論のこの欠点と対策を論じた議論はないのでしょうか。ご存じの方のお教えを乞います。