カテゴリーアーカイブ:政治の役割

JR30年、鉄道と道路と

2017年4月4日   岡本全勝

この4月で、国鉄が分割民営化されて30年になります。各紙が特集を組んでいます。30年前のことですから、若い人たちは、かつての事情を知らないでしょうね。
当時の日本国有鉄道は、大幅な赤字を抱え、またサービスも悪く、国営・公務員の悪い面の代表でした。大きな政治課題だったのです。労組は、この改革に抵抗しました。
私は、ここまで経営が良くなり、サービスが良くなるとは思いませんでした。提供しているサービスは鉄道ですから、同じです。かつての経営者と従業員、特に労働組合は、何をしていたのでしょうね。ストをうち、働かず、接客態度は悪かった。その主な原因であった労働組合には、自己評価と反省をしてもらいたいです。

北海道、四国、九州の3島会社は、予想されたとおり、苦しんでいます。沿線人口が減り、他方で道路がどんどん整備されて、鉄道利用者が減っているのです。
朝日新聞4月2日「JR30年の変容」には、2017年度の予算で、道路は1.7兆円に対し、鉄道は0.1兆円であることが書かれていました。
しかも、鉄道予算の7割は新幹線の建設費です。道路整備と補修には税金を投入し、鉄道はすべて料金ででは、対等な勝負になりません。また、道路を造っただけでは、人は移動できません。バスが走らないと、動けないのです。車を運転しない生徒や高齢者には、車社会は冷たい社会です。

もっとも、利用者が少ない路線まで、維持するのは無理があります。津波被害を受けた三陸沿岸では、鉄道での復旧のほかに、バス(BRT)による復旧も行いました。
私は当初「つながってこそ鉄道だ」と鉄路復旧を主張していたのですが、現地の人に聞いて、考えを変えました、生徒と高齢者が主たる利用者なら、学校と病院と買い物なので、市町村内か近隣の町までです。
それなら、本数の少ない鉄道より、バスを本数多く走らせた方が便利です。その際も、家計に余裕のない人たちですから、料金を低くすることが必要です。
「移動の自由」は、生活する上で重要です。道路を造っただけでは、車を持っていない人たちは動けないのです。自治体や国土交通省には、考えて欲しいですね。

憲法改正論議

2017年3月31日   岡本全勝

3月23日の朝日新聞オピニオン欄「改憲議論とアメリカ」、阿川尚之さんの発言(3月28日の記事)の続きです。
・・・私も改憲論者ですが、大幅な改正、新憲法の制定は、約70年間、最高法規として機能してきた憲法の正統性を傷つける可能性があります。米国の憲法史から学べることの一つは、条文ごとに修正の是非を議論し、実質的改憲についても議論を重ね、大方の国民が納得する憲法の改変を一つ一つ慎重に実現しながら、憲法全体の正統性を保ってきたことでしょう。
保守派が憲法の根本的見直しを主張する一方で、リベラルの側が一切改正すべきでないと主張しているのは皮肉です。9条をめぐる議論をはじめ、私にはいずれも「鎖国状態」、国内だけで通じる「一国立憲主義」に思えます。
米国憲法制定の際には、独立した13の旧植民地の安全保障が強く意識されていました。日本でも、現行憲法はもちろん明治憲法、さらに古くは律令制度を採用したのも、当時の国際環境に対応し国家の安全を保障する必要があったからだと思います。憲法を考えるには、安全保障や国際関係からの視点が欠かせません・・・

アメリカ憲法の仕組み

2017年3月28日   岡本全勝

3月23日の朝日新聞オピニオン欄は「改憲議論とアメリカ」でした。この記事は、「「いまの憲法は、米国を中心とする連合国が押しつけたものだ」という見方が根強くある。なぜ「押しつけ」にこだわるのか。とうの米国ではいま、人権や多様性を重んじる憲法的価値に揺らぎもみえる。米国との関係が、私たちの憲法論議にもたらすものは――」という趣旨の企画です。
それはそれで興味深いのですが、ここでは、阿川尚之さんの発言から、アメリカ憲法の仕組みを紹介します。

・・・米国の憲法と選挙制度は、最も優れた人物を大統領に選ぶことを、保証してはいません。この国の政治システムは、凡庸な大統領も多数生み出してきました。ただし万が一、国民の自由を正当な理由なしに制限する強権的な大統領が誕生すれば、さまざまなしくみで害を最小限にくい止める。それが憲法制定者の知恵です。
米国史上最大の危機は、1860年代の南北戦争でした。その直前、リンカーン大統領は最初の就任演説で、自分に投票しなかった人々に向け、大統領の権限は限られており、4年ごとに変えられるのが憲法の仕組みだと強調しました。「どんなに愚かな、あるいは邪悪な政権でも、国民が勇気を失わず、警戒を怠らない限り、わずか4年ではこの国の統治システムに(取り返しのつかない)深刻な損害を与えることはない」、安心してほしいと伝えたのです。・・・

原文をお読みください。

ミャンマーの民主化

2017年2月21日   岡本全勝

2月17日の朝日新聞オピニオン欄はテインセイン・ミャンマー前大統領のインタビュー「軍政に幕を引く」でした。詳しくは原文を読んでいただくとして。
軍事政権を平和裏に民政に移管しました。2003年に、軍事政権が民主化への行程表を発表し、憲法策定のための国民会議の再開、憲法の基本方針の審議、憲法草案の起草、国民投票、総選挙実施、国会召集、大統領選出の道筋を示しました。民主化には紆余曲折があり、2016年に、アウンサンスーチー氏率いる野党に政権を渡しました。
インタビューでは、民主化の前提として経済発展を進めたことが述べられています。
・・・ただ、すぐに民主主義体制になる、というわけにはいきません。経済面で課題がありました。車道もない、橋もない、教育施設もない。インフラが貧弱ななかでは、民主化はすぐには達成できません。まず経済を発展させ、インフラを整え、教育を立て直すことが必要だったのです。
「経済の基礎がなければ民主化が進まないと考えていた、と?」
・・・そうです。だから、まずはインフラを整え、経済を発展させる必要があると思っていました。
経済を立て直し、教育も推進するため、2003年にロードマップ(行程表)7点を策定しました。それをステップ・バイ・ステップで進行させていったのです・・・
・・・繰り返しになりますが、民主化の移行のためには基本的に必要な『土台』があります。経済発展です。経済がしっかりしないまま民主化に突き進み、失敗した例は海外にたくさんあるではないですか。橋や道路、大学を整えるのには時間が必要だったのです・・・

国づくりを進める際の、苦労がでています。指摘されているように、民主化だけを進めても、国民の不満が出て政情が不安定になった例は、最近のイスラム圏にも見られます。経済、インフラ、教育などを整える必要があります。いろいろな問題があることを認めつつも、暴動や流血なしに民主化した例、軍政幹部が指導して民主化した例として、高く評価されるべきだと思います。

「トランプ大統領」が、民主主義と資本主義につきつけるもの

2017年1月25日   岡本全勝

1月22日の日経新聞、マイケル・サンデル・ハーバード大学教授の「これからの民主主義の話をしよう。市民の無力感 解消の道探れ」から。
・・・欧州では多くのポピュリズム政党が台頭しつつある。だからこそ、今こそ、民主主義と資本主義について根本から問い直す時期だ。民主主義についていえば、政府を代表する伝統的な組織や機関はお金や企業の利害によって左右され、普通の市民の声が反映されていない、と人々は感じている。それこそ、民主主義に対する不満の源だ。
資本主義についていえば、過去数十年間にわたるグローバリゼーションと技術革新の結果、生み出されたものは格差だけだったという点があげられる。この問題と向き合わなければならない。政治の世界において、我々はもっと普通の市民に意味ある発言をしてもらう方法を見つけなければならない。経済の世界では、グローバリゼーションと技術革新がもたらす利益を広く共有できる術を見いだす必要がある・・・

「そういう観点で見れば、トランプ政権の誕生はある種の社会革命ともいえますね」という問に。
・・・その通りだ。ブレグジット(英国による欧州連合離脱)も全く同じ構造だ。部分的には経済上の問題だが、実は社会的、そして文化的な反発が背景にはある。その反発とはつまり、エリート階層が普通の人たちを見下している、ということだ・・
・・・格差の問題は昨年、突然、表面化したわけではない。過去20年以上、我々はその問題を提起してきたが、本来、労働者に寄り添うはずの民主党がプロフェッショナルな階層や、ウォール街に近づいてしまった。この結果、民主党は普通の労働者から遠ざかってしまった。
米国ではこれまで、格差について人々はあまり心配していなかった。我々はいずれ上向くという信念があったからだ。貧しい出であっても、のし上がることはできる。それこそ、アメリカンドリームなのだ。
しかし、今、そうしたケースが急速に減っている。今は米国において、貧しい生まれなら、その7割は中間層にすら上がることができない。上位20%の層に入る率はわずかに4%だ。上位の層に上がる率は今や、米国よりも欧州の方が上だ。これはアメリカンドリームの危機といえる。もし、子供たちに「格差のことは心配しなくても、君たちはのし上がることができる」と言えなくなれば、もっと平等や団結といったことに注意を払わなければならなくなる・・・

原文をお読みください。