カテゴリーアーカイブ:政治の役割

政策転換の評価

2022年12月16日   岡本全勝

12月7日の日経新聞経済教室「原発政策の行方」、橘川武郎・国際大学副学長の「現政権、「政策転換」には値せず」から。

8月のGX実行会議での岸田文雄首相と西村康稔経済産業相の原子力に関する発言を巡り、一部メディアが「原子力政策を転換した」と大きく報じた。。岸田政権が原子力政策の遅滞解消に向け年末までに政治決断が求められる項目として挙げたのは、(1)次世代革新炉の開発・建設(2)運転期間延長を含む既設原子力発電所の最大限活用――の2点だ。
特に注目されたのは(1)だ。「原発のリプレース(建て替え)・新増設はしない」という従来方針を転換し、次世代革新炉の建設に踏み込んだと評価された。

本当にそうなのか。結論から言えば、政策転換と判断するのは時期尚早だと考える。そう考える根拠としては、第1に誰(どの事業者)が、どこ(どの立地)で、何(どの炉型の革新炉)を建設するのかについて全く言及がない、第2に肝心の電気事業者の反応が冷ややかで、国内での次世代革新炉の建設について具体的な動きを示していない。
これまで政府がエネルギー政策を本気で転換した時には、それに先行して政策転換につながる電気事業者の具体的な動きがあった。
例えば2020年10月に菅義偉首相(当時)が50年までにカーボンニュートラル(温暖化ガス排出実質ゼロ)をめざすと宣言した時は・・・
だが今回は様相が違う。次世代革新炉の建設といっても、それと共鳴する電気事業者の具体的な動きはない。三菱重工業が発表した次世代加圧水型軽水炉「SRZ-1200」の開発プロジェクトに関西電力など電力4社が協力することになったが、これはあくまで「開発」をめざすものであり「建設」までは視野に入れていない。実際に建設となれば中心的な当事者になるはずの関電の森望社長は最近のインタビューでも、既設の7基体制を将来にわたり維持すると述べるにとどまっている。
「誰が、どこで、何を」という具体的な言及がないのは、こうした事情を反映したものとみられる。

社会学的想像力と政治的想像力2

2022年12月13日   岡本全勝

社会学的想像力と政治的想像力」の続きです。
社会学が、人が暮らしていく際の困難を社会の側から摘発します。その困難を個人の責めに帰すのではなく、社会の側に問題があることを突き詰めます。すると、その解決はその個人や家族ではなく、社会の側を変える必要があります。ここに政治の出番があります。

すると、社会学では「社会学的想像力」が必要であるように、政治においては「政治的想像力」が必要でしょう。
それは、社会学が発見した暮らしの困難を、解決することです。
それらの問題を政治や行政の課題として取り上げること、そして誰がどのように解決するか道筋をつけることです。必要な場合は、人と金を投入しなければなりません。法律や補助金をつくっただけでは解決しない問題が多いです。すべてを取り上げることはできず、優先順位をつける必要もあります。
それらをどのように動かすか。それを政治的想像力と呼びましょう。政治的構想力と政治力とも言えます。

社会学的想像力と政治的想像力

2022年12月12日   岡本全勝

「社会学的想像力」は、アメリカの社会学者C・ライト・ミルズが、同名の書で唱えた概念です。
社会学を学ぶ意味とは何か、それは日々遭遇する困難を根本的に解決するにはどうすればよいかを考えることで、そのためには日常を社会と関連づけて捉える知性が必要である。その知性が社会学的想像力であり、社会学の最大の効用であると主張します。個人の身近な生活の問題を広い文脈(社会)と結びつけて考える能力です。

「社会学、社会科学とはなんぞや」を考えていて、「実用社会学への期待」「実用の学と説明の学」に行き着きました。長谷川公一先生ありがとうございました。
それに触発されて、社会学的想像力を思い出しました。
ミルズは、この大前提を元に、さまざまな社会学、特に抽象的な体系論を批判します。私の問題関心「実用の学と説明の学」に、ぴったりの説明です。

社会の問題、暮らしていく際の困難を考える、その際に個人の暮らしから考えるという「社会学的想像力」は、わかりやすいです。人が暮らしていく際の困難を社会から考えることが社会学の役割、その際の手法が社会学的想像力とすると、その問題を解決するのが政治の役割です。続く

国会での与野党協議

2022年12月8日   岡本全勝

12月4日の朝日新聞「日曜に想う」、曽我豪・編集委員の「合意形成、国会に残る良き前例」から。

旧統一教会問題を受けた被害者救済新法の与野党協議がまさに正念場だ。政府案の実効性を疑う声が弁護士ら現場から出たが、岸田文雄首相が旗を振って修正へと歩み寄る。防衛費など今後の政策論議を思えば、合意形成の成否は重い。
国会は良き前例を持つ。自民党政権とて1992年には国連平和維持活動(PKO)協力法を野党・公明、民社両党との修正合意により成立させ、98年にも自民・塩崎恭久、民主・枝野幸男両氏ら「政策新人類」が与野党の垣根を越えて金融再生法をまとめた。逆に民主党政権下の2011年には塩崎氏ら野党の提起が超党派の合意を生んで国会に原発事故調査委員会が設置された。
いずれも政権党が参院選で大敗して衆参のねじれを抱え、野党の協力を不可欠とする事情はあった。だが冷戦の終結に伴う国際貢献から金融不安の解消、東日本大震災が残した原発事故の原因究明まで、危機の時代に即応する処方箋作りが国会に問われた共通点は見逃せない。

どうやって国会は合意形成への道を切り開いたのか。事故調の設置当時、民主党で衆院議院運営委員会の与党側筆頭理事だった松野頼久氏(62)に聞いた。
「私はずっと議会運営を担当してきておかしいと思っていました。本来は国民の代表である国会が法律を作るのが筋なのに、日本では行政が執行ばかりか法律作りまで担う。閣法が議員立法より優先され、与党は行政に気兼ねし古い慣習や前例にすがる。政権交代を果たしたからこそ、国会を本来の姿に戻したかった」
「議運の野党側筆頭理事だった自民党の菅義偉氏から事故調の提案を受けた際に『やりましょう。この問題では与党も野党もない』と即答したのはそのためです。原発の安全神話が崩れても、それを推進してきた経済産業省などにフェアな原因究明はできまい。行政をチェックする国会の本領発揮と思い、臨時国会延長の機会をとらえ一気にまとめました」

補正予算額30兆円はトヨタ自動車の売上額と同じ

2022年11月18日   岡本全勝

11月9日の朝日新聞夕刊に、千葉卓朗記者の「補正予算「30兆円超」 政治家の金銭感覚の先に」が載っていました。40歳を過ぎて経済部から政治部に配属された記者の感覚とのことです。「困る政治主導」の続きになります。

・・・だから、消費者物価の上昇率が3%の今の日本で「時給1兆円」というセリフを自民党幹部が口にしたと聞いた時、面食らった。10月下旬、物価高などに対応する政府の総合経済対策の予算規模をめぐり、数時間で4兆円上積みさせた成果を自賛した発言だ・・・
・・・ 30兆円といえば、私が経済部で担当したトヨタ自動車の売上高31兆円(22年3月期)と同じ規模。徹底したコスト削減と地域密着の販売努力を続け、世界中で車を1千万台近く売ってやっと得られる金額だ。従来、経済対策の相場は数兆円とされる中で30兆円を平然と求める感覚は、タガが外れていないだろうか・・・