カテゴリーアーカイブ:著作と講演

コメントライナー寄稿第19回

2024年9月10日   岡本全勝

時事通信社「コメントライナー」への寄稿、第19回「行政改革と縮み思考から卒業を」が9月10日に配信され、iJAMPにも転載されました。

歴代内閣は、行政改革に取り組んできました。中曽根行革では国鉄の分割民営化、橋本行革では中央省庁改革、小泉行革では郵政民営化や規制改革など。現内閣も「政改革推進本部」を設置しています。しかし、現在の行政改革は、何を目的として行われるのでしょうか。国民も「小さな政府」や「身を切る改革」といった言葉を支持します。その中身はなんでしょうか。

1990年代には、経済停滞からの脱却のために、企業は事業の縮小や従業員数と給与の削減を進めました。ところが、その目的を達したのに、引き続き縮小を続けたのです。それでは消費も拡大せず、経済も社会も発展しません。一方、政府も予算と職員の削減を続け、社会に生まれてきていた新しい課題に取り組むことができませんでした。

やがて「縮小の思考」は社会の通念となり、企業や役所が新事業へ挑戦することや、新しい政策を企画することをためらわせました。30年間も続くと、現在の企業や役所の幹部は、入社・入庁以来、挑戦や成長を経験したことがないのです。それが、経済停滞と社会の不安を長引かせたのです。
この間に、一人あたり国民所得は経済開発協力機構加盟38カ国中21位に落ち、アメリカの3分の1、ドイツの2分の1になってしまいました。

ようやく物価、給与、株価が上昇し始めました。成長のためには、政府も行政改革を卒業し、国民に向かって縮み思考から脱却することを宣言すべきです。

長崎県庁幹部研修

2024年9月6日   岡本全勝

昨日9月5日は、長崎県庁で、部長次長研修の講師を務めました。会場に約40人、出先機関のオンライン参加を含めて約90人が話を聞いてくれました。

素晴らしいと評価された昭和の職場と働き方が、この30年でなぜ評価を落としたのか。それは、社会が大きく変わったのに、私たちの仕事の仕方が変わらなかったからです。今の日本の職場は、その転換期です。
今回の聴衆は、部長と次長という幹部です。そこで幹部と課長以下の管理職との役割の違いを強調してきました。目標による評価が導入され、長崎県庁でも定着してるとのことです。しかしそれが機能するのは、課長以下の場合です。
部長の目標は、誰が設定するのか。知事の意向も確認しつつ、部長自らが課題を考え、対策を考えなければなりません。所管業務の運営と管理を考えているだけではダメなのです。それらは、課長たちと目標確認をすれば進みます。そこから漏れ落ちている問題を考えること、10年先の長崎を考えることが、幹部の役割です。

皆さん熱心に聞いてくださって、反応が良いので、ついつい話が脱線しました。ありがとうございました。帰りの飛行機は、適度の疲れと達成感で、心地よかったです。

久しぶりの長崎です。長崎新幹線に乗りました。乗り心地は良いですね。早いですが、トンネルが多くて、景色は楽しむことができません。
県庁舎が最近新築され、とてもきれいで、開放的でした。お金をかけると容れ物(建物)が最新のものとなるように、中身の職員の仕事も良くなるとよいのですが。お金では解決しない問題です。

連載「公共を創る」第197回

2024年9月5日   岡本全勝

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第197回「政府の役割の再定義ー成熟社会の到来と変化する国のかたち」が、発行されました。

前回から、若者が公務員を目指さないこと、採用されても早期に退職する者が増えてきていること。その背景に、転職自由社会が到来し、社員や職員の人事政策の前提としていた日本の労働慣行 が崩れつつあることを説明しています。

早く必要な技能を身に付けて、自分の考えを実現していきたい人。会社を否定するわけではないが、自分の職業人生のための過程(ワンステップ)にすぎないと早期の転職を考える人が増えています。これは、年功序列による職員の選抜と技能や経験の蓄積という、従来の企業側の戦略とは相いれない思考です。

このような変化は、職場だけでなく、私たちの暮らしのかたちを変えました。暮らしを形作る主要な枠組み、修学、働き方、家族の形が、昭和後期の経済成長期とともに、平成時代にも大きく変わったのです。それぞれ自由になり、選択肢も広がったのですが、その結果、従来の日本人に安心を提供していた血縁、地縁、社縁が薄くなりました。

ベトナム、ハイフォン市幹部研修

2024年9月3日   岡本全勝

今日9月3日は、政策研究大学院で、ベトナムのハイフォン市幹部研修で講師を務めました。いつものように、大災害への対応と復旧での指導力についてです。

この内容は、何度も繰り返しています。そこで、外国の方に伝わりにくい点も見えてきました。で、話の重点を変えてきました。
投影資料も、一部を変えました。なぜ日本で大きな地震や津波が起きるかです。日本列島が複数のプレートの上に乗っていて、その沈み込みが大きな地震を起こすことの説明です。外国の方は知らないのです。
適当な図がないので、鎌田浩毅・京大名誉教授に、わかりやすい簡単な図を作ってもらいました。ありがとうございます。

今日もよく理解してもらえたようで、「わかりやすい」と言ってもらいました。質問も多く、2時間半の講義のうち1時間を質疑に当てました。

連載「公共を創る」第196回

2024年8月29日   岡本全勝

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第196回「政府の役割の再定義ー転換を迫られる公務員の人事政策」が、発行されました。

まず、ここまで述べてきた官僚育成論を整理しました。管理職と幹部官僚とは役割が異なること。企業幹部と幹部官僚に求められる能力の違い。幹部官僚はそのための育成が必要なことなどです。

ところが、実態は急速に変化しています。優秀な若者が必ずしも官僚を目指さないこと、採用されても早期に退職する者が増えてきたこと、さらに日本でも転職自由社会が到来し、日本の労働慣行であった新卒一括採用、人事課による配属決定、年功序列、終身雇用が崩れつつあることです。
それは民間企業だけでなく、公務員の世界にも押し寄せてきています。これまでの人事政策は、革命的転換を迫られています

これまでは、公務員制度改革が議論されてきたのですが、制度が前提としていた実態が大きく変化し、いかに運用していくかが課題となってきたのです。
それを引き起こした「黒船」は、「転職が不利にならなくなった」ことです