カテゴリーアーカイブ:社会の見方

不正経理

2015年8月10日   岡本全勝

『帳簿の世界史』にも、第13章「大恐慌とリーマン・ショックはなぜ防げなかったのか」として、不正経理を防げなかったこと、そしてそれが会社をつぶしただけでなく、世界経済を危機におとしいれたことが、書いてあります。『バランスシートで読みとく世界経済史』の第9章は、「会計専門職の台頭とスキャンダル」です。どうも、会計には、不正がつきもののようです。
エネルギー会社のエンロンは、帳簿の上では超優良企業でしたが、不正経理がばれて倒産します。それだけでなく、経営者は倒産の前に自社株を売り抜いて、大もうけをします。ご関心ある方は、お読みください。犯罪者と警察の追いかけっこと同じと思えばよいのでしょうが、企業会計、会計監査とは何なのか、疑問になります。まじめにやっておられる関係者の方には、申し訳ないのですが。どこに、問題があるのでしょうか。
さて、エンロンの事例では、電力価格を高値で維持するために、電力会社に発電を停止するように要請したり(それで住民はえらい迷惑を被ります)、森林火災が起きると、高圧線の鉄塔が焼け落ちるのを見ながら、職員が「燃えろ」とはやしたてたそうです。企業利益を優先し、モラルに欠ける行動に出るのです。これは、企業会計とは別の次元の問題です。

複式簿記はどこまで企業を表すか

2015年8月9日   岡本全勝

先に、ジェイコブ・ソール著『帳簿の世界史』(2015年、文藝春秋)を読みました(2015年6月21日)。思い出して、積ん読の山から、ジェーン・グリーソン・ホワイト著『バランスシートで読みとく世界経済史―ヴェニスの商人はいかにして資本主義を発明したのか』(2014年、日経BP社)を発掘して、読みました。
これも、勉強になる本です。もっとも、表題は誤解を与えます。目次を見るとわかるように、複式簿記の発明と普及、それが経済の発展に不可欠だったことが書かれていますが、「世界経済史」までは書かれていません。原著は、「Double Entry - How the merchants of Venice shaped the modern world and how their invention could make or break the planet」という表題です。
ところで、本書でも書かれていますが、複式簿記が企業の財政状況をどこまで表しているのか。その発展系である国民経済計算GDPが、どこまで一国の経済を表しているのか。著者は、環境の価値や健康状態などが含まれていないことを指摘しています。金銭に評価できないものは、記入されないのです。
以下、会計学には素人の疑問です。
会社の場合、いちばんの価値である従業員は、どのように載っているのでしょうか。給与や退職金の引当金は計上されますが、従業員そのものの価値は計上されません(よね)。会社の経営が悪化し、従業員を削減する際には、減らすべき「負債」であり、よい商品を生みだす場合は「資産」でしょうか。
人数が少なくても、「有能な社員」「良質の労働力」と、人数が多くてもそうでない社員とは、金銭評価できないので、帳簿には載らないのでしょうね。従業員は、利益を上げる手段でしかないのでしょうか。もっとも、同じく利益を上げる手段である機械類は、資産として計上されます。また、その会社が持っている「評判」(ブランドとしての力)も、複式簿記では計上されないのでしょうね。 さらに、研究機関、大学、官庁は、企業会計だけでは、その価値は評価できないのでしょうね。
ところで、複式簿記って英語では、Double-entry bookkeeping system って言うんですね。

戦後70年、日本の転換点

2015年8月6日   岡本全勝

朝日新聞オピニオン欄が「戦後70年、日本の転換点は?」を特集しています。8月2日は、読者が選んだ転換点のアンケート結果が載っていました。1940年代や50年代という回答もありましたが、これは戦後改革と位置づけるとして、その後の半世紀近くをどこで区切るか。それはまた、戦後日本と現在の日本を、どのように評価するかという「価値判断」の反映となります。
20年近く前(1990年代後半、仮に1995年としましょう)に、宮沢内閣の大臣秘書官同窓会で議論になりました。総理秘書官のT先輩が、「それは60年安保だ」とおっしゃったので、私は「それは古すぎまっせ」と反論したことを覚えています。その時点で、戦後50年でした。1960年で区切ると、前半15年で後半35年になります。私は、「高度成長が終わったオイルショック(1973年)ではないですか」と申し上げました。これだと、前半が28年で、後半が22年でした。さて、その議論をしてから、さらに20年が経ちました。
2003年に書いた『新地方自治入門』でも、その考え方に立って、戦後日本社会と、日本政治、そして地方行政を評価しました。紹介文に、次のように書いています。
・・・私は、戦後の日本の地方自治体は、ナショナル・ミニマムと社会資本整備という課題を、実に良く達成したと考えています。日本の経済成長の成果の上に、行政機構や地方財政制度がうまく機能したからです・・・
・・・これまでの課題がほぼ達成された今、地方行政は次なる目標を探しあぐねています。また、現在の地域の課題に必ずしも的確に答えていないと思います。
地方行政そして日本の政治は、目標を転換するべき時がきています。それはまた、日本経済・日本社会・日本人の思考の転換でもあります・・・
経済成長の軌跡も、その観点から、区分しました。しかし、このような区分も、経済偏重になっているのかもしれません。繰り返しになりますが、どこで区切るかは、何を指標に区切るかが鍵であり、それは現在の日本社会をどのように位置づけるかによります。これまでの延長線上にあるのか、変えなければならないのか。変えるとしたら、何が課題か、です。
私のこれまでの考えでは、戦後日本の課題は経済成長であり、それを達成した1970年(大阪万博)、あるいはその延長でバブル崩壊の1991年までが前半です。そして、次なる目標を定めかねているのが、後半です。70年間を「戦後日本」と規定するのは、政治家や歴史家、そして私たちの怠慢でしょう。しかし、次なる目標を決めかねている、現在の日本社会を測る物差しを決めかねていることが、区切りを決められない原因です。

韓国での日流

2015年8月3日   岡本全勝

韓国との国交正常化以来、今年で50年になります。私が60歳ですから、現代史です。一時の韓流ブームで、国民レベルでは交流が広がり、相互信頼の時代が来ると期待したのですが、最近は政治的対立がマスコミで報道されます。ところが、韓国の国民の間では、政治対立は別にして、「日流」がさらに広まっているのだそうです。7月30日の朝日新聞が伝えています。「歴史さておき韓国日流」。ソウルの繁華街には、日本の飲食店がたくさん並んでいます。ラーメン、ハンバーガー、豚カツ、スパゲッティ、居酒屋。日本酒と日本製ビールの輸入量も急激に増えているとのこと。高校生が選ぶ第2外国語は、中国語を抑えて日本語が1位です。詳しくは、原文をお読みください。

現代のフランス、3

2015年7月24日   岡本全勝

ドイツとフランスは、両国首脳が相手国の国内政治に直接介入することがあります。
2012年2月に、メルケル首相が、フランスのテレビに出演して、サルコジ大統領の再選支持を呼びかけました。現職大統領でありながら、サルコジ氏が劣勢で、有力対立候補のオランド(現大統領)が、EU各国で合意された協定の見直しを主張していたからだそうです。
遡ると、1992年9月にフランスで、マーストリヒト条約を批准するための国民投票が実施される直前に、コール・ドイツ首相がフランスのテレビに出演しました。2002年末、シラク・フランス大統領とシュレーダー・ドイツ首相が一緒にテレビ出演して、イラク戦争反対の意志を確認しました。2009年5月には、サルコジ大統領がドイツを訪問し、欧州議会選挙でドイツのCDU(キリスト教民主同盟)の候補者リストを支持しました。p194。
ここまで交流、融合がすすでいるのかと、驚きます。これまでの常識なら、「内政干渉だ」と批判されることでしょう。日中韓に置き換えてみると、首相や大統領、国家主席が相手国の選挙の際に、出かけていって特定候補を応援するのですから。