カテゴリーアーカイブ:社会の見方

韓国での日流

2015年8月3日   岡本全勝

韓国との国交正常化以来、今年で50年になります。私が60歳ですから、現代史です。一時の韓流ブームで、国民レベルでは交流が広がり、相互信頼の時代が来ると期待したのですが、最近は政治的対立がマスコミで報道されます。ところが、韓国の国民の間では、政治対立は別にして、「日流」がさらに広まっているのだそうです。7月30日の朝日新聞が伝えています。「歴史さておき韓国日流」。ソウルの繁華街には、日本の飲食店がたくさん並んでいます。ラーメン、ハンバーガー、豚カツ、スパゲッティ、居酒屋。日本酒と日本製ビールの輸入量も急激に増えているとのこと。高校生が選ぶ第2外国語は、中国語を抑えて日本語が1位です。詳しくは、原文をお読みください。

現代のフランス、3

2015年7月24日   岡本全勝

ドイツとフランスは、両国首脳が相手国の国内政治に直接介入することがあります。
2012年2月に、メルケル首相が、フランスのテレビに出演して、サルコジ大統領の再選支持を呼びかけました。現職大統領でありながら、サルコジ氏が劣勢で、有力対立候補のオランド(現大統領)が、EU各国で合意された協定の見直しを主張していたからだそうです。
遡ると、1992年9月にフランスで、マーストリヒト条約を批准するための国民投票が実施される直前に、コール・ドイツ首相がフランスのテレビに出演しました。2002年末、シラク・フランス大統領とシュレーダー・ドイツ首相が一緒にテレビ出演して、イラク戦争反対の意志を確認しました。2009年5月には、サルコジ大統領がドイツを訪問し、欧州議会選挙でドイツのCDU(キリスト教民主同盟)の候補者リストを支持しました。p194。
ここまで交流、融合がすすでいるのかと、驚きます。これまでの常識なら、「内政干渉だ」と批判されることでしょう。日中韓に置き換えてみると、首相や大統領、国家主席が相手国の選挙の際に、出かけていって特定候補を応援するのですから。

現代のフランス、2

2015年7月23日   岡本全勝

渡邊啓貴著『現代フランス』の続きです。
経済成長によって、かつての保守対革新=資本主義対社会主義という、社会的・政治的対立構図が成り立たなくなりました。では、社会の亀裂と対立は、どのような構図になるのか。そしてそれは代表制民主主義において、どのように現れるのか。決して対立がなくなるのではなく、政党は新たな争点を立てて争います。一種、商品を売る会社の競争に似ています。
フランスにおいては、保守系も革新系も、様々な政党が合従連衡を繰り返し、盛衰を重ねます。地方選挙、国政選挙、そしてEU選挙と、そのたびごとにめまぐるしいほどに勝ち負けが変わります。すると、大統領が革新系で、国会及び首相が保守系というねじれ(コアビタシオン)、あるいはその逆も経験します。政権維持のために、しきりに内閣改造をします。大統領制のフランスと議院内閣制の日本という違いはありますが、日本だけがしきりに内閣を替えるのではないようです。
そして、しばしば街頭デモに、多くの大衆が参加します。そして内閣が掲げる政策を頓挫させます。市民による革命で政権を倒した経験は、国民にすり込まれているのでしょうか。このあたりは、フランス社会と日本社会の違いを感じさせます。
このように国民においても、政治家においても、政策を巡る競争は激しいのですが、昨日書いたように、国内の社会経済状況と国際的環境に規定され、保守と革新がそれぞれに独自性を発揮しようとしても、大きな流れは変わらないようです。その制約の中で、どれだけ独自性を発揮できるか、景気を上昇させることができるか、フランスの栄光を取り戻すことができるか、またよりよく統治できることを国民に訴えることができるか。そこに、政治家の力量が試されます。

現代のフランス

2015年7月22日   岡本全勝

渡邊啓貴著『現代フランス 栄光の時代の終焉、欧州への活路』(2015年、岩波現代全書)が、勉強になりました。日本を代表するフランス研究者による、ミッテラン大統領以来30年の、フランス政治、社会の分析です。一つの国の30年を270ページに盛り込むのは、大変な労力と技が必要です。先生が、ずっとフランスと併走してこられ、その都度に論文を書いてこられたからこそできることです。
日本で同様に、この30年間を300ページの本に凝縮しようとしたら、どうなるでしょうか。誰ができるのでしょうか。細部にわたる事実と理解、そして大胆な割り切りがないと書けません。そして論文の善し悪しは、その切り口が切れ味がよいかどうかで決まります。年表の記述をいくら詳しくしても、よい論文・分析にはなりません。
先生の分析では、フランスのこの30年は、副題にあるように、栄光の時代の終わりであり、EUへの統合です。しかし、単線的に進んだのではありません。国内の社会経済状況に規定され、国際的環境がフランスをそこに追いやります。他方で、リーダーも意図しつつあるいは抵抗しつつ、その流れに乗っていきます。乗らざるを得ないのです。この項、続く。

岩井克人先生の研究の軌跡、3

2015年7月21日   岡本全勝

先生が、ものごとの根源まで遡って考えた例として、貨幣と法人があります。
貨幣がなぜ通用するかについては、商品説(特定の物、例えば金(ゴールド)に対する、人の欲求に支えられているとする考え方)と、法制説(政府の命令によるとする考え方)が有名です。しかし先生によると、あるモノが貨幣として使われるのは、「貨幣として使われているから貨幣である」という「自己循環論法」です。これも、なぜそうなるのか、本をお読みください(p223)。
法人については、単なる企業と法人とは何が違うか。企業は所有者(オーナー社長)が、企業の資産・商品を自由に処分できます。それに対し法人の場合は、株主が会社を所有しますが、会社が会社の資産や商品を所有しています。株主は、会社の資産を所有していませんから、自由には処分できません。これを、先生は「2階建て構造」と呼ばれます(p288)。
「企業は誰のものか」。株主のものか、経営者のものか、従業員のものか。これらの議論が、2階建て構造で明快に説明されます。企業統治の場合は、オーナーと経営者との関係は、委任契約になります。それに対し、法人会社での統治は、会社の経営者は株主との間で委任契約を結んでいるのではなく、会社との間で信任関係にあります。企業の経営者はオーナーの指示に従う必要がありますが、会社の経営者は株主の指示に従うのではなく、会社に対し責任を負うのです(p349)。詳しくは、これも本を読んでください。