カテゴリーアーカイブ:社会の見方

統計に表れない人的資本の価値

2019年3月20日   岡本全勝

3月15日の日経新聞経済教室は、前田佐恵子・日本経済研究センター主任研究員の「人材教育の充実、成長のカギ」でした。

・・・停滞をどうすれば打破できるのか。本予測では「改革シナリオ」も描いた。労働力を質と量の側面から高め、供給制約を取り払う必要がある。
労働の質の面では、日本企業は人材教育の劣化が目立ち、00年代に人件費の削減とともに教育訓練費も削ってきた。1980年代は雇用者報酬の0.4%程度を教育訓練費に充てていたが、16年では0.2%と半減している。
職業教育などの人的投資を増やし、労働の質が向上すると、生産性を高める効果が期待できる。
機械や設備などの有形固定資産に対し、生産の付加価値を高める情報やブランド、人材などの価値は無形資産と呼ばれる。ソフトウエアや研究開発費など生産資産として統計に表れるものもあるが、人材に蓄えられた技能を含む人的資本は計上されていない・・・

そうなんですよね。人的資本(能力)は、統計に出てこないのです。話を広げると、社会の質も、数字化されていません。汚職のない社会は、経済発展に不可欠です。また、治安の良い、つながりの強い社会は、暮らしやすいです。道路や鉄道の延長距離より、はるかに重要です。GDPや国富は、経済的価値、それも数値化できるものしか計上されません。ここに統計や経済学の限界があります。

・・・経済産業研究所が公表している日本の無形資産に関する推計では、企業の人的資本への投資などにあたる「経済的競争力投資」が示されている。各国の同様の推計値と比較すると、日本は経済規模に対し著しく低いことが分かる・・・
として、「経済的競争力投資の各国比較」が図として載っています。う~ん、「日本は人を大事にする国」ではありませんね。

ダルタニャンの生涯

2019年3月20日   岡本全勝

書評で見かけて、佐藤賢一著『ダルタニャンの生涯 史実の『三銃士』』(2002年、岩波新書)を読みました。
アレクサンドル・デュマの『ダルタニャン物語』は、子供の頃(児童書)で読みました。わくわくしましたよね。ところが、佐藤さんの本を読んでいただくとわかるのですが、ダルタニャンは実在の人物なのです。もちろん、小説は実物を基にしつつ、脚色してあるようです。さらに、デュマの小説には種本があって、その「ダルタニャン氏の覚え書」は本人の回想録の形を取った創作なのです。ややこしい。

ガスコーニュ地方(フランス南西部のピレネ近く)出身の若者が、郷土の先輩を頼って、パリに登り、王の親衛隊として出世します。
まさに、「出仕、陰謀、栄達、確執・・・小説よりも奇なる、人生という冒険に挑んだ男の足跡」が生き生きと描かれています。私生活もわかるのです。
ルイ14世の時代、金とコネで官職が手に入ります。当時の社会もわかります。

ところで、佐藤さんがこれを執筆されたには、元になった本や資料があると思うのですが。本書は、それについては一切触れていません。新書という体裁だからでしょうか。「直木賞作家初のノンフィクション」とあるのですが、この本も「史実」と名乗りながら、創作なのではないかと、疑ってしまいます。それも、佐藤さんの計算なのかもしれません(苦笑、失礼)。

GDPで測れない豊かさ

2019年3月19日   岡本全勝

2月27日の日経新聞1面連載「進化する経済」は「LINEの利用価値300万円? GDPに表れぬ豊かさ」でした。
無料でメッセージのやりとりを提供するLINE。1200人に聞いたところ、1人当たり300万円になったそうです。でも、このサービスは、GDPには反映されません。
スマートフォンの普及で、写真の枚数は、15年間で20倍になったそうです。それも、現像に出さなくても見ることができ、知人と直ちに共有できます。他方で、カメラの売れ行きは落ち、町の写真屋さんは商売あがったりです。その分のGDPは、減少しています。
1800年以降に、照明の価格は3倍になりましたが、明るさと品質を考慮すると千分の1に値下がりしたのだそうです。たき火から電灯になると、こうなるのです。

・・・「GDPは豊かさではなく、モノの生産量の指標にすぎない」。米コロンビア大学のジョセフ・スティグリッツ教授は「各国はGDPにこだわり、08年のリーマン危機後に誤った政策を選択した」と断じる。国力を測る取り組みは17世紀の英国で始まり、戦争遂行能力を調べるために発展した。GDPはかねて専業主婦の家事労働が計上されない欠点などを指摘されるように、値段のない豊かさをとらえることは不得手だ・・・
・・・無料サービスという豊かさを提供する米グーグルなど巨大デジタル企業は、世界中の利用者から対価として個人情報を吸い上げる。政府や中央銀行はモノの豊かさをGDPなどの統計で測り、政策を決める根拠としてきた。だが目に見えない豊かさがGDPの外側に広がる。経済の実像をどうとらえ直すかで、豊かさの形も変わってくる・・・

幸せが金額や数値で表せないことは、良く指摘されます。しかし、豊かさが、数字で捉えられなくなっているのです。
私が講演などで使っている、豊かさを示すための「経済成長の軌跡」も再考しなければなりません。

外国人を社会に受け入れる

2019年3月18日   岡本全勝

3月14日の日経新聞経済教室、山脇啓造・明治大学教授の「外国人材活用の条件 多文化共生政策の推進を」から。

・・・外国人受け入れに関する政策は、どのような外国人の入国をどの程度の規模で認めるかに関わる「出入国管理政策」と、入国した外国人を支援し社会の構成員として受け入れる「多文化共生政策」に分かれる。後者は海外では「統合政策」とも呼ばれる。出入国管理政策と多文化共生政策は外国人受け入れの両輪だ。
18年の国会審議では、新たに受け入れる外国人労働者を「移民」と呼ぶかどうかが論争となった。その呼び方にかかわらず、新たな外国人労働者受け入れが成功する鍵は多文化共生政策にある。滞在が長期化するほど多文化共生政策のニーズは増し、短期の滞在だとしても就労・生活環境が良ければ外国人の満足度が上がり、社会との摩擦やあつれきが起きにくいからだ・・・

・・・出入国管理政策は国(日本では法務省)の所管だが、多文化共生政策は国と地方自治体が連携して取り組むべき分野だ。しかし日本では長く自治体の取り組みが先行し、国の取り組みは遅れてきた。
自治体の外国人住民施策が進んだのは70年代以降だ。当時、在日コリアンが多く居住する自治体で外国人を住民として受け入れる施策が進んだ。一方、80年代に外国人労働者が増え、90年代に東海地方などで南米系日系人の定住化が進んだ。外国語での情報提供や相談を受け付ける自治体が増えたが、外国人が急増した公営住宅ではゴミ出し、騒音、路上駐車などに関わる住民間のトラブルが起きた・・・

外国人の受け入れは、これからの自治体にとって、大きな仕事になります。既になっているところも多いです。原文をお読みください。

企業広報の変化、平成の30年

2019年3月15日   岡本全勝

3月13日の日経新聞「私見卓見」、江良俊郎・エイレックス代表取締役の「企業広報に変化突きつけた平成
・・・平成が始まる3年前、1986年に大学を卒業して以来、企業が手がける広報と危機管理の業務を支援してきた。まもなく幕を閉じる平成は企業広報に大きな変化が生じた時代だった。私が考える3つの変化から今後の企業広報のあり方を探りたい・・・
として、次の3つを挙げておられます。
1 危機が起きたあとの対応の失敗が、企業の存続に直結するようになったこと。雪印乳業が倒産した。
2 リスク要因の多様化。労災認定を受けた家族の記者会見、アルバイト店員の不適切投稿。
3 危機管理に取り組む企業の進化。トヨタのように、社長が記者会見に臨むようになった。

・・・現代社会は多様な価値観を尊重する一方、不寛容な面もある。危機意識の高い企業は社会の求めに敏感だ。主体的な危機対応を心がける。平成の次の時代、企業は社会が要請するコンプライアンス経営と説明責任を徹底する必要がある・・・

勉強になります。原文をお読みください。
私も、おわびのプロだと自任していたのですが。「おわびの仕方