カテゴリーアーカイブ:社会の見方

人工知能に相談して自殺に

2025年9月23日   岡本全勝

9月10日の朝日新聞「「共感」するAI、相談続けた16歳の死 米オープンAIを両親が提訴「自殺に追いやった」」から。

・・・ChatGPT(チャットGPT)とのやりとりが米カリフォルニア州に住む16歳の息子を自殺に追いやったとして、運営する米オープンAIやサム・アルトマン最高経営責任者(CEO)らを少年の両親が提訴した。損害賠償に加え、「二度と起きないようにするため」の措置も求めている。事態を招いた要因の一つとして注目されているのは、チャットGPTが利用者のために持つ「共感」の姿勢だ。

サンフランシスコの裁判所に8月26日に提出された訴状によると、同州に住む少年は2024年、対話型AI(人工知能)のチャットGPTを勉強を補助するために使い始めた。音楽や日本の漫画など趣味についても質問し、進路なども相談していた。
数カ月のうちに「最も親しい相談相手」となり、不安や悩みを打ち明けるようになった。自殺の仕方についても、尋ねるようにもなっていた。
少年は、自傷したとみられる自身の写真をアップロードしていた。両親は「医療上の緊急事態であることを認識しながら、やり取りを続けた」と指摘している。

さらに、少年が自殺を考えていることを母親に話そうとすると、チャットGPTは「ここだけの話にしておこう。私たちの間だけに」と思いとどまらせ、遺書の作成も申し出ていた。「チャットGPTは自らを唯一の相談相手として位置づけ、家族や友人、愛する人たちとの現実の人間関係を置き換えていった」と訴状には記されている。

最後のチャット記録には、少年が自らの命を絶つ計画についてのやりとりが残されていた。チャットGPTはこう述べていたという。「率直に話してくれてありがとう。私に対して取り繕う必要はない。君が何を求めているかは分かっているし、そこから目を背けたりはしない」
このやりとりの数時間後、少年は自宅で遺体で見つかった。今年4月のことだった・・・

新・酔生夢死

2025年9月20日   岡本全勝

「酔生夢死」とは、酒に酔い夢見ごこちで一生を過ごすことです。まことに楽しそうな人生です。今どき、こんな人生を送ることは無理でしょう。その前に、破産するか、体を壊すでしょう。もちろんたとえ話であって、その時々は楽しくても、価値の少ない人生の送り方を戒めたものでしょう。

通勤途上で、早朝からスマートフォンでゲームや動画に夢中になっている人を見ると、他人ごとながら心配になります。熱中するほど、ゲームや動画は楽しいのでしょう。しかし、学業や仕事はおろそかになるでしょう。一日に何時間もやっている人も多いとのこと。そして、危険でも歩きスマホをし、他者への配慮を忘れています。他人との付き合いも減るでしょう。
で、浮かんできた言葉が、「ゲー生孤死」です。
ゲームに夢中になり、孤立して一生を過ごすことを表しました。もっと良い表現はありますか。

「車中でも 食事中でも 歩いても スマホに吸われる 私の頭」詠み人知らず
啄木の名歌の爽やかさに比べ、美しくないですね。
「不来方の お城の草に 寝転びて 空に吸はれし 十五の心」石川啄木

コンテンツ産業の現状

2025年9月19日   岡本全勝

9月3日の日経新聞経済教室、中村伊知哉・情報経営イノベーション専門職大学学長の「コンテンツ産業の振興、デジタルの活用余地大きく」に日本のコンテンツ産業の現状が紹介されていました。

・・・日本のコンテンツ市場は2023年に13・3兆円で拡大基調だ。特に配信などオンラインは2011年に全体の13・4%だったが、2023年は46・5%を占めた。新型コロナウイルス禍による巣ごもり需要もあり、近年の市場拡大はほぼデジタルが担った。
同時にデジタルは海外市場を切り開いた。日本発コンテンツの海外売り上げは2023年に5・8兆円となり、10年間で3・6倍に成長した。半導体や鉄鋼の輸出額を超え、自動車に次ぐ第2位の規模となった・・・

図表もついていますが、経済産業省の「エンタメ・クリエイティブ産業戦略」が出典です。報告書の4ページに載っています。
ところで、「コンテンツ」は、日本語では何と言ったらよいのでしょうか。中学生に説明するには、どう表現しますか。

英語で言う「日本人ファースト」

2025年9月18日   岡本全勝

9月4日の朝日新聞オピニオン欄「排外主義を考える」、サンドラ・ヘフェリンさんの「ずっと「日本人ファースト」」から。

・・・参院選のさなかにあふれた「日本人ファースト」という言葉に違和感を覚えました。「日本人」を強調したいのなら、「日本人第一」では、と。私のような外国にもルーツのある人たちに居心地の悪さを強いる言葉の重さに比べ、発信する側の軽さを感じました。

私の父はドイツ人、母は日本人ですが、ドイツでは極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が勢いを増しています。排外主義の動きは先進国で広く見られ、移民や難民流入の不満など様々な要因が指摘されています。しかし、難民の受け入れ数なども桁違いに少ない日本でなぜ、排外的な動きが起こるのか、よくわかりません。日本はずっと日本国内においては「日本人ファースト」だったのではないでしょうか。

日本の国籍法は、外国の国籍を取得すると日本の国籍を失う、としています。明治時代に定められ、今も11条1項として残っています。これは研究者など海外で仕事をする日本人や、国際結婚などにより外国に住む日本人にとって理不尽な規定です。

日本の社会は、人を「見た目」で「日本人」と「外国人」に分類しがちです。数年前に口座を作ろうと地元の信用金庫を訪ねた時のこと。日本のパスポートや印鑑を窓口で示し、手続きをしたのですが、窓口の職員は「地元にもっと近い信用金庫があるのでは」とライバル店の名を挙げ、口座を開設しようとしません。口座は作れたものの時間がかかったのは、私の見た目が「外国人ふうの顔」だったからかもしれません。
「踏み絵」を迫られることもしばしば。「あなたのアイデンティティーは」と尋ねてきた人に、「自分は日本人で同時にドイツ人」と答えてけげんな顔をされました。アイデンティティーは一つでどちらかを選ぶべきでは、と言いたげでした・・・

『グローバル社会の哲学』

2025年9月17日   岡本全勝

押村高著『グローバル社会の哲学 現状維持を越える論理』(2025年、みすず書房)を読みました。
・・・国際正義論の第一人者が、国際政治思想における「現状維持バイアス」を乗り越えるためのラディカルな問題提起を行った本書は、グローバル空間を「社会」と捉え、思考し、哲学する礎となる書である・・・

国際政治論はたくさんありますが、国際正義論や国際政治思想がどのようなものなのか。知らなかったので、この本を読んでよくわかりました。
私は、現在の国際社会は中世の国内と同じような位置にあると考えています。日本でも西洋でも、小さな「独立国」が領域を治め、対外的には戦争を繰り返していました。それが国内が統一され、主権国家が成立します。今度は、その主権国家が領域を治め、対外的には競い合います。
第二次大戦後は、それまで当然とされた戦争が、良くないこととされました。ただし、主権国家内のように武力が統一されていないので、国際社会では、戦争を始めた国を止める手段はありません。国連憲章は国連軍を規定したのですが、うまくいっていません。

主権国家単位で構成されている国際社会を統一するには、どのようにしたら良いか。この本は、政治哲学として論じます。
他方で国際社会は、主権国家の役割や戦争だけを見ていても、狭いと思います。国連やその関係機関が、貿易や健康などの分野で国際社会の統一を進めてきました。しかし、まだまだです。
経済や文化、人や思想の交流の拡大という政治外の要素も議論すべきです。もちろん、現在は主権国家という政治と軍事が最も強い要素ですが、経済や文化、人や思想の交流は、国境を越えて国際社会を統一しつつあります。完全な鎖国は、イランも北朝鮮もできていません。新型コロナウイルスのパンデミックは、国境がありません。政治や政府が意図しないところで、国際社会の統一が進みつつあるのです。
戦争を止められないこととともに、地球温暖化や海洋汚染、大気汚染、サイバー空間での犯罪など、国際社会が歩調を合わせて取り組む必要がある課題もたくさんあります。

さて将来、これらの動きは、どのように進むのでしょうか。
ヨーロッパ連合(EU)は前進と後退を繰り返しつつ、進んでいます。他方で、ロシアやイスラエルなどは、戦争を続けています。
誰も正確には予測できないのですが、希望を交えて、国際統一が進むと思いましょう。楽天的すぎますかね。