カテゴリーアーカイブ:社会の見方

サービス付き高齢者向け住宅

2021年9月11日   岡本全勝

「サ高住」(さこうじゅう)って、ご存じですか。関係者の方は知っているでしょうが、知らない人も多いのではないでしょうか。「聞いたことはあるけど、どんなものかは知らない」という人もおられるでしょう。

サービス付き高齢者向け住宅」の略です。高齢者向けの賃貸住宅で、医療や介護の職員が常駐し、安否確認サービスと生活相談サービスを行います。生活支援や介護やサービスがついているものもあります。2011年にできた制度(それ以前も似た制度はありました)なので、まだ知らない人も多いでしょう。

高齢者には安心できる住まいなのですが、体験した人は少なく、見た人も少ないです。人は、見たり体験することで理解し、安心します。このような新しい仕組みを、高齢者や家族の人に、どのようにして知ってもらうのか。

9月6日の朝日新聞に「高齢者と住まい」「サ高住で幸せな最期送った母 食事制限なし、友人とも面会自由」という記事が載っていました。どこで、どのように最後を迎えるかも、大きな問題です。

9.11後の20年

2021年9月10日   岡本全勝

9月7日の日経新聞文化欄「9.11後の20年」トーマス・フリードマン氏の「民族とグローバル、均衡を」から。
・・・東西冷戦の終結を受け、その後の国際秩序を予想する議論が出た。フランシス・フクヤマは自由経済圏が勝利し平和が来る「歴史の終わり」を予言したが、世界から紛争は消えなかった。サミュエル・ハンチントンは異なる文明同士が対立する「文明の衝突」を論じたが、実際にはイスラム教シーア派とスンニ派の対立のように、同じ文明内での衝突が頻発した。
私は「民族としてのアイデンティティー」と「グローバル化」という新旧2つのシステムがからみあい、共存する世界を予想した。トライバル(民族的)な欲求とグローバル秩序が時には綱引きを、時にはレスリングをしつつ均衡を保っていく構図だ。この予想はかなり的を射ていたと思う。
(14年に)ロシアのプーチン大統領はクリミア半島の併合に踏み切ったが、ウクライナの首都キエフには侵攻しなかった。中国は香港で引き締めを強めているが、台湾には侵攻していない。トライバルな欲求をグローバル秩序が抑え込むことに成功したからだ・・・

欧米と中国の対立、日本の位置は

2021年9月7日   岡本全勝

9月3日の読売新聞「竹森俊平の世界潮流」「欧米の対中競争「戦線」拡大…ワクチン・太陽光 パワーを左右」から。

・・・ところでシンガポール政府が公式に認めたワクチンは米ファイザー製、米モデルナ製だけだが、公式ではないものの、中国製ワクチンも接種が認められている。
シンガポールと中国の経済関係は強い。中国政府は有効なワクチンとして中国製だけを認めている。より高い治験成績を持つファイザー製、モデルナ製とも有効性を認めていないのだ。それで中国に出張の機会が多いシンガポール人は、仕方なく中国製ワクチンを接種する。

現在、主要先進国は中国製ワクチンの有効性を認めていないため、「ワクチン接種」が主要先進国への入国に必要になった場合、中国は孤立しかねない。
他方、世界保健機関(WHO)は中国製ワクチンを承認している。発展途上国でのワクチン接種は遅れている。欧米のワクチンは先進国での接種に回り、途上国へ供給する余裕がない中で、中国製は重症化率、死亡率を下げる効果があるとして、WHOは途上国への供給を念頭に承認したのだ。これを受けて中国は、アジア、ラテンアメリカの途上国に広範にワクチンを供給している。

中国は主要先進国への訪問の道を閉ざされ孤立するのか。194か国が加盟する国際組織のお墨付きを得た中国製ワクチンを、主要先進国はいずれ承認せざるを得ないのか。恐らくこれを決めるのは疫学的安全性だけではない。経済力も絡んでくる。ことはすでに「パワーポリティックス」に発展している。
中国市場を重視するドイツなどの企業人は、出張のために中国製ワクチンを接種するだろう。ギリシャ、スイスなど一部の欧州の観光国は、中国人観光客を期待し、すでに中国製ワクチンを入国条件に承認している。日本はどうするのか。いずれ中国製ワクチン接種の施設が国内にできるのだろうか・・・

イギリス産業革命以前の起業家

2021年9月5日   岡本全勝

ジョオン・サースク 著『消費社会の誕生─近世イギリスの新規プロジェクト』(2021年、ちくま学芸文庫)が、勉強になりました。

イギリスの産業の歴史と聞くと、産業革命を思い浮かべます。突然、革命が起きたのか。そうではありません。それ以前に、地方の町や農村に家内制手工業が発展します。亜麻布、靴下、台所用品などなど。政府や知識人たちは、穀物生産が第一、国内消費向けの産業育成より海外貿易重視です、しかし、農地を追われた人、働くところのない人たちが、これらの手工業に従事し、貧民対策としても広がります。副収入を得ることができるのです。
それらの多くは、品質がよくなく、また規格もバラバラです。知識人はそれを嘆きますが、これらの製品は輸出ではなく、国内で消費されます。貧しい人にとっては、立派で高価な品物より、少々粗雑でも安い物が受け入れられます。ここに、生産と消費の好循環が生まれます。16世紀、17世紀の発展です。

庶民の行動(収入を得たいという願望、身の回りのものを買いたいという欲望)が、社会を動かします。そして、一部の人の「新奇な行動」が各地の人たちに広がります。庶民の行動と通念の変化が、社会を変えていきます。

著者は、地方経済史の専門家です。かつての権力を中心とした政治史ではなく、地域社会から歴史を分析します。正確な生産や売買の記録はないのですが、残された記録を元に、議論を組み立てます。面白いです。
1984年に東大出版会から出版されたものが、今回文庫本になりました。このような学術書が簡単に読めるようになるのは、ありがたいですね。

世相を反映する消費者物価指数の品目見直し

2021年9月5日   岡本全勝

8月21日の朝日新聞に「消費者物価指数、品目見直し」が載っていました。
・・・ 消費者が買うモノやサービスの値動きを示す「消費者物価指数」の対象品目が見直された。最近の消費の変化を反映させ、なるべく物価の動きを正しくつかめるようにするためだ。見直しは5年ごとで、その品目の移り変わりには、時代の変化が色濃く映し出される。
20日に公表された7月分の指数から見直し後の「2020年基準」が適用された。これまでの「15年基準」に比べ、各家庭でよく買うようになった30品目が加えられ、あまり買わなくなった28品目が除かれた・・・

今回の改訂(別表1)で除かれたのは、携帯型オーディオプレーヤー(ウォークマン)」、ビデオカメラ、固定電話機、電子辞書などです。幼稚園保育料は無償化で外されました。他方で追加されたのは、タブレット端末、ドライブレコーダー、カット野菜、学童保育料などです。社会の変化が見て取れます。

記事には、1960年以降の主な品目入れ替えが、表になって載っています。何が新しく追加されたかとともに、使われずに除外された品目も興味深いです。
1960年にはマッチとわら半紙が外れ、1970年にはかんぴょうと学生帽、1980年には白黒テレビと削り節、1990年にはレコードと万年筆、2000年には2槽式電気洗濯機とカセットテープ、2005年にはミシンとビデオテープ、2010年には写真フィルムとやかん、2015年にはお子様ランチと電気アイロンです。年寄りには、懐かしいです。
もっと詳しく見ると、世の移ろいが、わかるのでしょうね。