カテゴリーアーカイブ:社会の見方

第二の「危機の30年」

2022年4月7日   岡本全勝

3月28日の朝日新聞オピニオン欄「記者解説」、三浦俊章・編集委員の「危機の30年とロシアの侵攻 冷戦後の失敗教訓に、秩序再構築を」から。

・・・政治と外交を取材してきた過去30年を振り返ると、行き先不明のジェットコースターに乗り続けてきたような気がする。
1989年にベルリンの壁が崩壊した後に東ドイツに入った。歓喜と未来への楽観があふれていた。西側は冷戦の「勝利」に酔い、市場経済と民主主義が世界を覆うと信じた。しかし、グローバル化は貧富の差を広げ、国家間対立は深まり、専制主義とポピュリズムが台頭した。そのあげくのウクライナ侵攻である。プーチン大統領は核の使用をちらつかせる。米ロの全面対決になりかねない。
20世紀には二つの世界大戦があった。両者の間はわずか20年。当初は平和な世界をつくろうと理想主義が盛り上がったが、経済恐慌を機に暗転、破局へと落ちていった。この時代は歴史家E・H・カーの名著にちなんで「危機の20年」と呼ばれる。我々もまた、冷戦終結以来の歩みを「危機の30年」としてとらえ直す必要がある・・・

・・・今日に至る「危機の30年」は三つの時期に分けられるだろう。
第1は、壁崩壊から世紀の変わり目までの「おごりと油断の時代」である。唯一の超大国となった米国の関心は経済に集中し、市場万能の新自由主義が全盛となった。第2次大戦の敗戦国ドイツ(西独)と日本は、米国の手厚い援助を得て、経済復興と民主化を実現した。しかしソ連の共産党体制が崩れたとき、民主化は既定路線だと米国は安心した。ロシアは過酷な市場原理に委ねられ、富が新興財閥に集中し、経済は崩壊した。民主化にも失敗し、旧ソ連の保安機関KGB出身のプーチン氏の体制が生まれた。

第2の時期への転機には、ワシントン特派員として遭遇した。2001年の同時多発テロで、米外交の優先課題は一変した。だがそれは「一極崩壊の時代」の始まりだった。力で世界をつくりかえられると過信したブッシュ政権は、アフガニスタン、イラクへの戦争を始め、泥沼に陥った。市場原理万能の経済は08年のリーマン危機を引き起こし、こちらも壁にぶつかった。

第3の時期は、10年代以降の「専制と分断の時代」である。米国の混迷とグローバル化の失敗を見たロシアと中国の指導者は、専制的支配を強めた。西側民主主義国でも、移民への敵意や格差の拡大から、ポピュリズムが広まった。英国は欧州連合(EU)離脱を決め、米国には社会の分断をあおるトランプ大統領が生まれた・・・

コロナ対策に見るリスクコミュニケーション

2022年4月4日   岡本全勝

3月26日の朝日新聞夕刊、福田充・日本大学危機管理学部教授へのインタビュー「危機に強い社会になるには」から。

こうした研究を始めた契機は1995年。東大大学院で、メディア研究をしていたころにさかのぼる。
「修士論文を出した直後に、故郷で阪神大震災がおき、調査に入りました。初動対応がもっとうまくいけば助かった命があったのではないか。被災地で怒りをおぼえました。3月には地下鉄サリン事件があり、テロ対策の研究の貧弱さを知り、人の命を救う研究をしようと。それまでのテーマを捨てました」
日本では当時、「危機管理」の研究はタブー視されていた。「テロや犯罪対策は国民を監視するもの、有事を想定するとは戦争ができる国にするためか」と批判された。東大を離れるまでひっそりと研究を続けた。その後、新型インフルエンザが流行し、感染症がテーマに加わった。

新型コロナ発生から3年目。日本の対策は、戦略不在で場当たり的だったとみている。
「飲食店への時短要請や外出自粛など、短期的でミクロな『戦術』しか示せていません。必要なのは長期的な『戦略』なのに、政府は対策の道筋やゴールを示していません」
2012年には、緊急事態宣言もだせる新型インフルエンザ等対策特別措置法ができた。準備がなかったわけではない。
「しかし地方自治体や企業、病院などに知識や議論が共有されていなかった。日本のコロナ対策が比較的うまくいったとされるのは、国民の絶大な協力があったからだ」

その一方でこの2年間、社会全体のために個人の私権制限がどこまで許されるか、犠牲はどこまで許容すべきか。こうした議論はほとんど進まなかった。
「同調圧力というか、空気に支配される国民性のおかげで、マスクを着けるとか外出自粛といった基本対策は進みました。でも個人が考え、意見を出し合い『ここまですべきだ』と決めるリスコミはできていません。これでは民主主義の国といえません。皆で議論し、納得したところで線引きするのが答えで、結論になるのです」

国民の顔色をうかがい、議論の提案を政府が避けてきたとも解釈できる。
「リスクを考えることを避ける国民性のため、合意形成が簡単にできないと政府にはわかっている。支持率が下がるならやめておこうとなる。でもここを打破しなければならない。危機管理できる社会になれば、近代化の階段を上れる。リスコミの民主主義化が必要なのです」

曖昧な表現

2022年4月3日   岡本全勝

先日読んでいた文章に「現在絶滅していない動物も・・・」という表現がありました。???
まだ絶滅してはいなくて、今も存在するのか。すでに絶滅して、現在は存在しないのか。どちらだろうかと考えました。この文章は「現在絶滅していない動物もいずれ絶滅する」と続くので、前者だと分かります。

原稿を書いていて、「政府の出番が少なくてもよい社会が生まれます」という文章を書きました。これでは、「出番が少なくてもよい」のか、「良い社会」なのか、曖昧ですね。

しばしば悩むのが、「私はあの人のように急がない」です。私は急がないとして、あの人は急ぐのか、あの人も急がないのか。
「毎日新聞を読む」は、毎日欠かさず新聞を読むのか、(朝日新聞でなく)毎日新聞を読んでいるのでしょうか。
「会議机の書類を片付けなくてよいでしょうか」と聞いて、「いいよ」と答えられたら、片付けるのでしょうか、放っておいてよいでしょうか。

話している本人は、このあいまいさに気がつかないものです。私の原稿も、右筆や校閲が指摘して手を入れてくれて、自分の文章のあいまいさに気がつくことがあります。

『一生モノの物理学』

2022年3月30日   岡本全勝

鎌田浩毅、 米田 誠著『一生モノの物理学 文系でもわかるビジネスに効く教養』 (2022年、祥伝社)が、分かりやすく勉強になります。光、電子、磁力などを、身近な医療や機械、気象などから説明してくれます。××の法則を覚えるより、分かりやすい説明です。

出版社の宣伝文が的を射ているので、転載します。
「大学受験で文系を選択した人にとって理解が難しい世界――「物理」。
しかし、家電が動くのも、飛行機が飛ぶのも病気を発見できるのも、部屋の明かりがともるのもすべて根底には物理学が存在しています。
それだけ社会の根底理論となっている「物理」を知らないことはビジネスパーソンにとって大きな損失ではないでしょうか?..
そこで、「京大名誉教授」×「関西大手予備校・研伸館講師」という教えるプロがタッグを組み、"「物理が苦手」な人のための物理の本"を制作しました。
日常の中にある技術に活用されている物理の世界をわかりやすくお伝えします!」

胃がんは絶滅危惧種

2022年3月30日   岡本全勝

3月23日日経新聞夕刊「がん社会を診る」は、中川恵一・東京大学特任教授の「ピロリ菌感染は激減、胃がんは「絶滅危惧種」に」でした。読むと、「へえ」です。

・・・長引くコロナ禍でストレスがたまっている方も多いはずです。かつて、このストレスが胃潰瘍の原因と言われた時代がありました。しかし、ストレスだけでは胃潰瘍はまず発症しません。
27年前の阪神大震災の直後、胃潰瘍の患者が増えました。避難生活のストレスが原因と考えられましたが、患者の8割以上がヘリコバクター・ピロリ菌の感染者でした。逆に、ピロリ菌に感染していない人にはほとんど胃潰瘍は発生していませんでした・・・
・・・胃がん患者のほとんどがピロリ菌に感染していますが、ピロリ菌の感染者のうち胃がんになる人は1%以下。ピロリ菌に感染しても胃がんになるわけではありません・・・

ただし、ピロリ菌に感染している人が塩分過多になると、胃粘膜の炎症が進み、胃がんを発症しやすくなるのだそうです。
アメリカでは、胃がんは白血病や膵臓ガンより珍しい「稀少がん」になっているとのこと。時代は変わるものですね。
ちなみに私も、40代にピロリ菌の除去を受けました。一安心かな。