カテゴリーアーカイブ:社会

新型コロナと人間社会の行方

2020年4月23日   岡本全勝

読売新聞、社会学者の大澤真幸さんと政治学者の宇野重規さんとの対談「新型コロナと人間社会の行方」から。
・・・最大の主題は、国民国家を横断するグローバルな連帯は可能か、という問いだ。感染症は一国だけで解決できず、国際協力への動きが出ている。他方で、一国的な利己主義も強化されている。人類は国民国家の枠を超えて連帯していけるのか。逆に、一国主義が決定的に強化されるのか。
第二の主題は、私たちは非常時の権力をどう容認すべきか、だ。法の枠を超えた権力が、今ほど求められたことはない。だが非常時の権力は日常の中にとどまろうとする傾向があり、民主主義を破壊しうる。私たちはこうした権力とどう付き合っていけばよいのか。
第三に、監視社会とプライバシーの問題。私たちは、IT技術を駆使した、個人の行動や身体への徹底した監視が、感染症対策に非常に有効であることを学ぶだろう。しかし、それは同時に、私たちの自由やプライバシーにとっての脅威である。私たちは、技術をどう活用すべきなのか・・・

・・・宇野 一見すると、国家主権が強化されたようにも見えます。各国の首脳がテレビなどで国民に語りかけ、存在感が増します。ただ、各国ともウイルスをコントロールできてはおらず、あくまで緊急対応にすぎません。結局は、国際的な協力体制を築いていくしかない。たとえ自分の国の感染拡大を何とか抑えても、他国で流行すれば、ブーメランのように自国にも感染の波が戻ってくるのですから。
大澤 人類は、国民国家の利益だけを追求してもうまくいかないと自覚し始めています。国家の利益とは矛盾する部分が出てきても、国家主権の一部を国際的な機関にゆだねることを目指すしかありませんね。ただ懸念もあります・・・

・・・宇野 感染の拡大防止策では、ヨーロッパと東アジアで違いが明確に出ていました。ヨーロッパは基本的にロックダウン(都市封鎖)などで、個人の行動を総量で規制しようとしています。他方、中国や韓国は、スマホの位置情報を追跡して濃厚接触者を割り出すなど、個人の行動をマイクロレベルで把握しようとしました。平時に戻った際、権力のあり方の違いにもつながっていくのではないでしょうか。
――かねて監視社会批判は情報化の便利さの前に、今一つ力を持たない感もあります。
宇野 自由と幸福は両立するというのが、近代リベラリズムの理想像でした。現在は二つが切り離され、どちらを選ぶか迫られていると思います。ですがどちらか一つを取ることはできず、両者のバランスをどう取るか、知恵が求められています・・・

・・・宇野 フランスの政治学者ピエール・ロザンヴァロンは、著書『良き統治』で、良い統治の条件として、決定過程を明確に説明できること、責任を取ること、国民への応答を挙げています。今回の危機で、権力側が個人の監視を強めるので、国民の側も統治のあり方をチェックできるようにしなければ、バランスが悪くなっていくと思います。
――そうした民主主義には適切な担い手が必要ですが。
宇野 短期的には、権力による個人情報の把握が、国民の要求の下で進むでしょう。ただ日本を含め、各国民は指導者や権力の説明を厳しく評価し、要求水準も高まっています。政治権力はきちんと応答しないと、統治が成り立たなくなり生き残れないと思います。長期的には、そうした国民の声に基づいた、良き統治の実現の可能性に期待したいです。もちろん国民の側も要求するだけではダメです。公共のために何ができるのか考えることが重要です。
大澤 現状だと有象無象の文句と捉えられてしまいますものね。ただ、それが組織化されれば、説明責任を果たさない政府は、その正統性を維持できなくなるでしょう・・・

詳しくは、原文をお読みください。

スマホで丸裸に、あなたの生活

2020年4月14日   岡本全勝

NHKのウエブニュース欄に「さよならプライバシー あなたの恋愛も懐事情も丸裸」(4月13日掲載)が載っていました。
・・・「あなたの住所や家族構成、家族や身の回りの人も知らないあなたの趣味や収入まで丸裸にできますよ」初対面の人にこんなことを言われたら、どう感じるだろうか。
実は、スマホの利用履歴のデータを使えば、そんな占い師のようなことができてしまうということが今回、NHKとIT企業が行った実験で明らかになった。
あらゆるものがデータ化され、AIで解析され便利なサービスや製品の開発につながる現代社会。「もはやプライバシーは本人のものではなくなっている」という指摘さえ出ている。あなたが今、何気なく使っているスマホから、いったいどれだけのデータが発信されているだろうか・・・

として、ある人のスマートフォンのグーグル利用履歴から、住所、職業、経済状況、女性との付き合いを推理します。本当に「丸裸」になります。読んでみてください。
私もあなたも、同じ状況に置かれています。嫌ですねえ、プライバシーは筒抜けです。

「移民と日本社会」

2020年4月6日   岡本全勝

永吉希久子著『移民と日本社会』(2020年、中公新書)を読みました。
日本で定住外国人が増えています。日本は、移民(受け入れ)政策はとらないとしていますが、外国人留学生や労働者は増えています。昨年、出入国在留管理庁ができました。
地域での定住外国人の受け入れについては、1990年代から問題が起き、自治体では対応に迫られました。それらを伝える報道も多くあります。麻生内閣では、内閣府定住外国人施策推進室」を設置(平成21年1月)しました。

この本は、現場からの事例の報告ではなく、これまでの調査研究に基づき、数値で迫ります。
移民には、どのような種類があるか。移民による経済的影響(賃金や失業率、技術革新への影響、社会保障制度)、社会的影響(犯罪や治安)。移民の統合政策の違い、長期的影響(移民二世、国民のまとまり)などです。
外国人による犯罪など、一般に流布している噂と、実際は異なることが示されます。
自治体で定住外国人受け入れに当たっている職員や、関心ある方にお勧めします。

移民政策を採っていないこと、しかし現実にはなし崩し的に定住外国人が増えていること。これも一つの政策ですが、一貫した対応を遅らせています。部分部分での対応が、無理を生んでいます。
さらに人数が増え、地域社会での受け入れが問題になると、国民により認識されると思います。外国人家族の地域への受け入れ、特に子供たちの教育と就業が大きな課題です。

NHKのウエッブサイトには、「外国人材」の欄があります。そこでは、NHKの世論調査で、日本で働く外国人が増えることに「賛成」する人は70%に上ること。一方で、自分が住む地域に外国人が増えることに「賛成」する人は57%であること。
外国人労働者が家族を伴って日本で暮らすことについて条件を緩和して今より広く認めるべきだと思う人が30%余りいる一方、今以上に認めるべきではないと思う人が60%を占めることが報告されています。

桜並木を育てた人たち

2020年4月3日   岡本全勝

東北新幹線の車窓から、いくつも桜と桜並木が見えます。それを見て、先人たちの努力を思います。

里山の桜は、自然と育ったものでしょう。屋敷や畑の隅に咲く桜は、その土地の所有者が植えたものでしょう。
では、桜並木はどうか。桜並木は、道路沿いや河川沿いにあります。地元の人が協力して植えたのでしょうね。そして世話をして、ここまで育ったのだと思います。

そのような並木が、今後衰えたら、どのようにして維持されるのでしょうか。篤志家や町内会がしっかりしていないと、枯れていくことになります。市町村役場の責任にせず、住民や企業の協働で続けることができるとよいのですが。

「ひとり空間の都市論」

2020年3月27日   岡本全勝

南後由和著「ひとり空間の都市論」(2018年、ちくま新書)を読みました。連載「公共を創る」で、平成の社会の問題の一つとして、「孤独」を取り上げています。その関心の延長です。

「おひとり様」と呼ばれる現象を、いくつかの角度から分析しています。冒頭に漫画「孤独のグルメ」が出た後、住まい、飲食店、モバイルメディア(ウオークマンからスマートフォンまで)などが取り上げられます。統計による分析ではなく、現象を捉えた、社会論、都市論です。

都市が人を自由にし、また一人で生きることを可能にします。江戸時代から、都市には独り者が多かったようですが。さらにその独り者が増え、そして生活しやすくなりました。
単身者が増える。そのような人を対象として店やサービスが増える。そして、さらに便利になって、単身者が増える・・・。という積み重ねなのでしょう。

単身者が重宝するのは、飲食店です。一人で入りやすい店が増えました。かつては、学生街の食堂と町の食堂でしたが、それらが少なくなり、ファストフード店が増えました。便利ですが、そのような店は、食事を楽しむというものではありません。
単身赴任したときに、雨の日曜の晩に一人で食べることは、わびしかったです。