カテゴリーアーカイブ:人生の達人

電子メールでのやり取りの作法

2021年10月11日   岡本全勝

電子メールは、便利ですよね。電話と違い、相手の都合を確認することなく、発信者の都合のよいときに打つことができます。そのことによる、受け取る側の迷惑について、そしてその対処方法については、『明るい公務員講座 仕事の達人編』で書きました。

電子メールでのやり取りが定着してきて、その作法も磨かれてきました。やたらとCC(同報)しない、親しい人とは冒頭の挨拶文を省略するなどです。
今日の話は、時に悩む次のようなことです。
親しい人に、お願いのメールを送ります。急ぎの場合は、「○日までにお願いします。可能でしょうか」とか、「返事ください」といった文言を入れておきます。
問題になるのは、「急いでいません。○日までで結構です」といった内容の時です。しばらく返事が来ないときがあります。多くは、作業をしていてくれるのですが、返事が来ないと、「届いてないのかな」「何か返事できないことがあるのだろうか」と心配になります。

私は、依頼があった場合は、直ちに返事できるものは、すぐに返事します。しばらく時間がかかりそうな場合は「メール受け取りました。しばらく時間ください」と、まずは受け取ったことの返信を送っておきます。

部下の前に上司を育てる

2021年10月10日   岡本全勝

10月4日の日経新聞に、「働きがいは何ですか(3)ライオン、まず上司を育てる 上下の壁壊し 能力発揮 全管理職に半年間の実習」が載っていました。管理職には、ぜひ読んでいただきたい内容です。

・・・管理職は本当に部下を理解し育てているのか――。2019年に「働きがい改革」を始めたライオンは、全管理職600人に、部下との関係を6カ月かけ再定義する「関係性向上プログラム」参加を義務付けた。職場の人間関係が働きがいを左右すると考える企業はライオン以外でも増えている・・・

・・・約130年の歴史を持ち「社員の愛社精神も非常に強い」(関屋氏)ライオンが働きがい改革を始めたのもそのためだ。同社の考える働きがいは、社員が企業人、家庭人として充実した生活を送り、自ら成長していくというもの。上下の関係性を改善して認め合い「部下が本音で話す心理的な安心感が必要だ」(関屋氏)。「100年後も歯磨きの会社でいいのか」との問題意識も強く、働きがいを感じ、能力を発揮できる若手を増やすことが事業変革につながると期待する。
新任管理職を対象とした以前の研修で「(さらに上のクラスの)上司が変わらねば新風土は醸成できない」と指摘され、関係を築けぬ上司が阻害要因になる危険性は分かっていた。
そこで同社は(1)部下の考えを取り込みながら未来を示す「オーセンティック(信頼感のある)リーダーシップ」を打ち立てる(2)異なる職場でも部下への接し方に差がないようにする――を目標とする独自プログラムを今夏から始めた・・・
・・・上司が変われば部下との関係性は改善するか。研究開発本部ではその効果を示すような経験があった。
同本部人事担当の田淵照人副主席研究員は「18年の調査で『キャリアへの助言が不十分』などの声が出て、若手の働きがいの低下が判明した」と話す。対策として管理職に部下への関心を高めるために、部下に対し1~2週に一度のインタビューを継続させたところ「上司の壁が低くなり改善が確認できた」・・・

記事には、「仕事の満足度左右 上司→部下の理解不足」の数値も載っています。
ある調査では、上司から理解されていないと感じる従業員で「職場に満足」と答えた割合は6%です。反対に、上司に理解されていると感じている従業員は68%が満足しています。
では、どの程度の上司が部下を理解しているか。「上司は自分を理解している」と答えた部下は42%、「理解していない」が25%、「どちらでもない」が33%です。
部下が上司に理解してほしい点の上位3つは、「これまでの業務」「業務への希望・不満」「性格」です。(カオナビHRテクノロジー総研、2018年末の調査)

基礎研究が実を結ぶまで

2021年10月8日   岡本全勝

日経新聞私の履歴書、10月は、吉野彰さんです。リチウムイオン電池の発明者として、2019年にノーベル化学賞を受賞されました。

第1回の「創造と挑戦」に、次のような話が出ています。基礎研究が実を結ぶまでには、多くの困難があるとして、3つの難関を挙げておられます。
・研究の大半は芽が出ず、すぐに振り落とされる。「悪魔の川」
・ここを泳ぎ切って基礎技術ができても、商品化にいたるまでに多くの課題を解決しなければならず、大半が脱落する。「死の谷」
・ここを乗り越え、商品化に成功しても、市場が拓けるまでに長い年月がかかる。「ダーウィンの海」

組織の目標と業務管理

2021年10月7日   岡本全勝

10月2日の日経新聞に「パナソニック、長期視点の経営に転換 利益率目標示さず」が載っていました。
・・・同日記者会見した楠見雄規社長は「(利益などの)結果数値で管理しない」方針を示した。利益や時価総額が競合に比べ見劣るなか、新たに事業ごとに競争力向上につながる指標を設定し、長期的な視点で復活につなげる。
楠見氏は会見で「事業戦略の推進のアプローチを変える」と、津賀一宏前社長の経営路線を転換する姿勢を鮮明にした。

パナソニックは2012~21年まで社長を務めた津賀氏の下、売上高営業利益率5%を経営目標に据えてきた。楠見氏はそれが「事業部には足切りラインのように受け止められた」と振り返る。
事業部では目標達成に向けて無理な受注や投資の先送りなどを繰り返し帳尻合わせの数字を作るようになった。結果として大胆な投資などを打ち出した海外勢に比べて競争力を失い、「過去30年間、パナソニックは成長していない」停滞につながっているとの分析だ。
そこで売上高や営業利益など結果として表れる財務指標だけで管理するのをやめ、事業ごとに競争力の向上につながる指標まで落とし込んで管理するように変える・・・

詳しくは、原文を読んでいただくとして。
難しいですね。組織の長は、内外に組織の目標を示す必要があります。部下はその実現を目指して仕事をします。ところが、下部組織に数値目標を割り当てると、記事にあるように、帳尻あわせになることがあります。これでは、本来の目標が忘れられ、手段が目標になってしまいます。他方で、数値でない目標は、物差しにならず、評価もできません。
では、どのように下部組織に目標を割り当て、事後評価をするか。企業は売り上げや利益が数字で出ます。その点で、売り上げがない役所は難しいです。もっとも、企業でも、開発部門や本社管理部門は同じような問題を抱えています。

改善を提案すると仕事が増える、組織文化

2021年10月6日   岡本全勝

10月2日の日経新聞「三菱電機 工場あって会社なし 品質不正で調査報告書」から。
・・・三菱電機の品質不正問題を受け、調査委員会が1日公表した報告書は、従業員が会社全体よりも「工場や製作所の利益」を優先する体質が背景にあると指摘した。経営陣の現場に関与する姿勢が弱く、本社に不信感を持つ現場との情報共有も乏しかった。それが長期にわたる不正の放置につながった。企業風土や緩い統治体制を根本から立て直せるかが問われている・・・

・・・ある従業員は調査委員会の聞き取りに対し、不正検査の問題を報告しても「『それでは、あなたたちで改善してね』と言われるだけ」と回答。「改善を提案すると、言い出した者がとりまとめになり、業務量を調整してもらえず、単純に仕事が増える」との声もあった。「是正が現場に丸投げ」されるため、現場は本社への不信感を募らせた。本社と現場の間で断絶が起き、不正が長期間見過ごされてきた。
鉄道向けの空調装置や空気圧縮機で検査不正が発覚した長崎製作所(長崎県時津町)。不正について「相当数の従業員が認識していた」が、それを正そうとする機運は出てこなかった。ある従業員は「国内顧客は細かいことを言わないで任せてくれる」と打ち明けた。現場は「下手に突っ込むと生産が成り立たなくなる」と自分たちの論理を優先した・・・
・・・現場で問題を認識しても、情報は本社に共有されなかった。内部通報制度もあったが「匿名と言いながら、通報者をあぶり出すのではないか」と現場は疑心暗鬼になった・・・

詳しくは、記事をお読みください。記事には「役員は関与していなかった」と書かれていますが、それは免罪符にはなりません。部下が法令違反をしていながら、それを知らなかったのですから。中間管理職は板挟みになって、悩んだでしょうね。
このような事態は、どの職場でも起きる可能性があります。多くの組織で「細かい実務は部下に任せる」上司が良い上司と思われてきました。仕事がうまく回り、部下もやりがいを持って仕事をしていれば、これはよいことです。
ところが、部下が困っているのに上司が知らない組織は、悪い組織です。上司が、管理職の仕事をしていないのです。また、部下が声を上げられないのは、そのような職場にしている上司の責任です。

私の心配は、役所がそのような状態になっていないかです。新しい政策を考える場合は、上司も一緒になって進めますから、この心配はありません。問題は、過去から引き継いでいる「定例業務」「日常業務」です。調査統計などが当たります。このような業務は、過去から引き継いでいる、職員が前任者か引き継いでやっている、そして上級職でなく中級職や初級職がやっていたことから、課長がしっかり把握していないことが予想されます。まさに「関与していない」のです。
担当職員は、「前任者もやってきたことだから」と前例通りに処理します。また、それが期待されます。ところが、そのような事務が次々と積み重なって、大変な労力を割いています。
見直しをしようとしても、そのために仕事が増えるのです。また、新しい政策をつくると評価されますが、業務の簡素化はさほど評価されません。それでは、簡素化に取り組む意欲はわきません。