カテゴリーアーカイブ:人生の達人

オールド・ボーイズ・ネットワーク

2022年7月15日   岡本全勝

7月4日の日経新聞女性欄に「男性向き合う「閉鎖的人脈」」が載っていました。

・・・女性のキャリアアップを阻む壁の1つとして指摘されるのが「オールド・ボーイズ・ネットワーク(OBN)」。男性中心の組織が作り上げてきた独特の仕事の進め方や人間関係を指す言葉だ。近年はイノベーションを阻むものとしても見直す機運が高まっている。男性が中心となりこのOBNを考えたり、他の人に知らせたりする取り組みも広がってきた。

「女性活躍推進の阻害要因となっているのは大きく3つ。1つめが将来像が見えないこと、2つめは仕事と家事・育児の両立。そして実は1番大きい壁が、オールド・ボーイズ・ネットワークです」。企業の女性活躍を支援するJ-Win(東京・千代田)会長理事の内永ゆか子さんは6月上旬、会場とオンラインで集まった70人ほどの男性の前で協調した。
OBNとは、男性同士の独特の文化や目に見えない約束事、人間関係のこと。海外発祥の言葉で、その閉鎖性から米国などでも女性の活躍を阻む要因といわれてきた。国内では例えば「男性同士の雑談やコネ・人脈で物事が進む」「たばこ部屋・飲み会・ゴルフでの話が決定事項になる」といったことがあげられる・・・

最善の策と次善の策

2022年7月12日   岡本全勝

連載「公共を創る」で、日本人の政治に関する意識、特に政治を「汚いもの」と見る通念について書きました。理想を求める人や原理原則にこだわる人は、妥協を汚いものと見るのです。「潔くない」とです。「第120回 社会と政府ー政治への嫌悪感とゼロリスク信仰」。それに関連してです。

「最善の策だけど実現しそうにない案」と「次善の策だけど実現しそうな案」がある場合に、どちらを取るか。
理想をいう人は、前者を主張します。でも、実現しません。もちろん、誰だって理想を実現したいです。しかし、実現しないなら、何もしないことと同じです。
行政の世界でも、しばしばこのような職員がいます。ある人の案について、理想像を元に欠点を指摘します。まことにごもっともですが、その場合には解決策を提示してくれないと、前に進みません。

理想を求めつつ、今回はひとまず次善の策で妥協することも必要です。それに反対して理想を求める人には、「では、理想を実現するために、何をしましょうか」と聞いてください。

女性社員の育成

2022年7月6日   岡本全勝

日経新聞「私の履歴書」、矢野龍・住友林業最高顧問、6月26日の「女性活躍 立ち遅れ挽回へ意識改革 総合職採用開始、抜てき人事も」から。

・・・話が前後するが、社長になって6年目の2004年に女性の業務企画職(一般に言う総合職)の採用を始めた。大企業ではずいぶん遅い方ではなかっただろうか。すぐには人も育たないから、ほどなく幹部候補として女性の中途採用も始めた・・・
・・・僕が社長になる前の役員の時に、専門のコンサルタントを3カ月間会社に入れて女性活躍のレベルを評価してもらったことがあった。結果は散々で、要はこんな遅れた会社は見たことがないというのが結論であった・・・

・・・女性活躍を推進する要諦は抜てきであると経営者の集まりで教えてもらい、それもすぐに実行した。
男女平等に、持っている力量で評価すべきだという考えの人もいるが、優秀なのに、不利な処遇のなかで、外との折衝や組織の統率の経験をしてこられなかっただけなのであって、それは遅まきながらでもやってもらうほうが会社のためになる。やればすぐにできるようになるのだ。
会社は社会の常識やルールのなかに存在するもので、それを制約とうるさがるようでは経営者として失格ではあるまいか。話がそれたが僕は監査役が言うことも、天の声だと思って従った。総合職で女性を採用するようになって20年近くがたち、それぞれに力を付けていて頼もしい。もう少ししたら、総合職採用の人たちも役員の年代になってくる。会社をどう変えてくれるか、本当に楽しみだ・・・
支店の本部長の接待マニュアル

支店の「本部長の接待マニュアル」

2022年6月29日   岡本全勝

日経新聞私の履歴書、6月は矢野龍・住友林業最高顧問です。21日の「住宅本部長 抜き打ちで展示場を視察」から。

・・・僕が専務時代の1998年、住宅の業界誌に販売が低迷を続ける住友林業の体たらくを手ひどく批判されたことがあった。僕は担当外だったがこれを読んで怒りに体が震えるようであった。業界の「負け犬」呼ばわりなのだ。
僕は業界誌を3月の取締役会に持っていって「こんなことを書かれて悔しくないんですか。低迷の理由として1番目に、リーダーシップ不足と書いてある。まずは我々役員が猛反省し、早急に立て直しの対策をたて、実行に移すべきです」と訴えた。
すると5月1日付で住宅本部長の辞令が出た。なら君がやれとなったのだ。

辞令当日は早速、横浜の住宅展示場に行き、現場を激励した。しばらくして仙台に行ったときのことだ。新幹線から降りると現地の幹部以下がずらりと並んでホームで待っていた。それで言うには、今夜は宴席の用意があり、翌朝は朝礼の後、市内観光と展示場の視察をして、お土産に牛タンをもたせるという。
なんでそんなことをするのかと聞くと、全国の支店に本部長の接待マニュアルがあるそうだった。お客様の営業に費やすべきエネルギーを、社内のご機嫌とりに使って何になるのか。地酒、カラオケ、形だけの朝礼や視察、お土産など、即刻やめてもらった。

それ以降は予告していくのをやめ、抜き打ちでいきなり展示場に行くことにした。僕は本部長を務めた5月からの11カ月間、全国300カ所あまりの展示場をくまなく回った。僕はこの間、結果的に1日も休まなかった。神は現場に宿るというのが僕の考えだ。現場の話をじっくり聞き、ここを直してほしいという要望には即座に対応して、会社の仕組みに反映させた・・・

「ちゃんと勉強しないとこういう鉄工所で働かなあかんようになりますよ」2

2022年6月29日   岡本全勝

先日書いた「ちゃんと勉強しないとこういう鉄工所で働かなあかんようになりますよ」に、読者から反応がありました。
「『ちゃんと勉強しないとこういう鉄工所で』の記事を読んで驚きました。高岡の小さな鋳物工場から急成長した錫製品メーカー「能作」社長の能作克治氏からまったく同じ話を聞いたことがあったからです。
能作氏も、工場案内をしたときにある母親が子どもに言った「「よく見なさい。ちゃんと勉強しないと、あのおじさんみたいになるわよ」という言葉が成長の契機になったと言っておられます。」

これは、ウエッブ「ダイアモンド」の2019年9月12日の記事「カンブリア宮殿に出演!「能作」社長が初告白!」です。
・・・そんなある日、めずらしく「工場見学をしたい」という電話があった。小学校高学年の息子とその母親だった。工場を案内すると、その母親は、信じられないひと言を放った。
「よく見なさい。ちゃんと勉強しないと、あのおじさんみたいになるわよ」
その瞬間、能作は凍りついた。全身から悔しさがこみ上げてきた。同時に、「鋳物職人の地位を絶対に取り戻す」と誓った。そこからの能作はすごかった・・・

日本社会の、汗を流すこと(工場労働や農業など)への忌避、事務職への憧れという通念がこの背景にあるようです。
経済成長期に、農村を離れ勤め人になるという大移動が起こりました。そしてさらに、工場などで働くブルーワーカーより、事務室で働くホワイトカラーへのあこがれが強くなりました。現在でも、工場労働や農業、介護職などは人手不足ですが、事務職は求職者がたくさんいます。給料などの差もありますが、それだけでなく通念が影響していると思われます。
とはいえ、私も事務職を選びました。