カテゴリーアーカイブ:人生の達人

経営者の謝罪会見

2023年1月25日   岡本全勝

1月17日の読売新聞解説欄に「トップの陳謝 「火に油」注意」が載っていました。

・・・不祥事やトラブルを起こした企業が行う「謝罪会見」。昨年だけでも三菱電機の検査不正やKDDIの通信障害などで、経営トップが頭を下げる光景が繰り返された。そもそも企業はなぜ謝るのだろうか。

「お客様や関係者の皆様に多大なるご心配とご迷惑をおかけしておりますことを深くおわび申し上げます」
三菱電機の漆間啓社長は昨年10月、鉄道車両向け製品などの不正検査問題を巡り、現旧役員の処分を発表した。謝罪会見では、まず役員がこうした「口上」を述べ、深々と頭を下げるのがお決まりのシーンだ。
組織改革などの「再発防止策」がついてくるのもお約束。社長は「しっかりやっていく」と強調したが、2021年に不正が発覚してから五月雨式に新たな問題が出ている。企業風土を変えられるかは疑問が残った・・・

・・・東北大の増沢隆太特任教授によると、企業の謝罪会見が多くなったのは1990年代後半。それ以前は不祥事を起こしても、世間に「謝罪する」というよりは記者に「説明する」という側面が強かった。
変化の背景には、インターネットの普及があるという。ネット掲示板やSNSで「個人の正義感や、足を引っ張ろうという感情の発信が容易になった」。企業は従来以上に世論に配慮し、会見を開くようになった。
その結果、会見は「劇場化」していく・・・

詳しくは原文を読んでいただくとして、2000年の雪印乳業・集団食中毒事件、2007年の船場吉兆・ささやき女将などが紹介されています。若い人は知らないでしょうね。
元「お詫びのプロ」より。「お詫びの仕方・形も大切

プロの経営者のいない日本

2023年1月25日   岡本全勝

1月13日の日経新聞経済教室、久保克行・早稲田大学教授の「企業トップのスキルを問う 経営者の市場を確立せよ」から。

・・・まず、当然のことながら上場企業の経営者には、経営陣に参画する時点で実質的な経営スキルを保有していることが求められる。「実質的な経営スキルを保有している」ということの解釈は様々だが、一つの考え方は、過去に企業経営の経験があるかどうかだろう。
現在の大企業トップは、難易度の高い多くの意思決定が求められる。ふさわしい経験や能力を持つ人が経営者に就くことは、その企業だけではなく社会的にも望ましいといえよう。
ここで疑問が浮かぶ。そもそも日本の経営者は就任前に経営者としてのトレーニングをどの程度受けているのか、言い換えると経営スキルをどの程度保有しているのだろうか・・・

・・・図は2つの指標を示している。一つは「資本関係のない他の上場企業で経営の経験がある経営者」の割合、もう一つは、「資本関係の有無を問わず他の上場企業で経営の経験がある経営者」の割合である。前者が真の意味で経営のプロフェッショナルを示す指標と考えられる。なお、ここでは社長・最高経営責任者(CEO)などの肩書を持つ役員を経営者とした。また非上場・海外企業での経営経験は集計から除外した。
結果は驚くべきものだった。一言で言うと、日本では狭い意味での経営のプロ、すなわち資本関係のない他の上場企業で経営の経験をした経営者によって経営される企業は、全くと言っていいほど存在しないということである・・・

・・・現時点で、経営者の労働市場が機能していない理由の一つは、諸外国と比較して日本の経営者が概して高齢であり、退職後も企業や団体の様々な役職に就いていることがある・・・

オンライン会議の機能と限界

2023年1月24日   岡本全勝

先の日曜日の午前中、オンライン会議に参加しました。ある学術出版について、執筆者と編集者による打ち合わせです。私も、そのうちの1章を分担しています。
この企画が昨年春に始まって以来、様々なやりとりは、電子メールでの連絡と、オンライン会議を組み合わせて行われています。執筆の際の形式などそろえるべき要素は編者から指示があり、執筆者はそれに従って分担執筆します。とはいえ、進めていくうちに、相互に調整をとらなければならないこと、統一した方がよいことが出てきます。そのための、オンライン会議でした。
執筆者が20人を超えます。この人たちが集まるのは、かなり難しいことです。各地から集まるとなると、時間もかかります。それを考えると、自宅から参加できるのは、便利なものです。

参加して、便利なものだと思いつつ、違ったことを考えていました。
参加者は、著名な学者さんたちです。久しぶりにお目にかかる方や、初めてお目にかかる方もおられます。会議が始まる前に、簡単な挨拶はできるのですが、それ以上はできません。
集まっての会議の「効用」は、そのような人たちと挨拶を交わすこと、雑談ができることです。そして、気になっていることを相談したり。親しくなるということは、そういうことですよね。場合によっては、会議後に席を移して話すこと、食事に行くこともあります。

毎年秋にニューヨークで国連総会が開かれ、都合がつく限り総理が出席されます。ところで、総会では各国の代表が入れ替わり、それぞれ主張を述べるだけです。他の国の代表はほぼ出席しておらず、各国の外交官が座って聞いています。それはそれなりに意義はあるのですが、これがどれだけの効果があるのか疑問に思うこともあります。それだけなら、ビデオでの出席と同じです。
ところが、国連総会に各国首脳が出席する意義は、本会議だけではなく、その前後に開かれるいくつもの各国首脳同士の1対1の会議が重要です。これを個別に行おうとすると、日程の調整や各国間の移動など、大変な労力が必要になります。会合に集まるというのは、そのような付随機能があるのです。

あうんの呼吸は上司の甘え

2023年1月20日   岡本全勝

1月11日の日経新聞「私の課長時代」は、柘植一郎・伊藤忠テクノソリューションズ社長でした。

・・・「日本だけでの仕事は面白くない」という気持ちになり、商社を志望しました。
配属は紙パルプ事業で、北米やオーストラリア、北欧から原料を輸入する担当でした。93年にニューヨークが拠点の子会社に出向。米国で初めて課長になり、3人の部下を抱えます。
北米や南米から紙の原料となるパルプを調達し、日本や米国の製紙会社に売る役割でした。当時はパルプの引き合いが強く、売上高の目標達成は難しくありません。しかし異文化でのチーム運営に苦労しました。部下の米国人男性は優秀でしたが「あうんの呼吸」が全く通じません。

ある日、日本から製紙会社の経営者が来ることになり、部下に懇談の飲食店の予約を頼みました。大切な顧客で、「予算はいくらでもいい」と依頼。しかし部下は「ノーリミットなんてありえない」と口にし、困った表情を浮かべます。信頼して任せたつもりでしたが、適正な単価や食の好みなど、具体的な指示を求められました。
チームの目標設定も同じです。例えば私が「あの代理店と何が何でも取引しよう」と命じても、部下からは「なぜその企業なのか」「その新規取引でシェアは何%拡大するのか」などと質問攻めにあいます。日本人同士では少ない言葉でも、チーム一丸で目標に向かう経験が多かったです。しかし米国駐在で、それは「上司の甘えだ」と気づきました。世界の誰にでも伝わるように、明確かつ論理的な指示の方法を鍛える場になりました・・・

飲めない人もいる

2023年1月4日   岡本全勝

12月25日の朝日新聞投書欄「男のひといき」、73歳の方の「下戸にはいい時代」から。

・・・コロナ禍でなければ忘年会たけなわであったろうこの季節、酒を飲めない私にとっては苦痛でしかなかった。ゼネコンに入社して数年目、四国支店にいたときの出来事だ。
現場トップのあいさつに続く乾杯を、グラスに口をつけるだけで済ませた私は食べることに専念していた。しばらくすると、右隣の先輩がビールを勧めてきた。
私が「すみません、飲めないんですよ」と断ると、昔からの恒例のフレーズ、「俺の酒が飲めんのか」と怒り出した。
するとそれを見ていた左隣の先輩が、「飲めん者に無理に飲ますことはないやろう」と意見したことで、先輩同士の衝突に発展してしまった。幸い殴り合いにこそならなかったものの、口論は5分以上続いただろうか。
原因となった私は10歳ほど年上の先輩2人に挟まれなすすべもなく、ただおろおろするしかなかった。

今から半世紀も前、会社の飲み会を拒むことなどとてもできなかった。しかし今はできるらしい。酒席への参加を強要する上司はパワハラで訴えられる可能性さえあるとか。
私みたいな下戸にとっては実にいい時代になったものである・・・