カテゴリーアーカイブ:人生の達人

オンライン会議の機能と限界

2023年1月24日   岡本全勝

先の日曜日の午前中、オンライン会議に参加しました。ある学術出版について、執筆者と編集者による打ち合わせです。私も、そのうちの1章を分担しています。
この企画が昨年春に始まって以来、様々なやりとりは、電子メールでの連絡と、オンライン会議を組み合わせて行われています。執筆の際の形式などそろえるべき要素は編者から指示があり、執筆者はそれに従って分担執筆します。とはいえ、進めていくうちに、相互に調整をとらなければならないこと、統一した方がよいことが出てきます。そのための、オンライン会議でした。
執筆者が20人を超えます。この人たちが集まるのは、かなり難しいことです。各地から集まるとなると、時間もかかります。それを考えると、自宅から参加できるのは、便利なものです。

参加して、便利なものだと思いつつ、違ったことを考えていました。
参加者は、著名な学者さんたちです。久しぶりにお目にかかる方や、初めてお目にかかる方もおられます。会議が始まる前に、簡単な挨拶はできるのですが、それ以上はできません。
集まっての会議の「効用」は、そのような人たちと挨拶を交わすこと、雑談ができることです。そして、気になっていることを相談したり。親しくなるということは、そういうことですよね。場合によっては、会議後に席を移して話すこと、食事に行くこともあります。

毎年秋にニューヨークで国連総会が開かれ、都合がつく限り総理が出席されます。ところで、総会では各国の代表が入れ替わり、それぞれ主張を述べるだけです。他の国の代表はほぼ出席しておらず、各国の外交官が座って聞いています。それはそれなりに意義はあるのですが、これがどれだけの効果があるのか疑問に思うこともあります。それだけなら、ビデオでの出席と同じです。
ところが、国連総会に各国首脳が出席する意義は、本会議だけではなく、その前後に開かれるいくつもの各国首脳同士の1対1の会議が重要です。これを個別に行おうとすると、日程の調整や各国間の移動など、大変な労力が必要になります。会合に集まるというのは、そのような付随機能があるのです。

あうんの呼吸は上司の甘え

2023年1月20日   岡本全勝

1月11日の日経新聞「私の課長時代」は、柘植一郎・伊藤忠テクノソリューションズ社長でした。

・・・「日本だけでの仕事は面白くない」という気持ちになり、商社を志望しました。
配属は紙パルプ事業で、北米やオーストラリア、北欧から原料を輸入する担当でした。93年にニューヨークが拠点の子会社に出向。米国で初めて課長になり、3人の部下を抱えます。
北米や南米から紙の原料となるパルプを調達し、日本や米国の製紙会社に売る役割でした。当時はパルプの引き合いが強く、売上高の目標達成は難しくありません。しかし異文化でのチーム運営に苦労しました。部下の米国人男性は優秀でしたが「あうんの呼吸」が全く通じません。

ある日、日本から製紙会社の経営者が来ることになり、部下に懇談の飲食店の予約を頼みました。大切な顧客で、「予算はいくらでもいい」と依頼。しかし部下は「ノーリミットなんてありえない」と口にし、困った表情を浮かべます。信頼して任せたつもりでしたが、適正な単価や食の好みなど、具体的な指示を求められました。
チームの目標設定も同じです。例えば私が「あの代理店と何が何でも取引しよう」と命じても、部下からは「なぜその企業なのか」「その新規取引でシェアは何%拡大するのか」などと質問攻めにあいます。日本人同士では少ない言葉でも、チーム一丸で目標に向かう経験が多かったです。しかし米国駐在で、それは「上司の甘えだ」と気づきました。世界の誰にでも伝わるように、明確かつ論理的な指示の方法を鍛える場になりました・・・

飲めない人もいる

2023年1月4日   岡本全勝

12月25日の朝日新聞投書欄「男のひといき」、73歳の方の「下戸にはいい時代」から。

・・・コロナ禍でなければ忘年会たけなわであったろうこの季節、酒を飲めない私にとっては苦痛でしかなかった。ゼネコンに入社して数年目、四国支店にいたときの出来事だ。
現場トップのあいさつに続く乾杯を、グラスに口をつけるだけで済ませた私は食べることに専念していた。しばらくすると、右隣の先輩がビールを勧めてきた。
私が「すみません、飲めないんですよ」と断ると、昔からの恒例のフレーズ、「俺の酒が飲めんのか」と怒り出した。
するとそれを見ていた左隣の先輩が、「飲めん者に無理に飲ますことはないやろう」と意見したことで、先輩同士の衝突に発展してしまった。幸い殴り合いにこそならなかったものの、口論は5分以上続いただろうか。
原因となった私は10歳ほど年上の先輩2人に挟まれなすすべもなく、ただおろおろするしかなかった。

今から半世紀も前、会社の飲み会を拒むことなどとてもできなかった。しかし今はできるらしい。酒席への参加を強要する上司はパワハラで訴えられる可能性さえあるとか。
私みたいな下戸にとっては実にいい時代になったものである・・・

独占禁止法違反の自主申告

2023年1月4日   岡本全勝

12月16日の日経新聞に「カルテル「申告制」の威力 処分減免、関電は課徴金ゼロ」が載っていました。
・・・企業向けの電力供給を巡り、公正取引委員会が大手電力3社に独占禁止法違反(不当な取引制限)で計約1000億円の課徴金案を通知した。関西電力が全額免除の一方で、売り上げ規模が最も小さい中国電力は課徴金で過去最大の707億円。結果的に明暗を分けたのが、違反を自主申告して課徴金の減免を受ける「リーニエンシー」制度だった。

「うちは荒っぽいことをやめるので、お互いに荒らさずやりましょう」。関係者によると、関電のトップ級の役員らが2018年秋ごろ、中国電、中部電力、九州電力の3社の役員らと順次協議。それぞれに「相互不可侵」を持ちかけたことが発端となった。
各社と個別に合意を結んだ関電は、違反申告への対応も素早かった。19年に金品受領問題が発覚し、コンプライアンス(法令順守)の徹底が求められていた時期、自社が主導したカルテルを公取委に打ち明けた。申請順位は1位で、課徴金は全額免除となる。
「納得がいかない」。他の電力会社の幹部からは自らのカルテルを棚に上げた恨み節も漏れる。関電の売上高は2兆8000億円を超え、4社中で最大。独禁法に詳しい弁護士は「リーニエンシーが認められなければ課徴金は関電1社で1000億円を超えた可能性がある」とみる。・・・

・・・リーニエンシーの導入は06年。当初は「日本になじまない密告」といわれたが、22年3月までに適用は延べ401社に上った。
協力度合いの評価基準が不透明などの課題はあるが、制度の浸透により、違反を覚知した経営陣は早期の対応を迫られることとなった。過去にカルテルを認定された企業の経営陣が、制度を利用しなかったとして株主代表訴訟を起こされ、役員らが5億円超を会社に支払うことで和解した例もある。対応を怠れば行政処分に訴訟リスクが加わる・・・

カルテルを持ちかけた関西電力が課徴金を免除され、応じた中国電力が707億円もの課徴金をかけられるのは、何かしら変な気がしますが。

私は、規範遵守(コンプライアンス)の講義に、この話題(違反の自主申告、内部通報)を使っています。違反を起こさないことと、それを見つけた場合の対処です。
法令違反はやってはいけないことですが、根絶は無理でしょう。それを見つけたとき、気がついたときに、どのように振る舞うべきか。誰しも「ばれなければよい」と思うのではないでしょうか。ところが、ばれるのですよね。すると、傷口はもっと広がります。そして、管理職の責任はさらに重く問われることになります。「受動的な責任と能動的な責任」「責任をとる方法

予定と振り返り

2022年12月26日   岡本全勝

手帳と日記帳はよく似ていますが、手帳は予定を書くもので、日記は終わったことを書きます。
多くの人は手帳を持っていても、日記帳をつけていることは少ないのではないでしょうか。手帳には予定を書き込み、しばしば確認しますが、過ぎたことを振り返ることはあまりしませんよね。

毎日忙しい生活をしていると、充実はしているのですが、記憶に残らない時間が過ぎていきます。仕事などの経験や失敗は、そのつど記憶に残るのですが、人生とその意味は自分で考えないと、何も残さずに過ぎてしまいます。
予定を手帳に書くことは時間を埋めることであっても、その意味は書かれません。日記帳に出来事を書いただけでは、同じです。ただし日記帳は、出来事とともに考えたことを書くと、振り返ることができます。歴史学で年表を見ても、その時代の出来事はわかっても、その時代の意味が読めないことと同じです。「年代記と歴史学との違い

「酔生夢死」という言葉を、中学で先生に教えてもらいました。社会人になってから、自分の人生、生活に意義を見いだそうと考えてきました。
時には生活を振り返って、自分の暮らしに「意義」を見いだしたいものです。仕事、家族、趣味、勉強、小さな親切や人の役に立ったこと・・・。
毎日行うことは無理です。1年は、ちょうどよい区切りです。今年は何をしたか、年末はそれを振り返る良い機会です。そう思って、このホームページでは、年末に3回に分けて我が一年を振り返っています。そんなにたいしたことはやっていないのですが、「今年はこんな年だった」と思うことに価値があると思います。