カテゴリーアーカイブ:人生の達人

相手との関係を作る脳の力

2013年1月16日   岡本全勝

千住淳著『社会脳の発達』(2012年、東大出版会)を読みました。出張の新幹線と宿は、本を読むにはありがたい時間です。
ヒトは、他人がいなければ生きていけない動物です。「社会」がなければ生活できない動物です。その社会行動を、脳神経から研究するのが、社会脳研究、ソーシャル・ブレインズ研究です。
他人と共生する際に必要な能力、それは相手の心を読むことだそうです。相手が何を考えていて、何をするのかを予測します。なるほど。
その際には、アイ・コンタクトや相手の視線がどこを向くかを読むことが、重要であること、自閉症者は相手の心を読むことが不得手であることなどが、実験によって示されています。いくつもなるほどと思うとともに、まだまだわからないことが多いこともわかります。
普段の生活でも、相手の心を読むことは重要ですよね。その先を読んで、当方の次の発言や行動を考えます。それが、円滑な会話や良好な関係を生みます。もっとも、間違った先読みをして、失敗することも多いですが。

かつて読んだ、藤井直敬著『ソーシャルブレインズ』(2010年、講談社現代新書)を思い出しました。手元のメモには、次のようなくだりが、書き留めてあります。
喜びも、他者との関係性の中で感じるもので、モノによって感じるものではない。
赤ちゃんは、他者との関係性がないと死ぬ場合がある。
意思決定とは、たくさんの可能性を絞り込むプロセス。ルールは、社会からトップダウン的に与えられるだけではなく、各個人がそれを受け入れ、咀嚼して脳内に取り込むことで成り立っている。
ルールは、社会というシステムとその構成要素である私たちの間で起きる相互作用によって維持、実行されている。各人が、ルールを受け入れる理由は、認知コストを少なくできるから。無限の可能性から選ぶというコストを、選択肢を狭めることで、少なくする。そしてそれは、社会の安定性を増す。
今回この記事を書くに当たって、確認しようとしたら、本が見当たりません。本棚にないということは、床に積み上げた山の中に埋もれているということでしょう。捜索は断念しました(反省)。

危ないと子をしかるより手を引こう

2013年1月12日   岡本全勝

交通安全標語に、「危ないと子をしかるより手を引こう」というのがあります。昭和51年の最優秀作品だそうです。これは子ども(親)向けの標語としてだけでなく、職場の上司にとって有効な標語だと気づきました。
部下が失敗を犯した場合、あるいは期待しただけのことを達成しなかった場合に、しかることは良くないです。詳しくは、『明るい係長講座』をお読みください。
まだ経験不足の部下や、少し荷が重いかなという仕事を命じた場合、目標を達成できなかったなら、それはほぼ上司の責任です。失敗してからしかるより、事前に適切な助言をすべきでしょう。「やっぱり、ダメだったか」は、部下が悪いのではなく、上司が悪い。できないことを期待した、あなたが悪いのです。
初めて、我が子をお使いに行かせる場合。あなたは、どうしますか。じっくりと教えて、場合によっては後ろから隠れてついて行きますよね。

悪魔の代理人

2012年12月27日   岡本全勝

先日紹介した、齋藤ウイリアム浩幸著『ザ・チーム』に、次のような記述があります。筆者がアメリカの高校で、ディベートの訓練に励んだときのことです。
・・ディベートは、きちんと筋道立てて自分の意見を述べ、品位を保ちながら静かな言葉で、相手を説得することだ・・試合はチーム戦で行われる。弁舌をふるう人、資料を探す人、戦略を練る人がチームを組む・・
議論に不可欠なのが、「悪魔の代理人」(Devil’s Advocacy)と呼ばれる役割だ。議論にあえて反対の立場で質問し、相手の論理の弱点を突く。もともとはローマ・カトリック教会で教義を定めたり改定するとき、誰かを聖人に列するとき、意図的にその教義やその人の業績に反対する「悪魔」の立場をとって、教義を正当化する主張の隙をチェックしたり、より強い議論に支えられた教義に鍛え上げる、あるいは聖人になるためのより説得力ある理由を見つける役割だ。
いまでもコンサルタント業界などでは、大事なプレゼンテーション前に中身をチェックするとき、悪魔の代理人が指名されている・・(p222~)
・・ドラッカーは、異論の重要性を指摘している。GM中興の祖であるアルフレッド・スローンについて述べたくだりを引用する。
「スローンは、GMの最高レベルの会議では、『それではこの決定に関しては、意見が完全に一致していると了解してよろしいでしょうか』と聞き、出席者全員がうなずくときには、 『それでは、この問題について、異なる見解を引き出し、この決定がいかなる意味をもつかについて、もっと理解するための時間が必要と思われるので、検討を次回まで延期することを提案したい』といったそうである」(『経営者の条件』ダイヤモンド社)・・(p226)

私も時々、部下が持ってくる案について、あえて「こんな考えの人が質問したら、どう答えるの?」と、いろんな角度から質問を投げて、悪魔の代理人をやっています。国会質問や記者会見では、こちらの思ったような質問は出ません。こちらが困るような質問を、想定しておかなければならないのです。部下職員は、「いやな上司」と思っているでしょうね(苦笑)。
想定問答を作る際に、部下職員は、答えやすい問を作ることは、「お詫びの仕方」(2007年2月1日の記事)でも指摘しました。
想定問答を打ち合わせているときに、2種類の上司や同僚がいます。1人は、原案について、その答弁案を深掘りする人。一番狭い場合は、文章を練る人です。
もう1人は、その答弁案を離れて、違った角度から問題点を指摘する人です。例えば「そもそも、そんな質問は出ませんよ。出るとしたら、××の角度でしょう」とか「この答弁をする時点では、前提条件が変わっているはずです・・」とかです。前者も重要ですが、後者はもっと重要です。

リーダーに求められる資質

2012年11月27日   岡本全勝

11月26日の日経新聞グローバルオピニオン、ダミアン・オブライエン氏(スイスの人材コンサルティング会長)の発言「企業リーダー早期に選べ」から。
・・欧米には「CEO(最高経営責任者)はユニークアニマル」という表現がある。企業に限らないが、組織のトップに立つ人間には、他のポストとは違う独特の資質や姿勢が必要だ。あえて言えば、CEOに向いている人と向いていない人がいる。
例えば、CEOは底抜けに楽観的な性格の持ち主であったほうが良い。どんな難局に臨んでも、「何とかなる」という前向きな気持ちを失わず、組織を引っ張らないといけないからだ。異質な人材や異質な意見を受け入れる度量の広さも必要だ。多様な人材をうまく生かすことは、企業がグローバル競争するうえで欠かせない。
自分を犠牲にしてでも、組織に尽くすメンタリティも求められる。リーダーに私心があってはならない。さらには孤独に耐えて決断を下す心の強さも必要だ・・
日本企業は改革を進めるとは言うが、人事システムのような内部慣行はあまり変化していない・・だが、現状がうまくいっていないのなら、従来のやり方は変えないといけない。米欧の企業経営は、過去20年で大きく進化した。次は日本が変わる番である・・
詳しくは、原文をお読みください。

国会答弁案作り、その3

2012年11月18日   岡本全勝

「国会答弁案作り」の記事に、何人かの人から、批判が来ました。
Aさん(自治体職員)
「私の職場では、押し付け合いに勝利した管理職が、『できる管理職』と称されるようです・・」
Bさん(国家公務員)
「国会答弁を引き受けても、何もメリットはありません。特に各省協議が必要な場合は、面倒だし、明け方までかかるので、いやです。がんばって答弁を書いても、上司は評価してくれません・・」など。
「いやな仕事を断る上司が、良い上司」「面倒なだけで評価されない仕事なら、しない方が『賢い』公務員」。
職員から見ると、そう見えるのでしょうね。この状態を打破するには、面倒な仕事を引き受ける職員を、正当に評価することが必要だということですね。
プロ野球で、送りバントを成功させた選手を、年俸査定の際に評価するのと、同様な仕組みが必要でしょうか。