カテゴリーアーカイブ:人生の達人

働き方の多様化、週休3日

2025年5月19日   岡本全勝

4月28日の日経新聞に「週休3日選べる世の中に」が載っていました。
・・・週休3日をうたう企業や自治体が少しずつ出てきているが、社会に定着しているとはいえない。そこで、決意も込めて社名にした。
「株式会社週休3日」
永井宏明さん(48)が代表を務める、人材紹介などを手掛ける会社だ。求職者を週休3日で勤務可能な会社にマッチングしたり、働き方の見直しを進める経営者を支援したりしている。
仕事と家庭、趣味のバランスに苦労した経験に加え、「なぜ多くの会社が週休2日なのか」という疑問が、起業を後押しした・・・

ご本人は、週1日勤務や4日勤務などを経験しました。
・・・施設長に就くと職員の人手不足に直面した。そのとき思い出したのが、かつての自身の働き方だ。「週5日働けず、あきらめている人に届くかも」。募集の際に「週3日休めます」と掲げると、数えるほどだった応募が次第に増えた。人手が確保され職員も明るくなったような気がした。
ひとり親世帯や、介護などに向き合う人からの応募が多かった。家庭環境が落ち着くと「週休2日にしてください」と申し出る人もいた。元から在籍していた社員も、余裕がないときは週休3日に切り替え、離職率は大きく下がった・・・

・・・持続可能な働き方の仕組みと確信した。16年に退職し、「株式会社週休3日」を起業した。
滑り出しは大赤字だった。医療機関や福祉施設などと提携したが「週休2日で働いてきた今の従業員が『不公平』と強く反対している」と断られ、紹介先がゼロに。資金が底をつきかけた。
そんなとき、調剤薬局から相談があった。薬剤師が採用できず、従業員が疲弊しているという。週休3日という働き方を打ち出していけば応募が増えると提案したところ、導入を決めてくれた。
地方の調剤薬局を中心に依頼が増え、今は薬剤師業界の人材紹介を柱に事業展開している・・・

週に何日働くか、また一日に何時間働くか、何時から何時まで働くか。一律に週休2日、8時半から17時までと決めつけず、多様な勤務形態があっても良いですよね。労働力不足の時代に、子育て中の夫婦や、一日中働くのはいやだという高齢者に適した勤務形態を用意して、労働参加してもらうのです。
画一的な「勤務」は、学校や企業などで普及しました。自営業などでは、比較的自由な勤務ができました。企業で画一的な勤務を強制できたのは、夫が働き妻が家庭を守るという性による分業だったからでしょう。学校でも、画一的な授業時間についていけない子どももいます。

事業の中止を提言する

2025年5月17日   岡本全勝

日経新聞私の履歴書、5月は、磯崎功典・キリンホールディングス会長です。5月13日の第12回「LAホテル事業 全日空との協業中止提言 損失回避へ役員を説得」から。日本を代表する大企業で、こんな状況なのですね。いえ、日本を代表する企業だからこそ、日本文化を反映しているのでしょう。詳しくは原文をお読みください。

・・・1991年。米国留学とミズーリ州での実地研修でホテルの経営を学んだ私が、直後に任命された仕事が「LAプロジェクト」だった。
キリンビールが米ロサンゼルスで進めていたホテル開発プロジェクトの担当となったのだが、採算的に無理のある計画だったので、駐在事務所の上司に中止を進言した。
「会社が決めたことなんだから、君は言われた通りホテルをつくって運営すればいいんだよ」と言われた・・・
・・・ホテル業を学んだ成果が早速生かせる仕事だ。計画を精査するとともに、事務所の目の前にある建設予定地に足を運び、「このホテルは成功するのか?」と自問自答しながら定点観測を繰り返した。総工費は200億円を超す見込みで、コンセプトは正しいのか、コストと収益のバランスはどうか、客室稼働率はどうか、いいスタッフが集まるか……。熟考した末、「中止した方がいい」と確信した。
冷戦が終わり、軍事産業が盛んだったカリフォルニアは不景気で、街にホームレスが溢(あふ)れていた時代。経営環境が激変したのに、まずは建設ありきで社内は進んでいた。

同じ事務所で働く上司が動いてくれないなら、私が本社に中止を提言するしかない。上司に了解を取り、当時はメールがなくFAXで送った。
担当役員が日本から飛んできた。困った表情で「経営会議で決まりメディアにも出たこと。全日空という相手もいるんだから無理を言うな。俺の立場にもなってくれ」。役員はそう言って帰国したが私は納得いかず、その後も本社にFAXを送り続けた。

キリンで一番ホテルを知っている私が、失敗することを分かっていながら見て見ぬふりをするわけにはいかない。建設がスタートすればもう戻れない。ホテル経営がいかに大変か、ミズーリ州の実地研修で身に染みている。米国は労働組合が強く、簡単に合理化できない。開業後に撤退となれば、膨大な損失がでるはずだ。会社が大変な重荷を背負うことが目に見えていた。
執拗に言い続けたからか、ついに担当役員が全日空側の幹部に見直しを提案した。すると思わぬ答えが返ってきたという。「実は我々もその言葉を待っていたんです。ホテル事業は難しく旅客事業に集中したい」。全日空側の本心としてはプロジェクトを中止したかったのだが、自らキリンを誘った手前、やめようと言い出せなかったようだ・・・

企業の配属ガチャ防止策

2025年5月7日   岡本全勝

4月1日の日経新聞に「配属ガチャ「外れ」は1割? 企業も配慮「希望出せた」6割」が載っていました。
・・・今春も多くの若者が新社会人としてスタートを切る。どの部署でどんな仕事を担当するか。不安と期待が入り交じる頃だろう。蓋を開けてみなくては分からない「配属ガチャ」は早期離職も誘発する。人手不足の昨今、新入社員の希望に耳を傾ける動きも広がる。
一昔前ならば初期配属の主導権は会社が握っていた。希望を聞くにしろ、事業戦略や各部署の欠員状況など会社側の思惑を優先し、新入社員を割り振った。だが最近は学生優位の売り手市場を反映し、会社の姿勢は変わった。24年春入社の社員を対象にした調査によれば、6割超が配属に関する希望を出せている。
実際の配属は59.9%が勤務地・配属先ともに希望通りで、どちらの希望も通らなかったのは5.6%にとどまる・・・
・・・ただコース別採用は企業には「諸刃の剣」だ。内定辞退や早期離職は防げるが、在学段階での専門性・適性の見極めは難しい。希望職種が偏ると優秀な人材を取りこぼすリスクもある。入社前に配属先を決めて本人に伝える企業は45.1%と半数以下だ・・・

4月2日には「新人定着へ成長後押し」が載っていました。
・・・主要企業が1日、入社式を開いた。学生優位の売り手市場を経て入社した新人の中には将来的なキャリアアップを見据えて転職意向を持つ人が一定数いる。各社は指導役となる上司や先輩社員に対し、新人の教育方法を伝授する講座などを開くほか、新人向けに成長意欲に応えるプログラムを用意して貴重な戦力の定着につなげる・・・
ヤクルト本社は新入社員が配属された部署で指導役を務める社員や課長などを対象にした研修を実施しました。

また、リクルートマネジメントソリューションズの調査では、新入社員が仕事で重視すること(複数回答)で最多は「成長」(32.2%)で、やりがい(14.0%)や金銭(11.1%)を上回っています。
この点は、私も共感します。駆け出し時代は、自分の能力も適性もわかりません。先輩たちを見て、我が身の未熟さを知る毎日でした。

野中郁次郎さん、外国への発信

2025年4月29日   岡本全勝

4月18日の日経新聞夕刊追想録は野中郁次郎さんの「経営とは生きざま」でした。

・・・野中氏といえば、「失敗の本質」や「知識創造企業」(いずれも共著)があまりにも有名だ。だが、もう一つ他の経営学者と違ったのは著書の外国語訳にこだわった点だ。
教壇に立ち始めた1970年代は日本の経営学も米研究の「解釈学」といわれていた。だが、日本にも暗黙知と呼ばれるものに裏打ちされた優れた知識創造の経営はあった。それを発信し続けた・・・

法学にしろ政治学にしろ、日本の社会科学の多くは、欧米の学問の「輸入業」でした。欧米への発信だけでなく、アジアへの発信もしてこなかったのではないでしょうか。

変わる終身雇用への備え

2025年4月28日   岡本全勝

4月5日の朝日新聞夕刊、広川進・法政大教授の「変わる終身雇用、必要な備えは」から。

・・・定年まで同じ会社で働き、老後は余生を楽しむ――。こんな人生を思い描いた人もいるのでは? でも、いまや終身雇用は崩れ、長寿社会のなかで老後の年金に不安が募るなど「定年まで」の時代は終わりつつある。会社をやめて次のステージに進んだり、定年後も働き続けたりするため、どんな備えが必要か。自らも40代で会社を辞め、臨床心理士になった法政大キャリアデザイン学部教授の広川進さん(65)に心構えを聞いた。

そもそも、大学を出て新卒入社した会社に「定年まで勤める」という働き方は本当にできなくなったのだろうか。
「いままでは、55歳になってキャリアの終盤で不本意な仕事になっても、あと数年我慢すれば定年まで勤めることができた。でも、これからは畑ちがいの仕事でかなりの期間、働くことも十分あり得ます」

企業は激しい競争にさらされ、すべての社員を安定して雇い続けることは難しい。
「言葉を濁さず、『このままだとあなたは社内では生き残れないかもしれません』と誠意をもって伝えるべきです。働く側も『会社が私を雇用し続けるメリットは』という視点を持たないといけない」

とくに1990年前後のバブル経済期に入社した人らが持つ「会社への根拠のない愛」に気をつけなければいけないという。
「超売り手市場で入社した世代。世の中が変わったのに『まだ会社は心変わりしていない』と現実を直視できない」
企業の研修などでは、そういう社員に「(会社もあなたを)愛しているけど、あなたの残り10年を保障するほどの体力がない」などと伝える・・・