カテゴリーアーカイブ:人生の達人

複数作業は能率2割低下

2025年6月15日   岡本全勝

5月24日の日経新聞別刷り「くらしの数字考」に「マルチタスクは能率2割低下 メモして脳に余白を」が載っていました。会社員も公務員も、同時に複数の仕事を処理しなければなりません。一つのことに集中できれば良いのですが。この記事は参考になります。全文をお読みください。

・・・職場などで、複数の作業に追われる「マルチタスク」に悩む人は多い。ひとりで複数のタスクを負う能力は現代の必須スキルと目されている。ただ、能率が2割ほど下がってしまうようだ。
そもそもマルチタスクとは何か。大阪大学大学院生命機能研究科准教授の渡辺慶さんは「ワーキングメモリー(作業記憶)という短時間情報を保持して、操作する認知能力と関連が深い」と話す。

古い記憶など様々な情報の中で、いま必要なものだけに注意のスポットライトを当ててアクセス可能にしておくのがワーキングメモリーだ。一度にアクセスできる状態にしておける情報の量がワーキングメモリーの容量。この範囲内で人は複数のタスクをこなしている。
脳科学が専門の明治大学理工学部専任教授、小野弓絵さんは「若い人もマルチタスクをすると平均2割程度、正答率が下がることがわかった」という。実験は渦巻きを描きながら足し算するというもので、2つの作業を同時に行う日常の場面に置き換えて考えられる。マルチタスクでは能率が2割ほど落ちるようだ。

このときの脳内の活動を観察すると、タスクを順調にこなせているときは左脳が中心的な役割を担い、右脳も連携して働いているが、タスクの負荷が高まると右脳の活動が活発になり、左右の連携がうまくいかなくなる様子が現れる。
「左脳は言語や論理を、右脳はイメージや感情などをつかさどるが、左脳だけで処理しきれず右脳に助けを求めるようになる」(小野さん)。だが、右脳はもともとの担当と異なる仕事のためできる量に限界がある。
徐々に能率が下がり、普段使わない右脳も駆使して処理しようとするフル回転状態になる。これがマルチタスクを完全に処理しきれずに頭がパンクしそうになっている時の様子だそうだ・・・

・・・避けがたいマルチタスクで頭がパンクしそうになったらどうしたらいいのか。
明治大の小野さんはメモを勧める。一度書き出せば、安心して忘れることができるからだ。「ワーキングメモリーの容量は限られていることを意識して、いっぱいになりそうだったら少し脇に置く」。意識的に脳に余白をつくることが肝心だ・・・

管理職はつらい、対処策

2025年6月14日   岡本全勝

5月27日の朝日新聞オピニオン欄「管理職はつらい?」、小林祐児・パーソル総合研究所主席研究員の「罰ゲーム化、抜け出そう」から。

・・・日本の管理職は「罰ゲーム化」しています。バブル崩壊以降の日本企業では組織のフラット化が進み、管理職が減って部下の人数が増えた。ダイバーシティーの推進により、男性正社員中心の職場に女性や非正規雇用の従業員が増えたことは、マネジメントを複雑にしました。
だめ押しとなったのが、パワハラ防止の法改正と働き方改革です。接し方に過敏にならざるを得ず、気軽な声かけすらためらう場面も増えました。働き方改革も効率化にはつながらず、「労働時間の削減」だけに焦点が当たってしまった。しかも対象は一般社員に限られ、管理職は“はみ出た仕事”を一手に担う形に。

ですが、これらは会社の外にある要因にすぎません。本当に問題なのは、外部環境が厳しくなった時、企業の内部の判断が、管理職の負荷を上げる方にばかり向かうことです。
日本の経営者は「管理職を鍛え上げればなんとかなる」という発想で、研修ばかり増やしていく。この発想は、「管理職が経営の要」という期待感と一体です。「耐えてこそ真のリーダーが生まれる」という言説もふりまかれています。

すぐにできることはいくつかあるでしょう。例えば、「管理職だけ」ではなくメンバーにも研修を受けさせる。組織を動かす時にメンバーも同じことを知っている方がスムーズです。社内のつながりを生む仕掛けを作ることも大切です。会議で他の管理職にダメ出ししたり、「そっちは大変だね」とひとごとだったりするより、協力し合える方がいいですよね。
もう一つ提案したいのは、「鍛え上げる」対象を早めに絞ることです。20代のうちにエリート層を選抜し特別な経験や研修をする一方、他の管理職は定期的に部署や業務が変わるジョブローテーションの幅を狭くし、専門性を磨いてもらうのです。

「絞り込む」提案をすると必ず「選ばれなかった者のモチベーションが下がる」と言われますが、おかしいですよね。これまで多くの女性は管理職の道を早々に諦めてきました。どうして男性が諦めるようになったとたんにケアしようとするのでしょうか・・・

成功には千人の父親がいる。だが、失敗は孤児である。

2025年6月11日   岡本全勝

うろ覚えだったのですが、「成功するとたくさんの親が出てくるが、失敗するといなくなる」という表現を思い出しました。正確には何かと思って、インターネットで探したら、ありました。
アメリカのケネディ大統領の言葉だったのですね。
”Victory has a thousand fathers but defeat is an orphan.”
「成功には千人の父親がいる。だが、失敗は孤児である。」

だとすると、A・M・シュレジンガー著『ケネディ ― 栄光と苦悩の一千日』(1966年、河出書房新社。中屋健一訳)に出てくるのではないかと、探してみました。この本は、大学に入ってすぐの頃(1973年)、わくわくしながら読みました。ケネディ大統領暗殺は1963年で、まだつい最近のことでした。これは本棚の分かりやすいところに置いてあるので、すぐに取り出せました。
たぶん、ピッグス湾事件の失敗のあとだろうと当たりをつけて斜め読みすると、出てきました。上巻の304ページ下段でした。ただし、次のように訳されています。
・・・一方大統領は国務省の講堂で行われる記者会見へ出かけていった。ここで彼は、内幕の暴露ものを排斥した。「勝利には500人もの父が名乗りを上げるが、敗北は孤児である、という古い諺があります」(後になって私は、この適切な評言をどこから引用したのか、彼にたずねてみた。彼は驚いた様子で、あいまいにこういった。「さあ、知らんね。ただの古い諺だよ※」)・・・

英語版も、当たってみました。私が持っているのはペーパーバックで、Arthur M. Schlesinger Jr. 「A Thousand Days: John F. Kennedy in the White House」(2002年、Mariner Books)です。289ページに出てきました。
・・・”There's an old saying that victory has a hundred fathers and defeat is an orphan.”(I later asked him where he had come upon this felicious observation. He looked surprised and said vaguely, "Oh,I don't know;it's just an old saying.") ・・・

不思議なのは、※の出典についての注記です。日本語版では次の通り。
※ イタリアの外相でムッソリーニの女婿だったチアノ伯は、日記の1942年9月9日の項に、次のように書いている。「歴史の常で、勝利には百人の父親が名乗り出るが、敗北は孤児のまま取り残される」

英語版では、次のようになっています。
※ Emily Morison Beck,the editor of the new edition of Bartlett's Familiar Quotatios,informs me that she knows of no previous use of this "old saying."

と書きましたが、連載「公共を創る」第182回の注に書いていました。

電子決裁の限界、顔が見えない

2025年6月4日   岡本全勝

私の勤務先である市町村職員中央研修所でも、電子決裁が進みつつあります。起案者は便利になります。ところが、決裁者には、少々困ったことが起きます。

その一つは、ちょっと聞きたいことがあっても、前に起案者がいないのです。画面を使って質問をするか、出かけていって聞くことになります。本質的な疑問なら、それをいとわないのですが、ちょっとしたことの場合は困ってしまうのです。私は、出かけていきますが、面倒な人はそのまま了解するのでしょうね。

もう一つは、職員と顔を合わす回数が減りました。大部屋なら、決裁や相談がなくても顔を合わせます。しかし個室では、案件がないと部下は来てくれません。
「いやな上司と顔を合わさなくてもすむからうれしい」という職員もいるでしょうが。上司としては、部下がどのように仕事をしているか、その状況を知りたいのです。職場は通信教育ではなく、決裁は送られてきた答案の採点ではありません。
この状況に、どのように対応するのか。考えなければなりません。

と書いたら、肝冷斎が「でも部下に決裁を投げつけようにも電子決済だ」(なので投げられない)と反応しています。そういえば、私の若い頃に、気に入らない決裁案だと決裁板を投げつける上司がいましたね。

悩みの原因、時間管理

2025年6月1日   岡本全勝

5月10日の朝日新聞別刷りbe「フロントランナー」は、中島美鈴・臨床心理士の「夢かなえる「時間管理」」でした。詳しくは記事を読んでいただくとして。3ページ目の「精神論ではなく、仕組みを整えればいい」から。
ご本人が、発達障害のひとつ、注意欠如多動症(ADHD)と診断され、それに特化した認知行動療法と出会います。「考え方のくせ」ではなく、整理整頓や計画立てなどの「行動」と「環境調整」を訓練する内容でした。「困りごとに合わせて、仕組みを整える。できないのは、脳の特性が理由であって、その人が悪いのではない。そして、対処法がある」。それを、広めておられます。
ここでは「時間管理」と書かれていますが、私が言う「段取り」(「明るい公務員講座」)と共通するところがあります。

――なぜ、時間の管理に着目を?
自治体職員や大学の相談室、医療機関、主宰する心理相談所などで、心の悩みを聞く仕事を続けてきました。離婚、解雇、友達との絶縁などの困りごとって、実は時間管理が原因で起こることが多いのです。
例えば、遅刻が多い、書類が期限までに仕上げられないなどで解雇。生活リズムが整わず、家事や育児が回らなくて離婚。友達に借りたお金を返すのが遅くなったりLINEの返事が遅すぎたりして絶縁……。先延ばしや時間管理の問題で行き詰まっている人は多く、高学歴や、社会的に地位のある仕事をしている人たちにもいました。

――時間管理ができる人と、できない人の違いはどこにあるのでしょうか。
目に見えない「時間」という概念をあつかう時間管理は、脳の働きの中でも一番高度なものです。
時間管理は、脳の「実行機能」がうまく働くとできて、四つのステップがあります。まずは「スタートする」、次に「計画を立てる」。そして、時計などを見ながら「進捗をモニタリングする」。最後に「脱線を防止する」。この四つがすべてそろわないと、時間管理はできません。
ADHDの特性があると、この実行機能がうまく働かないことがわかっています。日常生活への支障が大きいと診断につながります。ただ、ADHDの場合、薬を飲んで集中力を増すことはできても、時間管理のように高度で複雑なはたらきを改善するには限界があります。
どこが苦手かは、人それぞれです。でも、どこでつまずいているかがわかれば、手を打つことができます。

――どのように対処するのでしょうか。
例えば、スタートが切れないなら、最初のステップを小さくします。計画を立てる時は、まず自分の時間を把握するところからはじめます。それから、やるべきことを書き出してToDoリストにしたら、それを何月何日の何時にやるのか、まで決めて手帳に書き込みます。未来の自分に予約を入れる。ここがすごく大事です。
やり始めたら、スマホのアラーム機能などを使って時間を確認します。脱線しやすい人は、カフェなど自分が集中できる環境で取り組むことも一つの方法ですね。
苦手なのは、性格ではなく脳の特性のせいですから、精神論ではなく、仕組みを整えればいいんです。「自分を責めないで」と伝えたいですね。