カテゴリーアーカイブ:人生の達人

仕事のやりがい

2019年1月7日   岡本全勝

お読みになった方も、多かったと思います。元日の朝日新聞経済面、「カイシャで生きる1 息苦しい霞が関、折り合えた」。仕事がつらくなって、職場に行けなくなった女性官僚の話です。
・・・入省して半年が経ったころ、法改正の担当になった。深夜帰宅は当たり前で、残業は月200時間を超えた。でも、上司はもっと残業していた。
自分に振られる仕事が、全体のうちのどの部分で、なぜ必要なのかがわからなかった。先輩に質問してみると、「あの人(上司)がそう言っているんだから」という答が返ってきた。そのうちに質問を発することも、自分の意見を言うこともできなくなっていった・・・
そして、彼女は精神科で診断を受け、休職します。復帰後、ある仕事を任され、やりきったことで自信ができました。現在は、元気に活躍しておられるようです。
・・・組織の中で「自分の言葉」を失いかけていた松尾さんは、現場を回り、生産者らと対話を重ねることで「やりがいのタネを見つけられた」・・・

2018年12月30日の日経新聞「スタートアップで修業」は、次のような記事です。
・・・大企業がスタートアップ企業や大学に社員を出向させ、最先端の技術・サービスを吸収しようとする動きが広がっている。パナソニックやIHIなど幅広い企業が導入し、ダイキン工業は若手技術者を東京大学の施設に駐在させる。大企業はイノベーション(革新)を創出しづらい現状を打破しようと、若手中心に新興企業の素早い意思決定などの流儀を学ばせ、人づくりにつなげる・・・
そこに、次のような指摘があります。
・・・「プロ集団の中で、自分に何ができるのか」。当初は環境の違いに戸惑った。だが半年以上たち、自分たち一人ひとりが会社を大きく左右するとの当事者意識を持ったという・・・

そうです。職員は、仕事にやりがいを求めています。少々仕事がつらくても、給料が安くても、やりがいがあれば乗り越えることができます。
大きな組織になると、自分の仕事がどのように役に立っているのか、見えにくくなります。それが、心の病や転職の一因になるのでしょう。
職員にやりがいを持たせるためには、上司が「あなたの仕事は、役所の(会社の)この部分を担っている。これなくしては、××の目的が達成できない重要な仕事だ」と説明しなければなりません。

組織には、役割によって大きな歯車と小さな歯車があります。しかし、小さな歯車もなければ、全体が動きません。そして、職員という歯車は、モーターから回転を伝えられるのではなく、各人が自ら動くモーターにならなければなりません。職員が悩んだり自信を失わないように、上司や同僚が支援して上げなければなりません。
現在編集中の「明るい公務員講座」第3弾に、ちょうどそのことを書いたばかりでした。

朝日新聞「日曜に想う」に載りました。

2018年12月30日   岡本全勝

今朝12月30日の朝日新聞「日曜に想う」、曽我豪・編集委員の「自省と覚悟 2人の問い今も」に、私が載っています。文章は、今年お亡くなりになった仙谷由人、園田博之両先生についてです。その中で、次のような文章があります。

・・・東日本大震災が起き仙谷氏は官房副長官に就いた。官房長官、党代表代行に続く起用は「降格」人事だったが、気にするそぶりはなかった。平服で異例の認証式を済ませ、すぐさま被災者支援の難題に立ち向かった。そして支援体制づくりの事務方のとりまとめ役に起用したのが、総務官僚から自治大学校の校長に転じていた岡本全勝氏だった。
永田町の常識でいえば非常の人事である。岡本氏は麻生太郎自公政権で筆頭格の首相秘書官を務めていたのだから。だが人脈をたどり旧自治省出身で地方財政に経験の深い岡本氏に行き着き、起用にあたって麻生氏に仁義を切ったと聞いていかにも仙谷氏らしいと思った。
大災害を前に民主党も自民党もない。使える人材や知恵を総動員して対応にあたらせたいと願ったのだろう。やがて復興庁が出来、岡本氏はその事務次官になって仙谷氏の思いを受け継いでゆく・・・

仙谷官房副長官から、被災者支援の事務方責任者の指示を受けた際のことは、鮮明に覚えています。日経新聞夕刊コラムの第1回にも、その話を書きました。

なお、曽我さんの文章の結論部分について、思うことを書いておきます。
政治とは、試行錯誤の積み重ねです。前例通りなら、行政(官僚)が上手に処理します。これまでにない事態、これまでにない事件の際に、どのように対応するかで、政治の力量が問われます。
結果を出すことが必要ですが、失敗した時もそこからどれだけ学ぶかが、政治家、政党、国民の値打ちだと思います。

曽我さんの指摘の通りです。「平成の30年は危機や失敗に学んで一つずつ古い政治を手直しした歴史だった」
国民は、政権交代と災害対応を学びました。自民党も政権交代について学びました。行政も災害対応を学びました。
すると課題は、我々は何を学んでいないかです。

人生相談

2018年12月30日   岡本全勝

読売新聞のくらし欄に「人生案内」の欄があります。読者が、生活上の悩みを投稿し、回答者が助言をします。
私は若い時は関心がなかったのですが、ある頃から「世の中には、こんなことで悩んでいる人がいるんだ」と、目を通すようになりました。
相談内容の多くは、夫婦、親子、兄弟、友達間の悩みが多いです。友達がいないという悩みも。中には、「ほんまかいな」「作り話ではないか」と思うものもあります。「そんなことで悩まないでください」とか「あなたが悪い」と言いたいものもあります。

相談を読んで、私ならどのように回答するかを考えてみるのです。それから回答者の助言を読んで、プロの考えと比べてみます。
しかし、回答者は、「そんなことに悩むな」と言ってぶった切るのではなく、相手の身になってやさしく助言しておられます。これが、勉強になるのです。人生の、そして管理職の勉強になります。

12月24日の紙面に、回答者7人による(全員で12人)この1年を振り返った座談会が載っていました。それによると、
・若い人の相談が増えた。(まあ、悩むことは昔らか若者の特権でしたが)
・単身世帯が増えて孤独の相談が増えた。人生100年時代の悩み。
・男性からの相談が目立った(かつて、男は悩みは外に出さないという世間常識がありました)

悩み相談は、世相を映す鏡でもあります。それを読むことは、社会を理解する一つの方法です。

白猫黒猫論、白犬黒犬論

2018年12月29日   岡本全勝

汽車と新幹線、漱石と鄧小平」の続きです。

鄧小平の有名な言葉に「白猫であれ黒猫であれ、鼠を捕るのが良い猫である」という「白猫黒猫論」があります。共産主義であれ、資本主義であれ、人民を豊かにするならどちらでもよいという趣旨です。当時それを聞いて、わかりやすい表現だなと思いました。

後に、次のようなもじりを考えました。
「白い犬でも黒い犬でも、しっぽを振る犬はかわいい」です。
どれくらい役に立つ犬かはわかりません、またどちらが美しいかは分かりません。しかし、しっぽを振って寄ってくる犬はかわいいのです。たくさん肉をもらえます。それに対し、しっぽを振らない犬は、かわいくありません。肉を少ししかもらえません。
職員も、仕事の出来不出来はひとまずおいて、愛想よく近づいてくる人は憎めません。上司の評価が高くなります。

この「ことわざ」は、白猫黒猫論に比べ低級ですが、私たちの日常では、こちらの方をよく体験します。ゴマスリ人間は尊敬できませんが、上司から見ると、しっぽを振る犬はかわいく見えるのです。
ニコニコしていることが楽しく仕事をするコツだと、お教えしました。無理してごまをする必要はありませんが、時に上司に合わせることも出世のコツです。
物事をきちんとまじめに考える人には、この話は通じないので、読み飛ばしてください。

労働生産性国際比較、今年も変わらず

2018年12月26日   岡本全勝

日本生産性本部が、「労働生産性の国際比較2018」を発表しました。

それによると、2017年の日本の時間当たり労働生産性(就業1時間当たり付加価値)は、47.5ドル。アメリカ(72.0ドル)の3分の2程度の水準で、OECD加盟36カ国中20位(昨年と変わらず)です。主要先進7カ国でみると、データが取得可能な1970年以降、最下位の状況が続いています。

日本の1人当たり労働生産性(就業者1人当たり付加価値)は、84,027ドル。アメリカ(127,075ドル)の、これも3分の2程度です。OECD加盟36カ国中21位(昨年と変わらず)です。