カテゴリーアーカイブ:人生の達人

組織構成員の分類その3。階級の区別

2020年7月24日   岡本全勝

組織構成員の分類その2。能力差」の続きです。その1で、次のように説明しました。
B 上下の分担は、部長、課長、補佐、係員、平社員・職員です。また軍隊では、将官、士官、下士官、兵の区分です。「階級」(rank)です。一般的には、管理職、中間管理職、平職員の3段階に区分します。

諸外国の職場や、戦前の軍隊など、この階級差ははっきりしていて、給与や処遇だけでなく、食堂や便所まで違う場合もあります。
この区分をあまり際立たせない、なるべく平等にするのが、日本型職場でした。会社の中に「身分」や「階級」をつくらない。これが戦後日本の民主主義や平等意識の反映であったと、小熊英二著『日本社会のしくみ』(2019年、講談社現代新書)は指摘しています。

それが、かつては職場の生産性を上げ、近年では生産性の低さを生んでいると、私は考えています。
多くの組織において、目標を効率的に達成するには、管理職・中間管理職・職員という階級区分が必要です。それは、軍隊でも会社でも役所でも同じです。管理職は、その組織が何をすべきかを考え、それを中間管理職に指示します。中間管理職は、管理職の指示に従い、業務を達成するために、職員に指示し職員の仕事ぶりを管理します。職員は、中間管理職に指示されたことを実行します。
日本の職場でも、管理職、中間管理職、職員(社員)の区分はあります。しかし、その区分による職務の違いが、明確でないのです。
上司も部下も、みんなが一体となって一つの仕事に取り組む。それは、組織への一体感をつくり、全員で仕事をやり遂げるという長所を持っています。職場でのカイゼン運動は、その一つの表れです。
ところが、それが管理職と社員の仕事と責任のあいまいさを生みました。なるべく、上司による命令や指示という形を取らず、部下から意見をあげていく、全員が納得して仕事を進める形がよいとされました。稟議制もその現れです。しかし、その組織の進むべき方向を決めたり、新しい仕事の目標と期限を決めたりする場合には、管理職が責任を持って、時には部下全員の同意を得ることなく、決める必要があるのです。

管理職が、管理職の仕事をすること。部下の合意取り付けに労力をつぎ込むのでなく、責任を持って指示を出すことが必要なのです。管理職が責任を果たしていないことが、日本の職場の生産性の低さの原因の一つです。
この文章は、「管理職、中間管理職、職員の区分」で書いたことの要約・再掲です。参考「フランスの経済エリート
この項続く

組織構成員の分類その2。能力差

2020年7月23日   岡本全勝

組織構成員の分類その1。分野別、階級別、コース別」の続きです。
前回述べたのは、表に出ている「見える区分」です。これらの他に、「外から見えない区分」もあります。

D 同じ階級(例えば課長職)の中にも、できる課長・普通の課長・出来の悪い課長がいます。能力の差・業績の差です。
人事評価は、これをしています。良い表現がないので、「能力差」(ability)と呼んでおきましょう。2:6:2の法則は、これを指しています。人事担当者や管理職にとって、Aの分野別、Bの階級別、Cのコース別を前提として、Dの能力差を踏まえて誰をどこに配置するか、特に出来の良くない職員の配置が仕事です。あわせて、成績の低い職員に仕事をしてもらうことが、大きな悩みです。

本屋に並んでいる職場の解説をした書物には、AとBが書かれていてDが書かれていない、書かれていても「評価の仕組み」の解説にとどまっていることが多いです。
でも、きれい事だけでは、組織は動きません。『明るい公務員講座 管理職のオキテ』で、これについても説明しました。
また、Cについても、余り書かれていないでしょう。特に正規と非正規の差、同じような職務をしていても処遇に差があることについて書いたものは見かけませんね。

なお、このほかに、
E 非公式の役割分担があります。これは、社会学の教科書に出てきます。
この項続く

テレワークで見えた日本型職場の弱点

2020年7月19日   岡本全勝

7月16日の日経新聞「テレワーク新常態(3)」「責任あいまい テレワークで弱点あらわ」から。

・・・「業務の進捗を把握できない」「健康管理も難しくなった」。リクルートワークス研究所(東京・中央)には今、テレワークの社員のマネジメントに悩む企業からの問い合わせが殺到している。あまりの多さに課題を分析する専門プロジェクトを立ち上げた。責任者の大久保幸夫は「コロナを機に、上司の指示が不明確で部下も自立していない日本企業の弱点があらわになった」と感じている。
日本は欧米に比べ個々の社員の職務内容や責任範囲があいまいだ。「ホウレンソウ」に代表される緊密なコミュニケーションで隙間を埋めてきたが、テレワークになるやいなや機能不全に陥る企業が少なくない。

2月、いち早く在宅勤務に切り替えたドワンゴ社長の夏野剛は、ほどなく新たな働き方が人事評価の見直しを迫ることに気づいた。ビデオ会議では発言内容が全て。雰囲気で存在感を放つベテランが目立たなくなり、オフィスでは発言を遠慮していた若手の貢献が明確になる。
「チームワークが覆い隠してきた、さぼっている人とがんばっている人のパフォーマンスの格差が可視化された。適材適所の人材配置を進めやすくなる」。在宅で成果を出せる人材の選別が加速する・・・

組織構成員の分類その1。分野別、階級別、コース別

2020年7月19日   岡本全勝

職員の能力について、松竹梅の3分類「四角い座敷を丸く掃く」(2018年12月9日。古い話です)を書きました。その続きです。組織での職員の分類論です。

人が集まると、集団になります。そして、その集団を効率よく動かすために、構成員の役割分担を決めます。その役割分担には、2種類あります。分野別の分担と、上下の分担です。縦割りと横割りです。

A 分野別分担とは、企画開発、製造、営業、経理などです。役所では政策別、企業では製品別にも分かれます。これは「職の区分」(division)ですが、職員に注目すると「職種の別」になります。

B 上下の分担は、部長、課長、補佐、係員、平社員・職員です。また軍隊では、将官、士官、下士官、兵の区分です。「階級」(rank)です。一般的には、管理職、中間管理職、平職員の3段階に区分します。

C この階級を前提として、職員育成で経路(コース)を分ける場合があります。上級職・中級職・初級職の区分、総合職・一般職の区分、キャリア・ノンキャリアの区分です。この区分を、何と呼ぶのでしょうね。良い単語が見つかりません。職務給制度の欧米にはない概念のようです。ひとまず「コース別」としておきます。正規と非正規の区分も、ここに当たるでしょうか。

この記事は、途中まで書いて放置してありました。今回ある程度整理できたので、載せます。この項続く

日立、在宅定着へジョブ型雇用

2020年7月16日   岡本全勝

7月14日の日経新聞「テレワーク新常態(1)」「日立「もう元には戻さない」 在宅定着へジョブ型雇用」から。
・・・最高人事責任者(CHRO)を務める中畑は社員の働く意識を変えるという難題に約10年挑んできた。発端は現会長で経団連会長でもある中西宏明。社長時代の2011年、中畑ら各部門の人事責任者を集め「15年までに人事制度を世界共通にしてくれ」と指示した。

日立は08年のリーマン・ショック後、当時、製造業で過去最大となる7873億円の連結最終赤字を計上した。世界で戦える体制を目指すうえで中西が最大の壁の一つと考えたのが、社内に深く根付いた終身雇用や、年功序列を前提とした日本型雇用だった。
海外のグループ会社では、在宅勤務でも生産性が落ちないよう職務を明確にするジョブ型雇用が当たり前。「日本だけが普通でなかった」。13年度に国内外5万人の管理職を同じ基準で評価する制度を導入。16年度には時間や場所にとらわれず働ける仕組みも整えた。

それでも在宅勤務の取得率は約1割どまり。中畑が若手に聞くと「みな取ってないから」。そんな中で起きたのが新型コロナだった。ジョブ型で職務を明確にすれば時間でなく成果で評価しやすくなる……。「日立の働き方を変えるチャンス」。中畑は意を強くした。
社内の意識も変わり始めた。「この3カ月間で出社したのは1回だけ」。寺本やえみは中央研究所(東京都国分寺市)に勤める研究者。4月に在宅勤務を始め、5歳になる娘の保育園も最近まで休みだった。「たまに仕事の手を離して娘の面倒をみるなんて以前なら考えられなかった」・・・