カテゴリーアーカイブ:人生の達人

ジョブ型には企業を超えた人材評価基準が必要

2020年5月29日   岡本全勝

5月25日の日経新聞経済教室「日本型雇用改革の論点」は、小熊英二・慶応義塾大学教授の「企業越えた人材評価基準を」でした。

・・・新型コロナウイルスの流行で、日本の働き方が問い直されている。リモートワークが進まない、マネジメントが「あうんの呼吸」に頼りすぎていた、採用面接が多すぎるなど、この機会に露呈した問題は数多い。
こうした問題はただ一つの要因から発生している。人材に対する客観的な評価基準がないことだ。それが日本型雇用の根本問題だ。

他国では職種別の熟練度や専門能力の評価基準が、特に1970年代以降に明確化した。そこでは「経営学修士号」や「英語がCEFRでC1」や「営業職としてA社とB社で職歴10年」といった学位や資格や職歴が、その人が就ける職務とその賃金額という形で評価されるのが原則だ。
これが可能なのは、その人が就く職務(ジョブ)が明確化されており、それに対応した学位がはっきりしているからでもある。米国の教育大学院では、学務登録や教育支援、国際教育などはそれぞれ専門課程があったりする。各自がその専門教育を受けて学位をとり、同じ職種で企業を替えながら経験年数を積み、キャリアアップすることになる。

こういう働き方だと、リモートワークは容易だ。一人一人の職務が明確で、責任の所在や分担がはっきりしているからだ。大部屋での共同作業は必要ないし、あうんの呼吸に頼ったマネジメントもいらない。職務ごとに要求される学位や経験年数が明確なら、何回も面接しなくても、書類審査で絞り込みができる・・・
このように職務が明確化している働き方は、日本では「ジョブ型」と呼ばれる。しかし単に職務が明確化しているだけでは足りない。重要なのは、企業を越えて通用する客観的な評価基準が確立されていることだ。・・・

・・・さらに人材評価の基準がない社会では、教育が人的資本を向上させる機能を果たし得ない。今や世界中で大学院の進学率が上がり、大学院に入り直す人も増えたが、それは修士号や博士号がないと高給の職務に就けなくなってきたためだ。
しかし日本は大学院進学率が停滞し、他国と比べ相対的に「低学歴化」しつつある。これは長期的には日本の国力低下につながりかねない。また修士号や博士号が評価対象にならない社会に高度人材が外国からやってくるとは考えにくい・・・

テレワークが変える仕事の仕方

2020年5月27日   岡本全勝

5月22日の朝日新聞オピニオン欄、永守重信・日本電産会長兼CEOのインタビュー「脱・指示待ち型へ 新型コロナ」から。

「私は、テレワークは日本人には向いていないと思っていました。というのも、日本人には指示待ち型が多いからです。子どもの頃から親や先生に言われたことに従うのを是とし、自ら何かを始めようとしない。会社員になってからも、大部屋に机を並べて、何かあれば、すぐ上司にうかがいを立てる。でも、テレワークなら上司の顔色を見て仕事することもなくなるので、指示待ち型から変わるかもしれない」

――しかし、自己管理が難しいというマイナス面もあります。
「自己管理ができるようになるのは日本人にとって、間違いなくプラスです。日本人は自分の意見を言おうとしないので、外国人とのディベートで負けてしまう。これからは、積極的に自分で仕事を探し(Proactive)、専門性を磨いて(professional)、生産性を高められる(Productive)の『3P』で人材を評価していきたい」

――人材評価が難しくなるのではありませんか。
「4月から『入社から何年たったら課長』というような社歴や年齢、学歴の条件をやめたら、意外とテレワークにマッチしていることがわかりました。これからは20代の課長もありです。新入社員も欧米のように給与に差をつけていく。コロナ禍は、日本のあしき横並び主義を変えるきっかけになる気がします」

いくつもの企業が、コロナ後も全面的に元の勤務状態に戻さず、テレワークも続けるようです。働き方改革につながるでしょう。

アマゾンの仕事の流儀

2020年5月25日   岡本全勝

5月19日の読売新聞、ジャスパー・チャン、アマゾンジャパン社長へのインタビュー「すべてはお客様のために」から。

・・・社内の会議も独自の進め方があります。
新たなプロジェクトを提案する際、発案者は完成後の発表を想定したプレスリリース(対外公表文)形式の資料を書いて説明します。
その提案がお客様にどんなメリットがあるのか。具体的な説明を書くことで、事業のゴールを明確にします。自分たちでは良い製品を作ったつもりでも、お客様に受け入れられないことがある。そうした自己満足に陥らないようにするためでもあります。

社内の会議は冒頭の20分から1時間くらい、会議室が静まりかえります。配布された資料をまず全員で読み込むのです。
事前に資料を配っておく方法もありますが、それでは記憶が曖昧になりやすい。その場で読むことで議論が深まり、効率も高まります。
説明資料は常に6ページ以内。何十枚も用意することはありません。ポイントを簡潔にまとめ、提案者の考えをはっきりさせる狙いです。
プロジェクトに取り組むチームの人数は「ピザ2枚分を食べ分けるくらい」というルールもある。6人から10人くらいですね。人数を多くし過ぎないで議論を速め、個々のメンバーに責任感を持たせるためです・・・

・・・社員の人事異動は、上司が部下に命じることはありません。部署の異動は本人の希望に基づきます。まず人材を欲しい部署が募集する。社員が手を挙げて了解が出れば原則、未経験の部署でも海外でも異動できます。自分で責任を持ってキャリア形成を考えてほしいからです・・・

広がるテレワーク

2020年5月22日   岡本全勝

5月18日の読売新聞に「感染拡大 在宅勤務2倍」という解説が載っていました。インターネットでは見ることができないようです。
テレワークの実施率(企業などに勤める人が過去1年間にテレワークを行った人の割合)が、2018年では8.5%でした。2020年3月では13.2%にしか伸びなかったのが、4月には一挙に27.9%にまで上がりました。

職種別の実施率が、グラフで載っています。高いのは、ウェッブデザイナーなど(64%)、コンサルタント、企画・マーケッティング、IT系技術職、広報・宣伝・編集などです。低いのは、福祉系専門職(2.2%)、ドライバー、梱包など軽作業、建築職人、飲食、幼稚園教諭・保育士、医療系専門職などです。納得できます。情報を扱う仕事はテレワークに向いていますが、人を相手に手で行うサービスは難しいですね。

その際の主な不安が載っています。非対面のやりとりは相手の気持ちがわかりにくく不安(37%)、上司や同僚から仕事をさぼっていると思われていないか不安(28%)、出社する同僚の業務負担が増えていないか不安(26%)です。
主な課題は、運動不足を感じる(74%)、プリンターなどの必要機器がない(48%)、仕事に集中できない(44%)です。

5月18日の日経新聞「日経ウーマノミクス・プロジェクト調査」は「在宅勤務 7割「続けたい」」でした。
・・・仕事と生活が両立しやすいと子育て中の女性を中心に導入されていた在宅勤務制度。3月以降、多くの企業が対象を拡大した。4月下旬、日経ウーマノミクス・プロジェクトの会員らを対象に調査を実施。「通勤時間が減り家族との時間が増えた」など在宅勤務をした1400人の74.8%が「新型コロナ収束後も続けたい」と継続を希望。回答からは自宅でも業務効率を下げないように様々な手を打った企業の工夫と、コロナ後の女性活用の方策が見えてきた・・・
賛成意見と反対意見も載っています。

空気を読んで違うことを言う

2020年5月20日   岡本全勝

しばしば「空気を読む」、あるいは「空気が読めない」と言われます。
その場の状況を理解して、自分が何をするべきか、何をしてはいけないかを判断することです。多く使われるのは、「空気が読めない人が困る」という場合です。

確かに、その場の議論とは全く違った話をするような人は困ります。でも、そのような場合には、「空気が読めない」とは言いません。大勢の方向が見えてきた場合や上司の意向が見えてきたときに、それに反したことを言って「逆らう」場合のようです。
「空気を読む」人は、上司の意向を先読みして、「ヨイショ」をしてその方向に持って行きます。度が過ぎると、忖度になります。
しかし、それは正しいことでしょうか。十分な検討をせず、すなわち反対意見を検討せず、結論を急ぐ。空気に従うことは、判断を誤る元です。

職場での議論は、試合での応援や、飲み会での盛り上がりとは違います。ヨイショ~では困ります。
正しい職員の在り方は、空気を読んで、ひとまず違ったことを考えて発言することだと思います。空気を読んで賛成する、あるいは黙っていることは、楽なことです。それに対し、反対意見を考えることは、しんどいです。
みんなが思ってもいないような角度から、問題点を指摘する。正しい結論を導くためには、必要なことです。上司としては、そのような指摘をしてくれる職員はありがたい職員です(もっとも時には、自説に反対する部下を疎ましく思う上司もいるので、そこは要注意です)。
そのためには、上司から早々と「これでよいよな」と、部下に結論を押しつけないことです。そう言われると、部下は「いいえ」とは言いにくいです。

拙著『明るい公務員講座 管理職のオキテ』P79で、「悪魔の代理人」をお教えしました。問題点を指摘するのは、反対するためでなく、結論を補強するためです。もちろん、指摘した問題点にみんなで答えることができない場合は、原案がまちがっているのでしょう。
その場の空気を読むだけでなく、社会全体の空気(世間からどう見られるか)と将来の空気(10年後はどう評価されるか)という、離れたところの空気を読むことが重要です。