カテゴリーアーカイブ:行政

住みよい町を続ける

2022年3月1日   岡本全勝

2月19日の日経新聞に、「住まいのまちなみコンクール」という全面広告が出ていました。受賞したのは、福島県いわき市の葉山自治会です。「住まいの街並み」と聞くと、きれいな街並みの風景を想像しますが、地区や事業者ではなく、自治会が表彰されています。

住まいのまちなみコンクール」のホームページによると、「このコンクールは、地域の特性を活かし、魅力的な住まいのまちなみを育む維持管理、運営などの活動に実績を上げている住民組織をまちづくりのモデルとして表彰し、支援します」とあります。
かつては、新しい住宅地を創り出す事業者(住宅地の生みの親)を表彰するものだったそうですが、住み継ぐことができるまちなみをいかに維持管理、運営していくかを主眼とした、育ての親である住民組織を対象にするようになったそうです。

モノを作ればよい時代から、運営を続けていく時代になりました。住みやすさを維持するには、継続的な努力が必要です。それも、建設業者に作ってもらってお金で買うことができず、住民が自分たちで続ける必要があるのです。
これも、モノからコト(関係)への変化の一つでしょう。さらにその関係は、継続することが必要です。モノなら作れば完成、買えばすむですが。

みんなで議論する国

2022年2月26日   岡本全勝

2月16日の朝日新聞オピニオン欄「国民的議論、できるもの?」、ニールセン北村朋子さんの発言「最上の妥協点、探る国なら」から。
・・・私が住むデンマークでは、一昨年、気候変動に適応しようと、CO2排出を2030年までに1990年比で70%削減する法律を作りました。
再生エネルギーを導入するだけでは達成できません。基幹産業の一つで排出量の多い養豚業を減らそう、そのためには肉を食べる量を減らそうと、農業関係者から消費者まですべての利害関係者が参加して、国民的議論が進んでいるという実感があります。
各地で地域のNPOやNGOが主催する議論が行われています。政府は食べ方を変えるキャンペーンを展開し、大臣が全国の市民集会に出向きました。農業団体は討論会を行い、メディアもインタビュー番組を放送しています・・・

・・・「デンマーク人は議論好き」ということもあるでしょう。人々は本音と建前ではなく、本音と本音で話をします。小さい頃から「言ってはいけない」がなく、自分の意見を言うように育てられます。話しやすいし、空気を読まないし、忖度する必要もありません。子どもや周りの人を見ていてもそう感じます。
この国では「最上の妥協点、着地点」という言葉をよく使います。どこがお互いにセカンドベストなのか、それを探り出せるか。議論はこれを得るためのツール、という考え方です。議論のための議論は少ない。しかも結論が出て終わりではなく、おりを見ては議論を続けます。だから議論が尽きません。決めたら終わり、ではないのです。
全会一致には懐疑的です。それが歴史上間違った方向に行ったことがたくさんあるとみんなが知っています。だから、少数意見だからと無視したり笑ったり取り上げなかったりは、ここではありえません。それも良さの一つです。

日常の中で人々が議論する時間は十分あります。仕事は午後4時には終わりますし、金曜日は半日です。多くの人たちが夜や週末に、地域の会合に参加しています。
大事なことを話し合わないと次世代に責任を持てない。子や孫の未来を奪ってしまう。ここではそんな考え方が根付いています。「話し合う時間や余裕がない」などと言ったら、「なぜ議論しないのか、時間をかけないのか、ほかに大事なことがあるのか」と不思議がられるでしょう・・・

民主主義を恐れるロシア指導層

2022年2月25日   岡本全勝

2月16日の朝日新聞国際面、オリシア・ルツェビッチ氏(英王立国際問題研究所特別研究員)の「民主主義 恐れるロシア」から。

・・・北大西洋条約機構(NATO)の拡大が問題の発端だというロシアの主張は、国内向けの言説に過ぎない。冷戦時代にソ連国内で反NATOのプロパガンダが盛んに流された結果、「NATOが拡大してくる」と言えば、今でも通用する。
ロシアが本当に恐れるのは「民主主義」。民主主義が欧米からウクライナを通ってロシアに入るのではないか、と懸念している。でも、そうだとは決して認めない。『ウクライナが怖い』などとは、口が裂けても言えない。

プーチン大統領は19世紀の帝国主義的価値観に染まり、国境周辺の土地にも所有権があると信じている。また、巨大なマーケットであるウクライナを支配することで、地域大国以上の力を持とうとしている。ロシアがウクライナなど周辺諸国を支配しようとするのは、ロシア指導層の不安の表れでもある。攻めの姿勢を取り続けないと、ロシアは求心力を失い、将来解体に向かうかも知れないと恐れるからだ。・・・

民主主義国家は団結せよ

2022年2月23日   岡本全勝

2月13日の読売新聞言論欄、アメリカの政治学者、ラリー・ダイアモンドさんの「民主主義国家は団結せよ」から。

・・・20世紀の潮流は民主化でした。特に1989年の冷戦終結後、民主主義は旧社会主義圏に一気に拡大した。94年頃には人口100万人超の国々の過半数が「選挙民主主義」の基準を満たします。複数政党の参加のもとで普通選挙を実施するという、民主主義の最低限の基準です。20世紀末、その数は6割を超えました。その中に、法の支配・基本的人権の尊重・政治的自由の保障などを実現した「自由民主主義」が含まれます。米国、西欧、オーストラリア、日本、台湾などはここに分類できます。
21世紀に逆流が起きます。
東南アジアで言えば、タイは2006年のクーデターで軍の支配に後戻りし、民主主義の歩みを始めたミャンマーは21年に軍が権力を握り直した。選挙民主主義国は今日、5割を切っています。
質も劣化した。為政者が説明責任を 蔑ろにし、任期を破棄して居座り続け、権力を乱用する傾向がある。腐敗も伴います・・・

・・・民主主義の後退の一つの要因に経済の不振があります。民主主義と資本主義は車の両輪です。新参の選挙民主主義諸国は中間層が薄く、教育程度は低く、民主主義の土台はもろい。景気後退で民主主義は言わば侵食されてしまう。欧州連合(EU)で言えば、ユーロ危機後のハンガリーとポーランドが該当します。両国とも権威主義に染まりつつある。
世界的には経済グローバル化で不利益を被った大衆の不満がある。職を失い、生活に困窮すれば、移民を敵視するようになる。大衆の不安を糧に右翼ポピュリストらが横行し、グローバル化を非難し、移民排斥を叫び、民主主義をエリート支配と糾弾する。4月の仏大統領選を争う国民連合のマリーヌ・ルペン氏はその一人です。
トランプ前米大統領は右翼ポピュリストの代表です。大衆の心に響く言葉遣いの巧みな扇動家です。16年の大統領選で負かした、ヒラリー・クリントン元国務長官は有能な公僕でしたが、国家指導者に必要なカリスマがなかった。
米国はトランプ前政権の4年間で政治対立が先鋭化し、SNSを通じて党派的な情報・虚言が拡散して社会分断が深刻化した。民主主義は劣化しました・・・

・・・民主主義は権威主義にも脅かされています。最大の脅威は中国です。習近平氏はアジアの覇権樹立に加え、世界支配の野望さえ抱いているように見えます。
特に台湾が危うい。台湾問題は20世紀半ばの朝鮮戦争に並ぶような、世界秩序を左右する危機へと拡大しかねないと私は考えます。この点で、米国が昨年、日豪印3か国と構築した外交安保協力体制「クアッド」を私は高く評価します。アジア太平洋地域での中国の強引な軍事的拡張を抑止するための重要な戦略的一歩です。
権威主義諸国からのサイバーテロを含む侵犯行為に対抗し、民主主義の後退に歯止めをかけるためにも民主主義諸国は団結すべきです。バイデン大統領が昨年末にオンライン形式で開いた民主主義サミットはその試みです・・・

国立公文書館、近現代の文書管理の歴史

2022年2月21日   岡本全勝

先日、国立公文書館に行ってきました。企画展「近現代の文書管理の歴史」を見るためです。官僚の一人として、公文書の作成や保管には関心があります。かつて知人が働いていたこともあり、何度か訪れています。

今回の展示は、明治以降の国家の公文書の変遷です。どのような様式が定められたか、どのように保管されたのか。勉強になりました。明治6年の宮殿の火事、大正の関東大震災、敗戦と焼却。保管されていたたくさんの文書が、灰になってしまいました。
昔から「文書が多すぎる」と、その是正をするための行政改革がされていたことも、驚きでした。

公務員でなくても、近現代史が好きな方には楽しめます。無料です。お土産には、平成と令和の文字が入ったクリアファイルなどもお勧めです。
国立公文書館の業務を簡単に紹介した動画があります。これは分かりやすいです。こちらも、ご覧ください。