カテゴリー別アーカイブ: 政と官

行政-政と官

国民を誤らせる予測

27日の読売新聞「急げ年金改革」(中)「甘い予測、広がる不信」に、これまでの政府による出生率予測の表が載っていました。1976年推計以来6回の推計が、いかに大きく外れたかが一目瞭然でした。ご承知のように実績は急激に低下し続けているのに、予測はいずれもV字型に回復するとしているのです。予測というより、願望ととれます。そして、毎回、大きく外れるのです。結果を見ると、かなり、とほほ・・な予測です。これでは、国民は政府や官僚を信用しなくなるでしょう。

公務員削減は政治家の仕事

21日の経済財政諮問会議議事要旨が出ました。民間委員の提言(農林統計、食糧管理、北海道開発の削減)を受けて、麻生大臣の発言があります(4ページ目)。
「まず、全体として個別の部門別に削減しようという取組は正しい。大前提としてそう思う。シーリングだけで決めるのは限界があり、不要な部分が残るので、このやり方は正しい。
次に、より大きな分野での見直しが、行われなければならない。その原則は、基本的には不要になった事務、あるいは力の入れ方を減らす事務とか、公共事業、産業振興、補助金の配分といったところだと思う。併せて、全体の約7割を占めているのは地方の出先機関なので、これに重点を当てなければいけないが、ぜひここは腹を決めておかなければいけない。これは役人では無理である。政治家で決める以外に手がないから、重点的削減というのは政治家が覚悟を決める。この度胸だけ決めていただかないと話にならない。これだけは最初に申し上げておきたい。」
官僚としては残念ですが、大臣の言うとおりですね。これまではシーリングでやってきました。官僚にはそれしかできまんでしたまた、政治家と言えば「族議員」で、各分野の定員を増やす応援団だったのですが。これからは、予算やその他の分野と同様、痛みを引き受けるのが政治家の仕事になりました。そのとき官僚は、何をするのでしょうか。

審議会政治、審議会の政治学

森田朗先生が、「会議の政治学」(慈学社出版)を出版されました。「重要な政策決定や利害調整が行われている審議会等の会議で、どのように議論が闘わされ、決定が行われているか」、委員や座長を務められた経験から書かれたものです。索引には、裏方、脅し、落としどころ、顔が立つ、ガス抜き、観測気球、ご説明、P、リーク、などなど興味深い専門用語、日本の行政を知る上で必須の業界用語(?)が並んでいます。
官僚である裏方には「常識」のことで、一般社会では「非常識」な審議会の運営が、解剖されています。いかにムダで非効率なことが行われているか。霞ヶ関勤務の記者の方には、必読の文献でしょう(笑い、失礼)。
審議会は第三者に政策決定を委ねることで、多くの場合政治主導とは対極にあります。省庁改革の時もテーマの一つになりました。小生の担当の一つでした。その時の考えは「中央省庁改革における審議会の整理」月刊『自治研究』(良書普及会)2001年2月号、7月号に書いてあります。ご参考までに。

教育改革

9日の朝日新聞「きょうの論点」は、「教育バウチャー制度の是非」で、ワタミ社長の渡邉美樹さんと志水宏吉阪大教授が意見を述べておられました。私は、バウチャー制度導入論者です。
反対論者である志水教授は、「公立学校では均質な教育が受けることができるが、学校選択制でも学校間の格差を生んでいる。バウチャーを導入すれば格差がどんどん広がる」と主張しておられます。それは裏返せば、公立学校では低いレベルで、均質な教育を行っているということでしょう。
もう一つ、私立学校の存在と、既に都会では学校選択が進んでいるという事実、そして多くの子供が塾に行っているという事実を無視しておられます。ちょっとした金持ちで教育に熱心な家庭は、子供を私学に通わせています。そして、私学は公金投入が少ないため、父兄の負担が大きいのです。塾も同じです。それは、金持ちの子供が良い教育を受けることができるという、格差の固定化を生んでいます。
三位一体改革で義務教育国庫負担金(といっても、公立学校教員国庫負担制度です)が議論になっていたとき、もう3年ほど前になるでしょうか。文科省担当の記者が「文科省職員子弟の通っている学校アンケート」を取ろうとして拒否されたことが、新聞に載ったことがあります。匿名なら個人情報に当たらないのにと、思ったのですが。

官邸主導の成否

安倍政権になって、官邸主導が議論になっています。首相補佐官の拡充と活用、従来型官邸官僚人事の変更、会議など組織の創設です。国会でも、二重行政でないかという質問もありました。
新聞も、いくつか解説をしています。例えば、6日付け朝日新聞「三者三論」では「機能するか、日本版国家安保会議」を取り上げ、6日日経新聞夕刊「ニュースの理由」では「米国の官邸主導は流動的、政権で変わる経済司令塔」を解説していました。
省庁改革以降、政治主導の方法が模索される、その一つの試みと位置づけられるでしょう。従来型の官僚主導・各省分担制を改革する挑戦です。
どのように機能するかは、実際を見てみないと何とも言えません。組織を作っただけでは、結果は出ません。ポイントは、「組織をどう作るか」「どのような任務を分担させるか」「どのような人を任命するか」「競合する組織の間をどう調整するか」などです。すなわち、組織・任務・人事・調整が重要です。私は、この中でも、任務と調整が鍵を握ると考えています。それはすぐれて、首相がどのような任務を与えどのような結果を求めるのか=方向性の指示と、組織間(補佐官と大臣との間など)の競合や対立を首相がどう裁くかです。これは、首相しかできないのです。それが政治主導です。組織の設置と人の配置は、その手段です。