岩波書店PR誌『図書』8月号、佐藤卓己さんの「『図書』のメディア史」に、次のようなことが載っていました。
岩波新書の読者アンケートが、1970年、88年、95年に実施されました。調査結果では、読者年齢の頂点が、20代から30代、40代へと移行しています。特に20代が占める割合は、25年間で31%から8%に減ったそうです。
私も、新書のファンですが、読者の高齢化に、びっくりしました。若い人は、読まないのですね。今アンケートを取ったら、どうなっているのでしょうか。
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経済の進化に追いつかない行政
NHKのインターネット・ニュースに、「WEB特集」という欄があります。記者が、特定のテーマを掘り下げて解説しています。今日紹介するのは、「ネット取引で「失われる」消費税」(8月9日、岡田真理紗記者)です。
アマゾンで電子書籍を買うと、消費税がかからず、日本の業者から買うと、消費税がかかります。ヤフーに広告を出すと消費税がかかり、グーグルに広告を出すとかかりません。詳しくは、本文をお読みください。
社会や経済が進化するスピードに、行政が追いつかない。国境を超える経済に、国家が追いつかない例です。
ロケットを持つ国、商売にする国
8月9日の読売新聞解説欄に、「ロケット開発方向定まらず」が載っていました。その主旨とは違いますが、読んでいて次の点に関心を持ちました。
ロケットを持つ国は、ロシア、アメリカ、欧州、中国、インド、イスラエル、ウクライナ、イラン、韓国と日本だそうです。まだまだ限られた国しか、打ち上げることができない先端技術です。さて、記事には、欧州の打ち上げ事業会社アリアンスペース社の高松聖司・東京事務所代表の言葉が載っています。
・・不思議なのは、日本の打ち上げ事業の議論が、どんなロケットを造るか、というハードの面に偏っていることだ。その奇妙さは、航空事業に置き換えると、よくわかる。同じ機体を使っていても、航空会社によって運賃は違う。各社が工夫して競争している。
ロケットの製造企業が打ち上げ事業をする、と思い込んでいるのもおかしい・・私たちも打ち上げ事業会社であり、ロケットは造っていない。別の会社から購入している・・
グローバル化と国家の役割、2
(政府の役割)
その際に、国家(政府)は何をするべきか。私は連載「行政構造改革」以来、「政府(中央政府と地方政府そして官僚)の役割は何か」を考えていて、その一環として、この本を読みました。
これまでは、日本の課題や政府の機能をどうするかを考えていたのですが、日本が抱える課題は国内だけで生じるのではなく、国際環境によるものも大きくなりました。例えば、地域産業を考える際に、国内の条件だけを考えていても解決になりません。国内で企業誘致をしておれば良い時代では、なくなりました。企業は世界で勝負し、工場はアジアにそして世界に出て行きます。
経済などが国際化したことによって、国家が対応できる範囲や、国家が打てる有効な手段が狭まりました。国内の課題を解決することは、国家(中央政府)の任務でしたが、一国の政府だけでは解決しないのです。
他方で、世界政府は、まだ視野に入ってきません。EUが、その実験を進めていますが。もし遠い将来に世界政府ができたとしても、地球規模の人口と面積、そして異なった経済段階の区域を抱えて、有効な政策は打てそうにもありません。
(政府間の競争)
国家(主権国家体制、Nation State System)を前提として、国家(政府)が、国際問題と国内問題を解決していくしかありません。市場経済だけに任せておいてはうまく行かないことが、国内経済でも国際経済でも明白になりました。もちろん、経済界に求められることも、変わってきました。
世界規模の経済合理性だけで、行動することが果たして良いことか。これが、東西冷戦終結後の20年間で、わかったことです。バブル崩壊後の日本が直面したデフレや「失われた10年」という言葉は、この状態に重なっていました。ある意味で、先進諸国のさらに先端を行っていたのです。
日本政府にも官僚にも経済界にも、新たな大きな課題が出現しています。私が繰り返し主張しているように、「日本国家と国民が、明治以来の追いつけ追い越せ路線に成功し、次の課題設定に迷っている」という大課題は、より大きな規模で「世界規模での文明の曲がり角」とシンクロしつつ、私たちに対応を迫っています。
もちろん、このような課題なので、世界各国が、条件は違いつつ同じ課題と取り組んでいます。どの国が、この競争に勝つのか。経済についての新しいモデルを提示することと、国民と社会へ新しい政策を打つことの競争です。
物作り以外の日本の売り物
8月3日の読売新聞経済欄連載「コンビニ新時代」が、「日本流、アジアに拡張」と、日本のコンビニがアジアに進出していることを解説していました。セブン・イレブン、ファミリーマート、ローソンの大手3社で、アジアには4万店を展開し、さらに拡張しようとしています。
日本というブランド、日本流の丁寧なサービス、そして品揃えなどのノウハウが、強みなのでしょう。もっとも、記事では、他国企業との比較が載っていないので、どの程度日本が勝っているのか、わかりません。
日本は、これから国際競争において、何で勝ち抜くか。既に、電気製品や半導体などは、中国と韓国に追いつかれ、追い抜かれつつあります。40年前に、日本がアメリカや西欧各国の工業製品に追いつき勝ったことが、繰り返されています。
製造業では、諸外国のさらに先を行くこと。自動車や工作機械などは、これで勝ち残っています。これからも、頑張ってもらいたいです。例えば、伊丹敬之著『日本企業は何で食っていくのか』(2013年、日本経済新聞出版社)。
ところで、製品の競争というと、「安くて良い製品」で勝負しますが、そのような発想でなく、もう1つ次元を上乗せした「強み」があると思います。製造業の世界で同じ土俵(安くて良い)では、勝負しないのです。
それは、日本が持つブランド、安全と安心、ノウハウです。今回紹介したコンビニも、ものの輸出ではありません。ノウハウです。インドネシアなどで、ヤクルトレディが活躍していますが、これもノウハウでしょう。日本のミネラルウオーターが、中国やアジアに輸出されているとのこと。これは安全でしょう。
日本でも同等以上のモノを作ることができるのに、日本人があこがれる西洋のブランドもの。時計、鞄、ウイスキーなどなど。アメリカは、製造業の多くが空洞化しても、航空機産業などの先端的物作り、インターネットを使った商売、ハリウッド、医薬品などで、他国を寄せ付けない強さを作り続けています。製造業の分野で日本に負けた西欧各国が、生き残りをかけた道です。
安くて良い商品で競争するだけでなく、高くても買ってもらえるもの。それは、日本ブランド、安全と安心、ノウハウです。クール・ジャパンも、そうです。漫画、アニメなど。製造業が産業の核であることは違いないでしょうか、物作りだけが産業ではないのです。
私が指摘する以前に、識者は主張し、挑戦しておられると思いますが。