カテゴリーアーカイブ:社会の見方

コンテンツ産業の現状

2025年9月19日   岡本全勝

9月3日の日経新聞経済教室、中村伊知哉・情報経営イノベーション専門職大学学長の「コンテンツ産業の振興、デジタルの活用余地大きく」に日本のコンテンツ産業の現状が紹介されていました。

・・・日本のコンテンツ市場は2023年に13・3兆円で拡大基調だ。特に配信などオンラインは2011年に全体の13・4%だったが、2023年は46・5%を占めた。新型コロナウイルス禍による巣ごもり需要もあり、近年の市場拡大はほぼデジタルが担った。
同時にデジタルは海外市場を切り開いた。日本発コンテンツの海外売り上げは2023年に5・8兆円となり、10年間で3・6倍に成長した。半導体や鉄鋼の輸出額を超え、自動車に次ぐ第2位の規模となった・・・

図表もついていますが、経済産業省の「エンタメ・クリエイティブ産業戦略」が出典です。報告書の4ページに載っています。
ところで、「コンテンツ」は、日本語では何と言ったらよいのでしょうか。中学生に説明するには、どう表現しますか。

英語で言う「日本人ファースト」

2025年9月18日   岡本全勝

9月4日の朝日新聞オピニオン欄「排外主義を考える」、サンドラ・ヘフェリンさんの「ずっと「日本人ファースト」」から。

・・・参院選のさなかにあふれた「日本人ファースト」という言葉に違和感を覚えました。「日本人」を強調したいのなら、「日本人第一」では、と。私のような外国にもルーツのある人たちに居心地の悪さを強いる言葉の重さに比べ、発信する側の軽さを感じました。

私の父はドイツ人、母は日本人ですが、ドイツでは極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が勢いを増しています。排外主義の動きは先進国で広く見られ、移民や難民流入の不満など様々な要因が指摘されています。しかし、難民の受け入れ数なども桁違いに少ない日本でなぜ、排外的な動きが起こるのか、よくわかりません。日本はずっと日本国内においては「日本人ファースト」だったのではないでしょうか。

日本の国籍法は、外国の国籍を取得すると日本の国籍を失う、としています。明治時代に定められ、今も11条1項として残っています。これは研究者など海外で仕事をする日本人や、国際結婚などにより外国に住む日本人にとって理不尽な規定です。

日本の社会は、人を「見た目」で「日本人」と「外国人」に分類しがちです。数年前に口座を作ろうと地元の信用金庫を訪ねた時のこと。日本のパスポートや印鑑を窓口で示し、手続きをしたのですが、窓口の職員は「地元にもっと近い信用金庫があるのでは」とライバル店の名を挙げ、口座を開設しようとしません。口座は作れたものの時間がかかったのは、私の見た目が「外国人ふうの顔」だったからかもしれません。
「踏み絵」を迫られることもしばしば。「あなたのアイデンティティーは」と尋ねてきた人に、「自分は日本人で同時にドイツ人」と答えてけげんな顔をされました。アイデンティティーは一つでどちらかを選ぶべきでは、と言いたげでした・・・

『グローバル社会の哲学』

2025年9月17日   岡本全勝

押村高著『グローバル社会の哲学 現状維持を越える論理』(2025年、みすず書房)を読みました。
・・・国際正義論の第一人者が、国際政治思想における「現状維持バイアス」を乗り越えるためのラディカルな問題提起を行った本書は、グローバル空間を「社会」と捉え、思考し、哲学する礎となる書である・・・

国際政治論はたくさんありますが、国際正義論や国際政治思想がどのようなものなのか。知らなかったので、この本を読んでよくわかりました。
私は、現在の国際社会は中世の国内と同じような位置にあると考えています。日本でも西洋でも、小さな「独立国」が領域を治め、対外的には戦争を繰り返していました。それが国内が統一され、主権国家が成立します。今度は、その主権国家が領域を治め、対外的には競い合います。
第二次大戦後は、それまで当然とされた戦争が、良くないこととされました。ただし、主権国家内のように武力が統一されていないので、国際社会では、戦争を始めた国を止める手段はありません。国連憲章は国連軍を規定したのですが、うまくいっていません。

主権国家単位で構成されている国際社会を統一するには、どのようにしたら良いか。この本は、政治哲学として論じます。
他方で国際社会は、主権国家の役割や戦争だけを見ていても、狭いと思います。国連やその関係機関が、貿易や健康などの分野で国際社会の統一を進めてきました。しかし、まだまだです。
経済や文化、人や思想の交流の拡大という政治外の要素も議論すべきです。もちろん、現在は主権国家という政治と軍事が最も強い要素ですが、経済や文化、人や思想の交流は、国境を越えて国際社会を統一しつつあります。完全な鎖国は、イランも北朝鮮もできていません。新型コロナウイルスのパンデミックは、国境がありません。政治や政府が意図しないところで、国際社会の統一が進みつつあるのです。
戦争を止められないこととともに、地球温暖化や海洋汚染、大気汚染、サイバー空間での犯罪など、国際社会が歩調を合わせて取り組む必要がある課題もたくさんあります。

さて将来、これらの動きは、どのように進むのでしょうか。
ヨーロッパ連合(EU)は前進と後退を繰り返しつつ、進んでいます。他方で、ロシアやイスラエルなどは、戦争を続けています。
誰も正確には予測できないのですが、希望を交えて、国際統一が進むと思いましょう。楽天的すぎますかね。

SNSのSはsocialではなくstupid

2025年9月16日   岡本全勝

9月3日の朝日新聞オピニオン欄、野田秀樹さんの「AI時代に「考える」」から。

――10年ほど前、野田さんが「人が何かを受け止める順番は『感じる・考える・信じる』のはずなのに、最近は『考える』が抜け落ちて、『感じる・信じる』が直結しているのではないか」と指摘したことが強く印象に残っています。
「私なかなか良いことを言いましたね。考えることが面倒なのか、手続きとして重要でないと思っているのか、ますます『感じる・信じる』になってきている気がします。SNSで見たことがすぐに信念になる、みたいなことも起きていますし」

――野田さん自身は、「感性」が当時のキーワードだった1970年代後半から80年代にかけて「若者演劇の旗手」として注目されましたが。
「当時はフィーリングとか言って、『感じる』が重視されていましたが、私はそれが気持ち悪かった。それでも演劇で『考える』を前面に出さなかったのは、60~70年代の学生運動を少し下の世代として見ていて、考え過ぎた人たちの不幸を目の当たりにしたことが大きかったからだと思います」
「既成の権威への反発は若さの特権で、それは今も変わらない。若い人口が多かったこともあり、大きな連帯が生まれ、世界を変えられるのではないかという夢があった。自分の思いもそちら側にありました。でも、72年、『あさま山荘事件』が起き、直後に連合赤軍内での残忍な内ゲバ殺人が明らかになった。これは絶対ついていけないと思った。それを上の世代がきちんと総括していないことに不信感も募った。この体験はその後、自分が理想について考えるのに影響していると思います」・・・

・・・「生まれる50年前にあった日露戦争を、私は身近に感じたことはない。今の若い人にとって第2次大戦は同じくらい遠いでしょう。かつてのように、伝えよう、教えようとするのは難しいと思います」
「ただ、歴史を知らないことは危うい。この前の参議院選挙で、独自の憲法構想案を作っている党が議席を増やしましたが、書かれていることを見ると、主権とは何か理解しているのか、疑わしいですよね。そこを考えずに、党の主張の中でいいなと感じる『部分』だけ見て投票した人も多いでしょう」

――「部分」はSNSで広がりやすいですし。
「短歌や俳句のように言葉をそぎ落とす文芸は別ですが、普通、何かを伝える文章には、ある程度の長さと、考えるための時間が必要です。思いつきで書く百数十字で何が言えるんだ?と思いますね。オールドメディア対SNSで、SNSが優位みたいな切り口になってるけれど、それも大ざっぱ過ぎる。オールドって言った時点で、そっちがダメって感じになるじゃないですか。フェイク情報や悪意をまき散らす場合、そのSは『social(社会の)』ではなく『stupid(愚かな)』だとはっきり言った方がいい」

少子化。若い人が希望をもてているか

2025年9月15日   岡本全勝

9月3日の朝日新聞「少子化を考える」、藤波匠・日本総研主席研究員の「若い人が希望をもてているか」「子が欲しくても断念、日本社会の問題 賃上げと雇用の正規化は企業の役割」から。

―国内で2024年に生まれた日本人の子ども(出生数)は約68万6千人。1人の女性が生涯に産む見込みの子どもの数を表す「合計特殊出生率」は1・15と過去最低でした。加速度的に少子化が進んでいると指摘されています。

予想されていた数字で、大きな驚きはありません。少子化の最大の要因は若い人たちが減っていること。少子化が劇的に改善することは、しばらくないでしょう。
私は、こうした数字は社会の状態を表す「指標」だと考えています。

――どういうことでしょう?

「若い人たちが将来に希望をもてているかどうか」の指標です。
自らの選択で「子どもは望んでいない」ということであればよいのです。でも実際には、希望しながら子どもをもてない人が多くいるのではないでしょうか。雇用が不安定で、経済的な不安がある、仕事が忙しすぎてタイミングを逃した……。だとすれば、そこに日本社会の問題があるのではないか。放置していてはいけないのではないか。これが、私が少子化対策が重要だと考える理由です。
たとえば、正規雇用の女性に比べ、非正規雇用の女性のほうが結婚や出産に後ろ向きだとする調査結果もあります。子どもをもつ世帯が低所得層で減り、中高所得層に偏ってきています。
結婚や出産の意欲の低下を時代の変化や価値観の変化で片付けてよいのか、という問題意識があります。

――そういう意味では、日本はバブル崩壊以降、「失われた30年」でした。

私の研究では、大卒の男性正社員で比べると、団塊ジュニア世代の生涯年収はバブル世代に比べて2千万円ほど低い可能性が示されています。これは子ども1人を産んでから大学卒業までにかかる費用に匹敵します。
若い世代が上の世代より貧しいことはあってはならず、少子化は当然の帰結です。30年にわたり低成長に有効な手を打たなかった歴代政権、低賃金に抑えて派遣労働を拡大させた事業者の責任は免れないと思います。

――どんな少子化対策が必要でしょうか。

児童手当などの現金給付は否定しませんが、すぐに効果は出ないでしょう。多子世帯に手当を厚くする対策が目立ちますが、それによって、終戦直後のような5人も6人も子どもがいたような時代に戻れるとは到底思えません。それよりも、第1子にたどりつけない人たちを支援することが重要だと考えます。
若い世代が夢をもって生きていける社会をめざすべきで、賃上げや非正規雇用の正規化などを担うのは企業の役割です。
日本社会の構造的な問題にもメスを入れる必要があります。職場での残業や、休日などの自己研鑽を美徳とする風潮が依然としてあります。若い時期から、仕事と家庭生活を並行して送れるような社会をつくっていくべきです。そのためには「男性は仕事、女性は家庭」といった性別役割分業に根ざしたジェンダーギャップの解消も欠かせません