「震災から3年、社会の変化」(藤沢烈論文)の続きです。
これまでもしばしば、「震災で、日本は変わったか」という質問を受けました。この質問をされる方の多くは、「変化を期待していたのに、変わっていない」という認識を基にしておられます。そのようなときに、私は、「どの分野をさして、議論しておられますか?」と、議論の土俵の設定から話を始めます。私の暫定的な答は、次の通りです。
日本社会は、大きくは変わっていません。
1 あれだけの大災害にあって、被災者も国民も、冷静に対応しました。略奪も暴動も、起きませんでした。
これは、他の先進国にも途上国にも見られない、すばらしい社会であり国民性です。このような社会は、変わることなく育てていく必要があります。
2 大震災は大きな被害をもたらしましたが、日本全体から見ると、限られています。3県の人口やGDPは、約5%程度です。避難者の数だと、人口の0.4%です。その他の地域と国民が支援することで、復旧・復興できるのです。
日本国民の大半が大きな被害にあったなら、違った光景が広がっていたかもしれません。
3 (質問者は)「どの点が、どのように変わるべきであった」と、考えておられますか?
もちろん、原発の安全神話は崩れました。科学者に対する信頼や、原発行政を管理していた省庁や東電に対する信用も、崩れました。しかしそれは、日本社会の意識構造全体を変えるまでには至っていません。
第2次大戦で日本が負けたといったような場合とは、異なります。国土の物理的破壊が、社会の意識的変化になるには、それなりの条件が必要です。
そして、日本社会の意識構造全体が変わる際には、政治構造の変化を伴うのでしょう。今回の大震災は、未曾有の大災害でしたが、そこまでは至っていません。国民は、政府に対する不信を募らせましたが、他方で一定の信頼も続いています。(政権交代はありましたが)、日本の政治体制、代議制民主主義、内閣や行政に対して、評価しています。あるいは、これに変わる代案はないと、考えているのでしょう。
「抜本的な改革」は聞こえはよいですが、何をどう変えるか明言しないと、それだけでは内容を伴っていません。それよりは、現体制を前提としつつ、欠点や課題を解決することを、国民は支持しているのだと思います。
この項、さらに続く。
カテゴリーアーカイブ:社会と政治
震災から3年、社会の変化。開かれた行政へ。2
震災から3年、日本社会はどう変わったかについて、藤沢さんの言葉を借りると、次のように要約できます。
行政にあっては、単体で公共を担っていくことが困難であり、企業やNPOと連携する必要性に気付いた。つまり、閉じた行政から開かれた行政へと変化した。例えばNPOに対しても、以前は行政の委託先として下請け的な位置づけだったが、対等なパートナーと認識が変わってきた。
企業は、社会をつくる一員であるという想いを、より強くした。企業が社会を支えるために一定のコストをはらうという認識を、日本でも株主自身が持ち始めている。
NPOについては、ボランティア型から、組織型経営へと変化しつつある。企業が社会的事業を行う際に説明責任を果たす必要があるように、NPOも企業と同等以上のマネジメントを用いて、目標設定から実行・検証を行うことが求められている。
この項、続く
震災から3年、社会の変化。開かれた行政へ
藤沢烈さんが、いろんなところで活躍しています。東北復興新聞のインタビュー「震災から3年。東北はシリコンバレーと並び世界的な成長地域になる」に、「この3年で起きた、社会的な変化」について、次のように述べています。
・・行政、企業、NPO、それぞれのプレイヤーの考えや位置づけから変化を整理したい。
行政は震災により、単体で公共を担っていくことが困難であり、企業やNPOと連携する必要性に気付いたと言える。つまり閉じた行政から開かれた行政へと変化した。以前は行政の委託先として下請け的な位置づけだったNPOに対しても、事業企画の段階から話を聞いてくれるようになった。例えば我々RCFでは岩手県釜石市や福島県双葉町の中に入って、復興支援員制度の活用に向けた仕組みづくりやコミュニティ支援に関する議論からご一緒させてもらっている。
こうした連携の中で、縦割りが指摘される行政においても旧来からの役割意識を変化させようとする柔軟な姿勢が見られるようになった。震災を機に明確な意識変化が起きていると感じる。
企業は、社会をつくる一員であるという想いをより強くしている。有名な経営者が寄付などの大きな支援を決定したと報道されることもあるが、実は経営者の決断を支えた従業員や株主の存在を忘れてはいけない。東北に対して熱意を持った企業社員たちが、時には復興に携われなかったら退社を辞さないくらいの気概を見せながら、各地で復興支援活動を牽引した事例は多い。また株主の社会意識も高まっている。ヤマト運輸が宅急便1個につき10円、総額140億円を超える寄付を行うと発表した際、株主総会で割れんばかりの拍手が起きたと言う事例が象徴的だ。社会貢献に積極的なアメリカのように、企業が社会を支えるために一定のコストをはらうという認識を、日本でも株主自身が持ち始めている。
こうした行政や企業の変化に対応してその役割を大きくしているのがNPOだ。この3年で数多くのNPOが復興支援に携わってきたが、ボランティア型から、組織型経営へと変化するNPOの存在を感じる。企業が社会的事業を行う上では、当然説明責任を果たす必要があり、その一端を担うNPOにも自ずと、企業と同等以上のマネジメントを用いて、目標設定から実行・検証を行うことが求められてきている。営利vs非営利といった構造ではなく、企業とNPOが高いレベルのマネジメントを持って対等なパートナーシップを組んでいく事例がいくつも出てきている。
しかし、行政や企業の変化に対してNPOはもっとスピードを持って対応していかなくてはならないとも感じている。今後、NPOはその役割が更に大きくなっていくことを確信している・・
経団連の法律改正働きかけ
2月10日の日経新聞「企業とルール」、阿部泰久・経団連経済基盤本部長の発言から。
「商法、会社法関連を中心にロビー活動をしているそうですね」という問に対して。
・・この分野の政策提言に力を入れ出したのは、1990年代後半だ。特定の企業に限られていたストックオプションの一般化や、原則禁止だった金庫株の解禁など、企業活動に柔軟性を持たせる施策を推進してきた。国際化に対応する企業ニーズに合わせた立法を速やかに進めるため、当初は議員立法の形が多く、条文作りも手がけた。
政策への影響力を認めてくれたのか、法務省も審議会に声をかけてくれるようになり、この10年は議員立法を利用していない。直近の会社法改正案の審議でも、法務省と直接意見交換して主張をほぼ受け入れてもらえた・・
地域の空き家対策
2月7日の朝日新聞オピニオン欄が、「空き家大国ニッポン」を取り上げていました。2008年時点での空き家が、757万戸。九州と沖縄の住宅総数を上回るのだそうです。各地の自治体で問題になっていることは、このホームページでも、かつて取り上げました(2012年2月29日)
いくつもの課題があります。放置された家屋が倒壊したり、その恐れがあって、危険なこと。また、空き家があることは地域にとって物騒です。放火でもされたら、ご近所が危険です。記事では、空き家条例を作って、解体撤去している自治体が、紹介されていました。
また、都心から電車とバスで1時間の距離にある大規模戸建て住宅で、60歳以上の人がいる世帯のうち「将来、子どもがその家に住む」見通しがあるのは3割未満です。残りは、空き家になる恐れがあります。
一方で、家がなくて困っている人たちがいます。もちろん、貸す方からすると、お金のない人や高齢者には、安心して貸すことができません。家賃をちゃんと払ってくれるのか心配ですし、孤独死されたら困ります。
ここに、住宅を建設したり提供するという仕事より、貸したい人と借りたい人をつなぐ仕事が重要になります。また、都会では借りたい人の需要はあるでしょうが、田舎だと人口減少で需要が少ないでしょう。そのミスマッチもあります。
明日香村では、定住希望者への空き家の紹介をしています。「空き家コンシェルジェ」という、空き家の定期巡回や借りたい人との紹介をしている団体もあるそうです。(