カテゴリー別アーカイブ: 知的生産の技術

生き様-知的生産の技術

紙の方が頭に入る

7月1日の読売新聞解説欄、「デジタル教科書 消えぬ懸念…有識者会議第1次報告」に、紙に書かれたものとデジタル画面との特徴が表になって比較されています。

・・・国内外では、デジタル媒体に比べ、紙媒体が、文章の内容を深く理解するのに向くとの研究結果がでている。
イスラエルの小学5、6年生男女82人を対象にした研究(2018年発表)では、複数の文章を紙とコンピューターで読んで問題に解答したところ、紙の方が成績が良かった。一方、アンケートでは、約6割の子供がコンピューターで読むことを「好む」と答えた。
紙媒体の方が文章内容などの深い理解が得られるにもかかわらず、スマホなど手軽な手段で読みたがる傾向がみられる。

今年3月、東京大の酒井邦嘉教授(言語脳科学)の研究チームが、紙の手帳にスケジュールを書き留めると、電子機器よりも短時間で記憶できるとの研究結果を発表した。書いた内容を思い出す際の脳の活動も高まるという。酒井教授は、「紙の教科書やノートを使った学習の方が効果が高いとの根拠が示された」とする・・・

覚えやすさ スマホより紙

3月20日の読売新聞に「覚えやすさ スマホより紙」が載っていました。

・・・東京大などの研究チームは19日、紙の手帳にスケジュールを書き留めると、スマートフォンなどの電子機器を使う時よりも短時間で記憶でき、記憶を思い出す時には脳の活動が高まることがわかったとの研究結果を、海外の専門誌に発表した。紙の教科書やノートを使った学習の効果が示された成果としている。
研究チームは、18~29歳の男女48人に、ある文章の中から14のイベントの日程を抜き出して、記録する課題に取り組んでもらった。記録の方法は〈1〉紙の手帳にペンで書き込む〈2〉タブレット型端末に専用ペンで書き込む〈3〉スマホに入力する――の3パターンで、各16人ずつで実験した。
その結果、紙の手帳を使ったグループは、電子機器を使ったグループよりも、全ての日程を書き終える時間が25%短かった。
1時間後にイベントの日付や内容などを思い出してもらうテストをすると、正答率は3グループとも差がなく、紙の手帳を使ったグループが短時間で記憶を定着させたと推測できた。
テスト中の脳の状態を観察すると、紙の手帳を使ったグループは、言語や視覚、記憶に関わる領域の血流がより多くなり、活発に働いている様子がうかがえた・・・

鎌田浩毅・京大教授。新著と最終講義

鎌田浩毅・京大教授が新著『首都直下地震と南海トラフ』(2021年、エムディーエヌコーポレーション)を出版されました。
2011年の東日本大震災以来、日本列島は大地変動の時代に入ったようです。もっとも、地球の方はそんな短い時間では動いていませんが。首都直下地震や南海トラフ地震はかなりの確率で起きることが予想されています。
本書は、「地球科学を学んでこなかった人にも最後まで読めるように、徹底的にわかりやすく書いた」とあります。室井滋さんとの対談もあり、読みやすいです。

鎌田先生はこの3月で京都大学を定年退職されます。「科学の伝道師の総決算」と銘打たれています。
3月10日の最終講義を、オンラインで見ることができます。

しんにょう

今年も、年賀状書きにあえいでいます。皆さんは、もうお済みですか。
1枚1枚は大した作業ではないのですが、枚数が多くなると、根性が続きません。

また、子どもの時に習字を習わなかったので、きれいな字が書けません。これではいけないと、就職してから少しペン習字をやりました。教えてもらうと、きれいに書くコツがわかります。とはいえ、まっすぐな線がまっすぐに書けず、字はバランスよく書けません。画数の少ない文字が、難しいですね。

特にうまく書けないのが、しんにょうです。「進」などの、左側から下にかけてです。
インターネットで「ペン習字 しんにょう」と調べたら、上手な書き方が出ていました。多くの初心者にとって、難しいのだそうです。なるほど、こう書くのか。

読書が作る脳

メアリアン・ウルフ著『プルーストとイカ―読書は脳をどのように変えるのか?』(邦訳2008年、インターシフト )が勉強になりました。プルーストとイカとは、何のことかわかりませんが。読書が、脳を作り替えるという話です。

人類は、見ることや話すことについては、かなり早い段階でできるようになりました。しかし、字を書き、読んで、伝えることができるようになったのは、そんなに昔のことではありません。たかだか6千年程度です。文字を書くことと読むことの遺伝子は、持っていないのです。

では、どうして文字を読むことができるようになったのか。人類は、脳の持っている機能をつなぎ合わせて、字を書き読むことができるようになったと、著者は説明します。言われてみると、なるほどです。読字がどのように人間の脳を変えたのか、古代からの人類の歴史と、子どもの発達という、2種類の時間で説明します。
また、アルファベットのような表音文字と、漢字のようなに表意文字が、脳の別の場所で理解されること、ある種の障害を持つと、脳は別の場所で機能を代替することなどが説明されます。
読字障害者が、知恵の発達が遅れているのではなく、読字機能の脳の発達が他の人たちと異なっているのだと説明します。ダ・ヴィンチ、アインシュタイン、エジソンも、読字障害者だったそうです。

日本の漢字ひらがな交じりの文章を理解する脳の場所は、独特のようです。かつて読んだ、角田 忠信 著『日本人の脳―脳の働きと東西の文化』(1978年、大修館書店)を思い出しました。日本人は、欧米人(欧米語)と違い、脳の別の場所で日本語を理解する。そしてそれは、虫の音と同じ場所だというのでした。その後、この説はどうなったのでしょうか。

文字を読むときに脳のどの場所が活性化するか(どの場所で読んでいるか)はわかるのですが、どのような仕組みで理解するかはわからないようです。脳の機能については、まだまだわからないことばかりだということも、わかりました。参考「読み書きは先天的でなく訓練